元気の良い返事は相変わらずです。
数日が経って、最初のドレスが出来上がりました。
早速、王城に上がって王太子殿下と面会です。
侯爵家の馬車に乗り、王城へ向かいます。
護衛には女性騎士であるハンネリースを伴います。
ハンネリースは平民出ですが、努力で騎士になった女性で、私の護衛役を務めてくれています。
「お嬢様がお戻りになって、侯爵家に仕える私たちも嬉しく思っております」
「これからもよろしくね、ハンネリース」
「はっ!!」
元気の良い返事は相変わらずです。
* * *
王城につくと、早速、王太子殿下が出迎えてくれました。
珍しいこともあるものです。
城の門をくぐったすぐそこに殿下がいらっしゃるとは。
「久しぶりです、フーレリア。私たち王族のワガママで辛い目に合わせて本当に申し訳ないことをしたと思っています」
「お顔をあげてください、殿下。謝罪は不要です。私も貴族の一員、聖女との政略結婚の重要性については理解しているつもりです」
「……そうですか。その聖女も病死してもういません。私たちの婚約を阻むものはもう何もないのです」
王太子殿下は跪き、私の手を取り口づけしました。
「どうかもう一度、私とやり直してください、フーレリア」
「……分かりました、殿下。こんな私で良ければ、殿下のため、国のため、チカラを尽くしたいと思います」
「ありがとうフーレリア」
王太子殿下は立ち上がると、私の手を取りエスコートしてくれました。
王城の中を歩きます。
文官や武官たちが微笑ましいものを見るような目で私たちに道を譲ります。
ちょっと恥ずかしいですね。
殿下にエスコートされてたどり着いたのは、謁見の間でした。
玉座には国王陛下が、その隣には王妃様がおわします。
「フーレリア・アルトマイアー。我が王家の不甲斐なさ故にそなたには大変な迷惑をかけた。伏して侘びたい」
「陛下、私に頭を下げる必要はありません。聖女を神殿から引き剥がし神殿の発言力を削ぐという政略自体には、正当性がありました。その結果、私と殿下の婚約がなかったことにされ、私自身が実家から放逐されたとしても、です」
「しかし聖女亡き今、手のひらを返すように息子ロレンスとの婚約を有効にした恥知らず。それが今の王家の立場であることは弁えているつもりだ」
「恥などではありません。王侯貴族ならば当然の政略です。私は殿下との婚約を喜びこそすれ、王家を非難するつもりはありません」
「そうか……そう言ってもらえるとありがたい。フーレリアよ、どうかロレンスをよろしく頼む」
「私に頼まれなくとも、殿下ならば立派な次期国王となるでしょう」
ロレンス殿下はやや恥ずかしそうに頬を紅潮させましたが、すぐに真っ直ぐに玉座の両親を見上げました。
「私は次期国王として、国民を、そして妻となるフーレリアを幸せにしてみせます」
「よくぞ言った、ロレンス。国王の重責は私の背中を見て育ってきたそなたなら理解できよう。だがそれはそれとして、ひとりの男として妻を幸せにするのも、同時に果たさねばならぬ。ひとりの女性を幸せにできぬ者が国民を幸せに導くことなどできぬのだ」
「はい、父上。肝に銘じます」
陛下は満足したように頷き、私たちに謁見の間から退出を促しました。




