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婚約破棄から始まる迷宮都市での錬金術師生活 ~得意の古代語翻訳で裏技錬金術を駆使して平穏に暮らします~  作者: イ尹口欠
迷宮都市の錬金術師

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珍しい素材を確保するのは、錬金術師としてのサガですね。

 お菓子が売れていきます。

 というか、基本的にウチの工房、お菓子しか取り扱っている商品がないんですよね。

 当初は雑貨屋を目指していたのに……どうしてこうなった。

 

「お姉さま、何かお悩みですか?」

 

「え? いいえ、大したことじゃないわ。錬金術師の工房なのにお菓子ばかり売っている現状がちょっと面白かっただけよ」

 

「なるほど?」

 

 コテンと首をかしげるホルトルーデ。

 彼女にとってはウチの工房はお菓子屋さんの延長線上にあるのかもしれませんね。

 

 そんな折、スーザンちゃんとそのお父さんが客としてやって来ました。

 

「こんにちは、お姉ちゃん!」

 

「いらっしゃい、スーザンちゃん。それとオジサマも」

 

「ああ、今日は依頼に来たんだ」

 

 スーザンちゃんのお父さんが革袋に入っていた素材を取り出します。

 見事な青みがかった銀のインゴットです。

 

「これはミスリルですか?」

 

「そうだ。よく知っていたな」

 

「ええ。昔、見たことがありますので。それで依頼とは?」

 

「これに鋭利の形質を付与して欲しい」

 

 鍛冶屋のオジサマらしい依頼ですね、武器でも作るのでしょうか。

 形質付与は素材さえあれば簡単に行えます。

 

「ただ鋭利の形質をもつ素材が手元にないんだ。悪いが素材費と合わせて金貨十五枚で引き受けてもらえないだろうか」

 

「分かりました。冒険者ギルドを当たって探してみます」

 

「よろしく頼む」

 

 そう言って、オジサマは突っ立ったまま何か言いたげに視線を彷徨わせています。

 

「もうお父さん。リンゴのクッキーも買うんでしょ!」

 

「ああ……すまんが一袋、売ってもらえるか」

 

「はい。リンゴのクッキーですね」

 

 どうやらついでにお菓子を買いたかったようですね。

 恥ずかしがらずとも良いのに。

 

 銀貨と引き換えにリンゴのクッキーの入った紙袋を渡します。

 

 そしてふたりは向かいの鍛冶屋に帰っていきました。

 

 ……さて、鋭利の形質を保有している素材を探しましょうか。

 

 * * *

 

 ホルトルーデと一緒に冒険者ギルドにやって来ました。

 昼間なので比較的、空いていますね。

 早速、素材販売カウンターに向かいます。

 

「すみません。牙や爪などの素材を購入したいのですが、一通り見せて頂けますか?」

 

「はい。どれくらいご入用でしょう」

 

「目当てはひとつなんですが、形質によっては幾つか確保しておきたいかもしれません」

 

「あら、お客様は鑑定ができるのですか?」

 

「形質を見分けるだけですよ。鑑定とは違います」

 

「なるほど、さすがは新進気鋭の錬金術師ですね。形質を見分ける眼力に自信がおありのようで」

 

「いやあ……」

 

 〈アナライズ〉の魔法も古代語の文献から得たものなので、普通の錬金術師は使えません。

 普通の錬金術師が形質を見分ける場合、例えば鋭利なら他の牙や爪と比べて尖っているものを選別してから神殿で鑑定してもらうことで形質を確かめます。

 

 さて瓶に入った牙と爪が大量にカウンターに運ばれてきました。

 

「一部ですが、鋭利の形質を保持していると思われるレベル帯の牙や爪をお持ちしました。こちらになければ、まだ在庫がありますのでお持ちします」

 

「はい。とりあえずこれらを見ていきますね」

 

 こっそりと〈アナライズ〉を唱えます。

 

 ……う、頭が痛い。

 

 眼前にある多数の爪や牙のすべてに保有される形質が浮かび上がります。

 手袋をして、目当ての鋭利をもつ爪を一本、取り出しました。

 そして珍しい形質として、奇形と剛力の形質をもつ爪と牙を一本ずつ選り分けます。

 そして〈アナライズ〉を解きました。

 

「この三本をください」

 

「はい。銀貨一枚と銅貨五十枚です」

 

 銀貨二枚を出して、お釣りの銅貨五十枚を受け取ります。

 

 奇形の形質と剛力の形質はこの価格帯では非常に珍しい形質です。

 入手できて幸運でした。

 

 とはいえ、特別に使い道があるわけではないのですが。

 珍しい素材を確保するのは、錬金術師としてのサガですね。

 

 ささ、帰ってミスリルのインゴットに鋭利の形質を付与しましょう!

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