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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
終章 エトゥールの魔導師
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(2)絆②

お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。

現在、カクヨムで「エトゥールの魔導師【この男’sメンズの絆が尊い! 異世界小説コンテスト応募版】」を作成し応募しました。(10万字分の分割を2本)

コンテストの応援してもいいよ、という奇特な方がいらしたら、カクヨムでも小説フォロー、評価、布教をお願いします。m(_ _)m


現在、更新時間は迷走中です。 面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

「カイルは帰ってきますよ。大丈夫です」


 シルビアは優しく言った。


「お義姉(ねえ)様……」

「ファーレンシア様、カイルの相棒であるディム・トゥーラは、とても離れたところにいながら夢で会話ができたそうですよ。ファーレンシア様の夢もそうかもしれないですね」


 ファーレンシアは、はっとした。

 過去に、カイルとディム・トゥーラとの会話は、真か()かの判定を皆で論じたのだ。

 実際、ファーレンシアもその夢を証明するために、同行したことがあった。あの時、カイルのウールヴェであるトゥーラがそばにいたのだ。


「もしかして……」

「ええ、前回のようにはっきりとしないのは、トゥーラが旅立ってしまったからではないか、と私達は仮説をたてています。ウールヴェは精神感応(テレパシー)――地上で言うところの『加護』を増強していたのではないか、と」

「では、トゥーラがいない今、どうしたら……」

「私達には、まだ力強い味方が残っていますよ」


 シルビアは黙って、ファーレンシアの寝台のそばに控えるウールヴェに視線を投げた。

 死んだトゥーラの(つがい)だったウールヴェは、白い狼に似た姿を保っていた。


「わ、私のウールヴェが役に立つとおっしゃるのですか?」

「もちろんです。私達は、ファーレンシア様の出産が終わるまで、カイルの捜索を控えたのです」


 急に朝日が差し込むような希望の光が見えてきたことに、ファーレンシアは驚いた。


「探しに……当てがあるのですか?」

「と、ディム・トゥーラは言ってます」

「ディム様が……」

「彼等は今、その準備をしています。だから、私達は信じて待ちましょう」


 シルビアの言葉に、ファーレンシアは何度も(うなず)いた。





「クトリの言いたいことは、よくわかった。確かに衝突のエネルギー収支があわない」

「でしょ、でしょ、でしょ?!」


 ディム・トゥーラに問題点を認められたクトリ・ロダスは興奮したように前のめりの姿勢になる。

 エトゥール王城の中庭は、書類サイズの金属の板が散乱している。クトリ達がエトゥールの地下拠点から持ちだした端末は、それぞれが観測された情報をフル稼働で解析していた。

 二人の議論を聞いていたエルネストは端末の一つを手にして、計算結果を確認した。


「つまり直径200キロのクレーターなら深度40キロあってもおかしくないと……だが、それは純粋に直径が200キロだった場合では?」

「へ?」


 エルネストの指摘にクトリはきょとんとする。


「カイル・リードが落下する恒星間天体をかなり(くだ)いていれば、本来のクレーター直径は100キロ程度であり、単に深度分を水平にエネルギーを展開した可能性も捨てきれない」

「えええええ」


 クトリは愕然とした。


「そんな物理エネルギーの法則を全無視するような馬鹿な現象が――」

「ウールヴェの特攻だって、十分に馬鹿な現象だろう?ウールヴェがミサイルのような熱量と爆発エネルギーを所持して恒星間天体の質量を()ぐなんてありえない」

「実際、()いだかもしれない。時間があれば、隕石として着弾した恒星間天体の全質量を計測してみたいものだ……。そこから逆算できるかもしれないな……」


 ディム・トゥーラがつぶやく。


「動物の特攻が?」

「あれを動物に分類するのは、専門家として断固拒否する」


 ディム・トゥーラは真顔できっぱりと言う。


「貴方達の研究馬鹿具合もいい加減にしてよ。今は、カイルとアードゥルの行方が問題でしょ?」


 イーレが釘をさし、黙って聞いていたミオラスも、激しく頷いて同意する。

 一方、イーレの伴侶である西の民の若長は、中庭の芝生で寝転んでくつろいでいる。


 呪文のような意味不明の言葉が飛び交う議論が始まった時点で、彼は体力温存の休憩を選択していた。


「その手がかりが、大災厄のエネルギー収支にあると、俺は思ってる」

「なんで?」

「カイルとアードゥルが消えたからだ」


 ディム・トゥーラが端末を指でつつきながら、主張する。


「俺は残って、彼等だけ消えた。アードゥルは、カイルに触れていたから、巻きこまれた」

「じゃあ、カイルは?」

「カイルはあの時、世界の番人と同調していた。ウールヴェの特攻をコントロールしていたと、言ってもいい。カイルがアードゥルに命じて地下1000メートルまで防御壁(シールド)を展開させたのも、爆発のエネルギーが変遷できることを未来予測したからじゃないか、と思っている」

先見(さきみ)か」


 若長がぼそりと言って、全員が芝生に寝転ぶ西の民を注視した。ハーレイは半身を起こすと胡座(あぐら)を組んだ。


「もともと占者(せんじゃ)は、世界の番人の審神者(さにわ)であり、先見(さきみ)は世界の番人の助言のようなものだ。カイルが世界の番人と同化していたなら、星の落下の結末は見えていたに違いない」

「認めたくないが俺もそう考えた」


 ディム・トゥーラも同意した。

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