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婚約破棄から始まる迷宮都市での錬金術師生活 ~得意の古代語翻訳で裏技錬金術を駆使して平穏に暮らします~  作者: イ尹口欠
迷宮都市の錬金術師

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なるほど、私を守りたいと来ましたか……。

 鋭利の形質をもつ爪を錬金釜に投入して、〈原質分解〉用の混ぜ棒でかき混ぜます。

 しばらくすると形質が爪から剥離して固形化し、錬金釜の中を漂うようになりますから、トングで鋭利の形質以外を取り除きます。

 そしてミスリルのインゴットを錬金釜に投入し、普通の混ぜ棒で形質を定着させます。

 

 一時間ほどでミスリルのインゴットに鋭利の形質を付与することができました。

 これにて仕事、完了です。

 

 ともあれ形質の付与には通常、三日ほどの時間がかかりますので、スーザンちゃんのお父さんに渡すのは二日ほど置いてからになりますけどね。

 

 * * *

 

 向かいの鍛冶屋にミスリルのインゴットを届けに行ってきました。

 キッチリ三日で仕上げたと思われているので、非常に感謝されましたよ。

 

 さて工房に戻り、ホルトルーデとお茶にします。

 ひと仕事終えたのと、ホルトルーデが働きっぱなしにならないように、こうして定期的にお茶の時間を取るようにしています。

 

「お姉さま。私は接客をしなくてもよろしいのですか?」

 

「接客ですか……」

 

 自衛手段がなく、常識と知識に欠けがあるホルトルーデに接客をさせるのには不安がある、というのが作成者である私の考えです。

 しかしこれは明らかに過保護な考え方ですね。

 実際、自衛手段が無さそうな人たちが接客をしているお店も数多いはずですし。

 経験を積ませて、欠けた常識や知識を補う方が建設的です。

 何より本人にやる気があるのですから、ここはそのやる気に応えるのが親心というものでしょう。

 

「分かりました。私がいるときだけですが、接客をしてもらいましょう。正直なところ、私が錬成で手が離せないときに接客をしてもらえると大変、助かりますからね」

 

「はい。ありがとうございます、お姉さま」

 

「そうですねえ……せっかくですから練習というか、マニュアルのようなものが欲しくなりますね」

 

「接客マニュアルですね。あれば覚えます」

 

「分かりました。作成しておきます」

 

 ホルトルーデはグっと拳を握り、やる気をアピールします。

 いつの間にか感情豊かになっていますね。

 作成者である私が気づかないうちに、成長を積み重ねているようです。

 

「それからお姉さま。もうひとつお願いがあるのですが」

 

「なんでしょう?」

 

「魔法を教えて欲しいのです」

 

「魔法ですか……。例えばどんな魔法を覚えたいですか?」

 

「形質を見分ける〈アナライズ〉、自衛するための攻撃や防御の魔法を習得したいです」

 

「……ふむぅ」

 

 私の分身のようなホルトルーデですから、恐らく魔法の傾向も似たようなものでしょう。

 教えるのなら私が適任です。

 それにしても……ホルトルーデは急にどうしたのでしょうか。

 

「どうして急に接客や魔法を覚えたいと思ったんですか?」

 

「お姉さまの力になりたいんです。いつもお忙しそうにしているお姉さまのために接客を、そして自分の身くらい自分で守れるように魔法を覚えたいと思いました。お姉さまに守られるのではなく、お姉さまを守るくらい強くなりたいです」

 

「なんと」

 

 実はホムンクルスは作成者に忠誠心をもつように作られています。

 作成者の忠実なる手足として活動してもらうため、裏切られないようになっているのです。

 なるほど、私を守りたいと来ましたか……。

 これも忠誠心の発露なのでしょうね。

 

「分かりました。魔法の訓練を定期的に行うことにしましょう。護身用の魔法なら、私が教えられます」

 

「本当ですか!? 嬉しいです、お姉さま!!」

 

 やれやれ。

 本当に弟子みたいになってきましたね。

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