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婚約破棄から始まる迷宮都市での錬金術師生活 ~得意の古代語翻訳で裏技錬金術を駆使して平穏に暮らします~  作者: イ尹口欠
エリクサーと賢者の石

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さては素材をケチりましたね?

 海港都市で新たに奴隷二名を購入して、西方の砂漠の街と北の港街に新しい拠点を設置します。

 もちろん〈ギアス〉で遺失魔法のことは他言できないようにしてあり、また私たちに反逆を許さないという〈ギアス〉もかけてあります。

 

 港湾都市に派遣していたドッペルゲンガーは任務を果たしたので、奥の工房で生活していく予定です。

 ですがせっかく三人もドッペルゲンガーがいるので、冒険者登録させて不死鳥の羽根と竜の血の入手を頼むとしましょうか。

 

「また無理難題を!」

「冒険者ですか……」

「命がけの仕事ですよ」

 

 ドッペルゲンガーたちは私と同じ思考をしますので、冒険者稼業に抵抗があるようですね。

 でも護衛にケルベロスをひとり一体、〈シャドウ・ゲート〉に潜ませていますから、実質の戦力はかなりのものがあります。

 

 ドッペルゲンガーたち自身も時空魔法が使えるので、ダンジョンの奥から〈ディメンション・ゲート〉で往復することが可能。

 生活水準を下げることなくダンジョンの奥深くまで進むことができます。

 

 これはやらせない手はないですよね。

 

「というわけでドッペルレリア、冒険者登録にいってらっしゃい」

 

「本体本体、私たち全員の名前が同じというのはさすがにおかしいのでは?」

 

「それもそうですね。じゃあ技の一号、力の二号、幻の三号ということで」

 

「テキトー過ぎませんか!?」

 

「冒険者ギルドでは偽名や二つ名での登録ができるので、問題ないでしょう。むしろ見た目がまったく同じ仮面の少女が三人という方がマズそうですね。髪型、それぞれ変えてみましょうか」

 

 髪型を弄ってやり、見分けがつくようにしました。

 仮面の意匠もそれぞれ変えてやれば、ほら割と別人に見えますよ。

 

 ガタガタと文句を言う三人を無理やり送り出しました。

 

 * * *

 

 果報は寝て待て、とはいうものの、私たちにも日常があります。

 オルナバスからの使いが来て、保存食の量産工場が完成したとの報告がありました。

 

 今後、保存食の生産と販売は冒険者ギルドが行うことになるので、私たちは空気を通さない風耐性の形質を付与した紙を納品していくことになります。

 風耐性の形質を持つ素材を冒険者ギルドに行って購入してくることにしました。

 

「ん? ……小娘か。素材の購入か? また新しい食べ物でも錬成するのか?」

 

「アルベリクさん、こんにちは。今日は食べ物じゃなくて特殊な紙の素材を購入に来たのですよ」

 

「ふむ、そうか。ところで技の一号、力の二号、幻の三号という冒険者が最近、登録されたらしいのだが、あれはお前の手先かなにかか?」

 

「……なんのことでしょう?」

 

「知らないフリをするならばいい。だが俺様の目を欺けると思うなよ?」

 

「ふうむ、仮面と髪型だけじゃ誤魔化しきれませんかね?」

 

「体格と歩き方を見れば三人が同一人物だと分かるぞ。まあそんなところに気づけるのは俺様が非凡ゆえだが……それでも戦闘スタイルがまるで同じというのは、どういうことだ」

 

「といいますと?」

 

「三人が揃ってケルベロスを使役している。散歩でもするかのようにダンジョンの奥に歩いていく様は滑稽だぞ」

 

「ああ……ケルベロス、効率がいいんですよね」

 

「効率の問題だったのか。驚きだ」

 

「アルベリクさんも驚くことがあるのですね」

 

「…………そうだな。まあいい。何が目的か知らないが、あまり目立つなよ」

 

「冒険者ギルドにはあまり顔を出すことはないので、目立つのはダンジョンの浅い階層を歩いているときだけですね」

 

「非常識だが、まあいい。……そういえば保存食を冒険者ギルドが販売するようになったが、あれは良いのか?」

 

「ええ。レシピを買い取ってもらって、冒険者ギルドとヴェルナー伯爵家で量産体制を整えてもらっているのです」

 

「そうか。品質ではお前のところの保存食の方が高いように思えるが、量産が前提なら質が落ちるのもやむなしか」

 

 おっと、それは聞き捨てなりませんよ。

 レシピはしっかり渡したはずです。

 さては素材をケチりましたね?

 

 確かに量産するなら素材を安いものにするのは仕方のないことかも知れません。

 しかし美味しい保存食を、という依頼が元だったので、質が落ちるのはちょっと看過できませんね。

 

 ……とはいえヴェルナー伯爵家と冒険者ギルドに意見できる立場じゃないですけども。

 

 レシピを手放した以上は、先方に任せっきりにする他ありません。

 品質がやや落ちたところで硬パンよりマシなので、まあいいかと自分を納得させることにしました。

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