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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第23章 大災厄⑤
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(36)我が光を示される汝に栄光あれ⑩

お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。


ダウンロードありがとうございました!

現在、更新時間は迷走中です。(この通り!)

面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

 落ちてくる凶悪な星の欠片は、虹色の透明な障壁(シールド)に何度も(はば)まれる。


「この非常識な規格外めっ!」


 それを目撃したアードゥルが上空を見上げながら、呆れたように酷評した。


「規格外に規格外って、言われたくないと何度言えばわかるのさ?!」


 カイルは次々と防御壁(シールド)を展開しながら、アードゥルの暴言に抗議した。

 アードゥルは怒鳴り返した。


「それはこちらの台詞だっ!上空10キロメートル付近に展開する予定だったのに、なんで上空80キロメートルの熱圏付近なんだっ!勝手に計画を変えるなっ!」

「しょうがないじゃない、ディムがいるから飛距離が伸びちゃったんだからっ!」

「飛距離は簡単に伸びるものじゃないっ!」

「え?だって簡単に伸びちゃったし…………ね?」


 同意を求めるように視線をむけてくるカイルに、ディム・トゥーラは既視感(デジャブ)を覚えた。

 シャトルを使った同調実験で、80000キロという規格外の記録を打ち立てた二人は、翌日から関係する研究者から追い回された。この時も、カイルは「なんかディムと組んだら、できちゃった」と無責任これ(きわ)まれりな問題発言をした。

 支援追跡(バックアップ)の有用性についての新たな研究分科会まで発足され、ディム・トゥーラは参加を強要され、巻き込まれて散々だったのだ。


――こいつ、規格外ぶりを、また俺のせいにしようとしている


「俺に同意を求めるな。それから俺のせいにするな」


 ディム・トゥーラは、冷淡に応じて全否定した。


「いやいや、ディムの影響は大きいよ?これだけ、飛距離が伸びたことで証明されているよね?」

「だから、俺に責任転嫁するな。俺は無関係だ」

「……………つれない」

「おい、支援追跡者(バックアップ)っ!この規格外を野放しにするなっ!」

「俺の優先順位は遮蔽(しゃへい)なんだ。今現在この阿鼻叫喚(あびきょうかん)の思念波を食らったら、こいつは一発で病む」

「子守りをこちらに丸投げか?!」

「そうとも言う」


 高度読み上げの任務から解放されたミナリオは、そばで機材を片付けて撤収準備をしているクトリに、なんとも言えない表情を向けた。

 

「…………クトリ様、この人達、ふざけているんですかね?」

「いや、()の会話ですよ?」

「でも、世界が大災厄で終末を迎えるか否かの修羅場(しゅらば)の会話に思えないんですが……?」

「まあ、確かにそうですが、面子(めんつ)面子(めんつ)だけに、しょうがないと諦めてください。間違いなく非常識の規格外集団ですから」

「…………………」



 まだ3人はシリアスとは程遠い思えない会話を交わしているが、恒星間天体の落下は、カイルが展開し続ける防御壁(シールド)によって阻止されていた。

 (はた)から見ると、例えるなら雑談をしながら、敵の進軍を片手間で食い止めているような構図だった。


「規格外の能力者を理解しようと努力することは、やめた方がいいですよ?労力と精神負荷に見合ったモノは絶対に得られませんから」


 少年姿の賢者(メレ・アイフェス)は悟りを開いたような口調で、専属護衛に助言した。しかも、やけに説得力があった。

 クトリはカイルに声をかけた。


「カイル、僕達、撤収しますね〜」


 こちらの賢者(メレ・アイフェス)の態度も少々おかしい。

 天空にここを目指して巨大な星が迫っているのに、そろそろ散歩をやめて戻りますね、に近いニュアンスで避難することを宣言している。


「うん、お疲れ様、協力ありがとう。助かったよ」

「…………カイル様」

「うん、何?」


 そんなメレ・エトゥールの執務室で手伝いが終わったような挨拶はやめてください――そう、抗議する機会(タイミング)をミナリオは(のが)した。

 ミナリオは諦めて、意味深なため息をついた。


「夢中になって、帰ることを忘れないでくださいね」


 専属護衛の幼児に言い聞かせるような注意の内容に、カイル以外の全員が吹き出した。


「ちょっと、ミナリオ?!」

「カイル様、皆様、ご武運を。皆様の未来が光り輝くものでありますように」


 ミナリオは戦場での別れの儀礼の言葉を用いることにした。多分、メレ・アイフェス達の挨拶より、こちらの方がふさわしい。


「ミナリオ」


 カイルは移動装置(ポータル)に向かうミナリオに声をかけた。


「ありがとう。僕は君が専属護衛でよかったよ。ファーレンシアのことを安心してまかせられる」

「……………………」


 青年はいつものように人を魅了(みりょう)する笑顔を見せた。

 去りがたくさせるとは、相変わらずの無自覚無双の凶悪さだった。


「……………………私が胃潰瘍(いかいよう)で倒れる前に、無事な姿を見せてください」

「それは責任重大だね」


 ミナリオの真顔の突っ込みに、カイルは笑い声をあげた。

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