うわあ、これは酷い。
「暑すぎです! 耐えられません!」
「どうどう。乾きの石は見つかりましたか?」
「それどころじゃありませんよ! 見てください、この腕の日焼け跡を!」
「うわあ、これは酷い」
真っ赤に腫れた腕を見て呟きました。
砂漠の日差しにやられないようにマントを被って移動しているようですが、それでも日焼けするのですから手に負えませんね。
「本体、サバイバルコートの錬成を頼みます」
「……本体、私にもサバイバルコートを! 寒すぎて探索どころじゃありませんよ!」
北の大地に到着したドッペルレリアも訴えかけてきます。
サバイバルコートとは、耐暑・耐寒の形質を持ったコートのことです。
〈原質分解〉できる私にとって形質の付与は楽勝なのですが、そもそも耐暑と耐寒のふたつの形質は希少なものです。
作ってあげたいのは山々ですが、果たして入手できるでしょうか……?
* * *
丸一日かけて冒険者ギルドで素材を〈アナライズ〉したところ、耐暑も耐寒も見つかりませんでした。
希少な形質だとは知っていましたが、ここまで見つからないとは。
とはいえサバイバルコートなしでは探索に集中できないのは明白です。
方や日焼け、方や霜焼け、どちらも深刻なのでポーションで治療しましたが、痛い思いをするのは嫌ですものね。
ここはダンジョンに潜っているドッペルゲンガーたちに頑張ってもらいましょう。
* * *
一号、二号、三号には一旦、ダンジョン探索を止めてもらって、耐暑と耐寒の形質をもつ素材集めをしてもらうことにしました。
ダンジョンの第十三階層に生息しているフロストパンサーを狩りまくって、白い毛皮を集めてもらいます。
白い毛皮は敷物にピッタリなので、形質に関わらず需要があります。
ですが稀に耐寒の形質がついているので、今回はそれ狙いですね。
お金稼ぎにもなるので、狩り尽くす勢いでフロストパンサーを狩ってもらいます。
一日かけて狩った結果、耐寒の形質をもつ白い毛皮二枚を入手することができました。
さあ次は耐暑の形質です。
ダンジョンの第22階層に生息している極楽鳥の羽根に稀に耐暑の形質がついていることがあります。
しかし極楽鳥は基本的に逃げ回るタイプの魔物で、襲いかかってくることはありません。
その羽根は美しく貴族たちに愛されているため、常に需要があります。
だから冒険者ギルドでも数が少なくて、耐暑の形質をもった羽根は見つからなかったのですが。
ドッペルゲンガーたちには頑張って極楽鳥を狩りまくってもらいましょう。
見つけたらケルベロスではなく〈マジックアロー〉の連射で仕留めることになります。
なんと言っても、こちらに気づいた途端に逃げるため、追尾効果のある〈マジックアロー〉でもなければ逃げられてしまうのです。
極楽鳥狩りはこのように魔力を消耗しながらの戦いなんですね。
とはいえ丸一日、極楽鳥に的を絞って狩りまくった結果、耐暑の形質をもつ羽根がふたつ入手できました。
これでサバイバルコートを作ることが出来ます。
素材から〈原質分解〉して得られた形質を丈夫なコートに付与します。
これで耐暑・耐寒の効果をもつサバイバルコートが完成ですよ。
「じゃあ探索の方は頑張ってくださいね」
「「ありがとうございます、本体!」」
ドッペルレリアのふたりは、意気揚々と砂漠と氷の大地に向かって旅立っていきました。
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