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婚約破棄から始まる迷宮都市での錬金術師生活 ~得意の古代語翻訳で裏技錬金術を駆使して平穏に暮らします~  作者: イ尹口欠
エリクサーと賢者の石

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暇を持て余して書物の暗号解読に取り掛かかっています。

 ホルトルーデにお菓子の量産をさせながら、私は風耐性の紙の量産に着手しました。

 

 とはいえ〈原質分解〉をすればあっという間に紙を量産できます。

 多めに作っておいて、月二百枚を納品し続けることにしましょう。

 

 * * *

 

 暇を持て余して書物の暗号解読に取り掛かかっています。

 インプを横に置きながら、あーでもない、こーでもないと頭を悩ませます。

 

 私のドッペルゲンガーふたりがかりでも解けなかった暗号ですから、私とインプだけでは難しいかもしれませんね。

 しかしエリクサーや賢者の石の錬成方法が書かれている貴重な書物です。

 是非とも残りの暗号も解読したいところ。

 

 さてそんなところに、ホルトルーデから声がかかりました。

 

「お姉さま、セバスチャンさんがお見えですよ」

 

「あら、何かしら」

 

 インプを〈シャドウ・ゲート〉に隠して書物を〈ストレージ〉に仕舞い、工房の店先に向かいます。

 

「いらっしゃい、セバスチャン」

 

「ご無沙汰ですな、お嬢様」

 

「そんなに久しぶりだっけ?」

 

「最近は保存食もホルトルーデから購入していましたからな。久々にお顔を見たくなりまして、こうして呼び出させてもらいました。忙しくありませんでしたか?」

 

「ええ、時間にゆとりができたから読書をしていたところよ。そういえば接客をホルトルーデに任せられるようになってから、店先に立つことが少なくなったものね。……入って、お茶を出すわ」

 

 私は東方から仕入れたお茶とどら焼きをテーブルに用意しました。

 

「おお、新しいお菓子ですな。こちらは……紅茶ではないようですが」

 

「東方の方で飲まれているお茶よ。ちょっとお高いんだけど、紅茶よりどら焼きには合うの」

 

「なるほど。ありがたくご相伴にあずかります」

 

 セバスチャンの近況を聞きながら、私とホルトルーデもどら焼きをいただきます。

 どうやらセバスチャンはダンジョンの第二十階層のボスに手こずっているようですね。

 ダンジョンでは五階層ごとにボス部屋があり、そのボスを倒さなければ下の階層に進めない仕組みになっています。

 第二十階層のボスはデュラハンです。

 二頭立ての戦車に乗り、剣と魔法に精通しているデュラハンはなかなかの難敵なようですね。

 特に戦車に乗って突っ込んでくるため、前衛が止めきれずに後衛が回避を余儀なくされるため、魔法を撃つ隙を作るのも難しいのだとか。

 将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、というわけで馬からまず倒さなければ勝負にならないのですが、動き回る戦車を追いかけるのも大変なようで、被害ばかり出てなかなか倒すに至らず撤退を余儀なくされるようです。

 

「そんな中で、ケルベロスを使役する三人の仮面の少女を見かけました。三体ものケルベロスが前衛にいるのですから、戦車を止めるのも追いかけるのも簡単なようで、早々に第二十階層を突破していきました。あれはお嬢様のホムンクルスですか?」

 

「……どうして私と関連付けるのかしら」

 

「仮面をかぶり髪型を変えたところで、お嬢様に似た体格の娘がそっくり三人、しかもケルベロスを従える外法を習得しているとなると……お嬢様の関与がまず浮かびましてな」

 

「まあ……否定はしないわ。そうよ、私の手先よ」

 

「おお、やはり。あのケルベロス三体は一体、どうやって手懐けているのですか?」

 

「それは秘密」

 

「はっはっは。さすがに手の内は教えては貰えませんか……」

 

「まあね。でもセバスチャンなら開幕に派手な炎属性の魔法を放って馬を焼き殺せそうなものだけど。デュラハン相手は難しいものなの?」

 

「それもやっているのですが、上級魔法でも一撃で馬を倒せませんのでな。仲間には他に光属性の治癒魔法使いがいるのですが、退魔関連は習得しておらず、私ひとりの魔法だけでは威力不足でして」

 

「なるほどね。その魔法使いが退魔関連の魔導書を入手したら、勝てるというわけ」

 

「今のところはそれに賭けております。ただ退魔の魔導書は品切れで写本待ちでしてな。暇ができたのでこうしてお嬢様のお顔を拝見しに参った次第でございます」

 

「ふうん」

 

「そういえば聞きましたぞ。ヴェルナー伯爵家のご令嬢が石化の呪いから解き放たれたと。お嬢様がキュアストーンポーションを作られたのでしょう?」

 

「まあね。その話、そんなに広まっているの?」

 

「そうですな。この工房の主は腕利きの錬金術師であるとまことしやかに語られております」

 

「あら、そんな噂が……? 気をつけた方がいいのかしら」

 

「いえ。迷宮都市の領主一族の命の恩人ですから、滅多なことでは手出ししようとする者はおりますまい。この街の者なら、そこは弁えております」

 

「そう。なら良かったわ」

 

 その後も世間話をして、セバスチャンは帰っていきました。

 しかし私が腕利きの錬金術師ですか、悪い気はしませんね。

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