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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第23章 大災厄⑤
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(45)我が光を示される汝に栄光あれ⑲

お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。


カクヨムで「エトゥールの魔導師【この男’sメンズの絆が尊い! 異世界小説コンテスト応募版】」を作成し応募しました。(10万字分の分割)

コンテストの応援してもいいよ、という奇特な方がいらしたら、カクヨムでも小説フォロー、評価、布教をお願いします。m(_ _)m(現在コンテストランキング40位)


現在、更新時間は迷走中です。 面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

 防御壁(シールド)が展開されているにも関わらず、地面が揺れた。


 いや、展開していなければ、とっくの昔に天体の衝突熱に焼かれ、衝突衝撃による地殻変動で超巨大地震の数十倍のエネルギーを受けていたはずだ。王城敷地内に位置する中庭の揺れは、そういう意味では予想よりはるかに小さかった。

 ディム・トゥーラは王城や聖堂の建築物が倒壊(とうかい)していないことを確認した。むしろ精霊樹の崩壊(ほうかい)が酷い。


 裂けた大樹は枝や葉を大量に散らしている。根元から倒れていないことが幸いだったが、はるか大樹の頂点から落ちてくる枝は十分な凶器だった。

 さらに精霊樹の木片や粉塵(ふんじん)は、カイル達を視認することの邪魔になっていた。


「カイルっ!!アードゥル!」


 防御壁(シールド)の外である王都周辺は、数万度の熱にさらされ、あらゆる有機物は蒸発しているだろう。

 問題はその放熱エネルギーと衝撃波が、アードゥルの張った多重の防御壁(シールド)を破壊しつつあることだ。


 カイルの地下まで防御壁(シールド)を張れという命令は英断だった。

 それがなければ、おそらく地割れと地面の隆起(りゅうき)で王都は全壊し、脱出の時間も失われた。だが、その(かせ)いだはずの脱出の時間は、いまや無駄(むだ)に消費されている。


 ディム・トゥーラは、カイルへの遮蔽(しゃへい)を続けていたが状況がわからなかった。下手に精神感応(テレパシー)で呼びかけて、彼等のやっている()()の邪魔をするのは悪手(あくしゅ)ともいえた。



 ディム・トゥーラは覚悟をきめた。

 いいだろう。防御壁(シールド)が破れ、高熱に(さら)され即死しようと、つきあってやる。



 ディム・トゥーラ自身はカイル達の命綱(いのちづな)である移動装置(ポータル)を守るために防御壁(シールド)をその周辺に張っていた。彼はそばにいる白い虎のウールヴェに話しかけた。

 

「お前は脱出しろ。俺につきあうことはない」


 白い虎は、即座に首を振った。

 言葉はないが、共にいると強く主張された気がした。ディム・トゥーラは同じ茶色の瞳を持つウールヴェをじっと見つめた。


「俺は死んだらクローン再生されて中央(セントラル)からここに帰れない可能性が大いにある。その時は新しい主人を探せ」


 帰る――無意識にでた言葉だった。

 白い虎は、またもや首を振った。


「ゆっくりと名付ける時間がなくてすまなかった。お前はいい相棒だった」


 王都全体を覆う防御壁(シールド)は、赤い炎と黒煙に包まれている。それ以外の何も見えなかった。

 ディム・トゥーラは上空を見上げ、防御壁(シールド)がどれくらい浸食されているか見定めようとした。


 何か音を聞いたような気がした。


 ディム・トゥーラは目を(うたが)った。

 水?

 王都の防御壁(シールド)に大量の水が降り注いでいる。


 急激に発生した熱が地上の空気を高速に押しあげ、秒速で高所で凝結した対流雲をつくり、その結果として巨大な積乱雲を広範囲にを生み出したはずだった。

 ディム・トゥーラは悟った。それは、やがて飽和状態になり水滴が落ちてくる――つまりは雨だ。


 上空から(ちり)(すす)を含んだ雨が降り出していた。それは豪雨といってもいい状態だった。だがすぐに黒い雨から、透明度をましていった。透明どころか金色の光を帯びた雨が王都のドーム外に降っていた。


 なんだ、この雨は――。

 地上の大爆発が原因とはいえ、この金色の雨は本当に自然現象なのか?

 ディム・トゥーラは愕然とした。


 当然、防御壁(シールド)が遮り、中庭には降り注がない。その雨の現象と引き換えのように、精霊樹の断片は枝や葉の原形をとどめることをやめて、金色の粉と化して周囲に積もっていく。

 

 防御壁(シールド)の侵食が明らかに(ゆる)やかになっていた。

 雨が焼けた大地と空気を冷やす効果を生み出していた。赤黒い煙は消え、水蒸気が(きり)のように発生している。


 ありえない。

 大地を焼いた膨大な熱エネルギーは、雨ごときで中和はできない。


 ディム・トゥーラは、はっとして中庭に視線を戻した。

 



 精霊樹の痕跡(こんせき)が金色の雪となって降り注ぐエトゥールの中庭は幻想的なまでに美しかったが、カイル・リードとアードゥルの姿は消えていた。


今回45話のエンディング曲は

「不可逆リプレイス / MY FIRST STORY」でお願いします。

旧Twitterでこの曲のリンクを貼っておきますね。


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