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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第23章 大災厄⑤
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(39)我が光を示される汝に栄光あれ⑬

お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。


現在、更新時間は迷走中です。

面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

「…………トゥーラ…………」


 カイルは呆然と近づいてくる自分のウールヴェを見つめた。

 白い狼に似たウールヴェは、カイルの前に立った。


――ごめんね かいる


「…………なんで、謝るんだ……?」


 カイルは緊張と恐怖で、喉がカラカラになり問いかける声が震えていることを自覚した。


――ずっと一緒にいるという 約束が守れないから


 カイルは精神への衝撃に(くちびる)を噛んで耐えた。トゥーラの言葉が意味することは、残酷(ざんこく)だった。


「…………いやだ…………」


 カイルは首を振った。


「いやだ……いやだ……絶対にいやだっ!こんな選択は間違っているっ!僕はこんな選択はしないっ!したくないっ!僕にさせないでくれっ!!」


 カイルは叫んだ。


――かいる


 トゥーラはカイルに近づくと、カイルの身体に頭を()り付けた。カイルを落ちつかせるとても深い愛情が流れ込んできた。カイルはしゃがむとトゥーラを強く抱きしめた。

 トゥーラとの(きずな)の深さを証明するかのように、流れ込む愛情は膨大(ぼうだい)だった。


――かいる 聞いてくれる?


 カイルに語りかけるトゥーラの思念はいつもより、ずっと大人びていた。


――僕達は ずっと人間を見てきたんだ


――ずっと ずっと ずっと 見てきたんだ


――人間の全てを 見てきたよ


――綺麗な面も 汚い面も全て


――殺された仲間もいるし 四つ目になって世界の理からはずれた仲間もいる


――いろいろな記憶を 僕達は共有しているんだ


 記憶の共有――それはかつてトゥーラが語ったことだった。死んだウールヴェは、世界の番人の元に帰り、記憶が共有されると。

 かつてセオディアを(かば)い死んだウールヴェやカスト王に殺されたウールヴェは、世界の番人の元に帰っていった。

 今ではカイルもそれがこの世界の仕組みだと理解していた。


――そんな中でね かいるは とても稀有(けう)な存在だった


――与える者が与えられる そう口癖のように言ってたね


――それは世界の真理で それをできる人は(わず)かなんだ


――かいるの選択は たくさんの人の心を救い未来を与えた


――そして無関係のこの世界のために奔走してくれた


――僕達は それに報いたいと思った


――それが僕達の総意で 『選択』なんだよ


――そして世界の人々は救済を望んでいる


「……それでも、嫌だ」


――かいる


――僕達は世界の番人の手足であり 分身であり 子供でもあり 世界そのものでもあるんだ


――それと 同時に使役主に対する 守護者でもあるんだ


――その僕達が世界を守るために行動するのは 当然でしょ?


「――」


 カイルは黙り込んだ。ウールヴェ達の行動を止めることができない予感がひしひしと迫ってきた。


――かいる ごめんね 重荷を背負わせて


――でも 命じる存在が必要なんだ


――命じるはずだったロニオスがいないんだ


「……お前達はどうなるんだ……?」


――何もならないよ (みなもと)に帰るだけ


「死ぬってことだろう?!」


――かいる そうじゃないよ


――例えるなら 大地に降り注ぐ雨が集まり川になりやがて海にたどる


――その海から 雲が生まれ雨となって再び大地を潤す


――僕達は世界を循環(じゅんかん)しているんだ ただ世界の番人の元に戻るだけ


――これは死じゃないんだ


――だって僕達は 世界から生まれているから


――世界に帰ることは自然なことなんだよ


――季節が巡るのと同じぐらい自然なことなんだよ


 何か重要なことを言われていたが、カイルは半分も考えることができなかった。


「僕はお前がいなくなるのは嫌だ」


――僕も 離れるのは嫌だよ


「孤独になりたくない」


――うん


「だったら、行かないでくれ」


――僕達が行くことで、人々の苦しみが軽くなる それでも かいるは 止める?


「――」


 カイルの右手に地上世界の安らいだ未来が、左手に世界の番人の分身であるウールヴェの存在が乗っていた。

 地上世界の未来を選べと、(きずな)のあるウールヴェは強要していた。


――かいる


「…………なんだい」


――この世界を愛してくれてありがとう


 カイルはその言葉に泣きたくなった。

 実際、泣いていた。

 愛した世界は、美しく純粋で清浄で(いや)しに満ちていた。だが、運命の選択は残酷で無慈悲だった。


 自分がする残酷な選択は、確かに生涯(しょうがい)()いるに違いない。人間の自己中の極みだった。

 だが、地上の短命な人々に大災厄後の過酷な生活を強いる権利などカイルにはなかった。

 トゥーラは黙って泣き続けるカイルに寄り添った。


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