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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第23章 大災厄⑤
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(24)我は汝の未来を信ずる②

お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。 (ごめん、寝落ちしかけた)


ブックマーク、ダウンロード、ありがとうございました。

現在、更新時間は迷走中です。

面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

「観測ステーションの妨害者がシャトル操縦者の爆殺を(たくら)んだ」


 ディム・トゥーラの報告の内容にギョッとしたのは、カイル達だった。シャトル操縦者とはディム・トゥーラしか該当しない。


「……爆殺って……それって、立派な殺人未遂ですよね?!なんでまた……」

「惑星に恒星間天体を落として、観察したいのだろう、さ」


 クトリは想像以上の研究都市のスキャンダルに青ざめた。一方、カイルは納得した。


「……確かにあれは、明確な悪意と殺意だった。標的は間違いなくディム・トゥーラだ」

「カイル、何を見たのです?」


 手当を続けながら、シルビアが尋ねた。


「ファーレンシアの初社交(デビュタント)で感じた想念と同じものを……あれがディム・トゥーラに向かっていた」

「カイルの警告のおかげで助かったんだ。ウールヴェ達(こいつら)が、(かば)ってくれた。トゥーラがいなければ、多分宇宙に放り出されていた。俺のウールヴェも死んでいたと思う」

「ロニオスは?」


 黙って聞いていたアードゥルは、ロニオスの所在を尋ねた。


「シャトルの自動修復が不完全で、ロニオスが補助して衝突予定地点まで、シャトルを持って行ってくれている。俺は彼に、先に飛ばされて――」


 ディム・トゥーラはそこで気づいた。

 なぜ、先に飛ばされたのだ。ロニオスに余裕があれば、ギリギリまでシャトルを誘導し、共に脱出できたのでは?

 余裕があれば――。


「――!!」


 ロニオスには余裕がなかった。だから、力が残存するうちに自分を地上に転移した。

 その可能性にディム・トゥーラは衝撃(しょうげき)を受けた。


「まさか、ロニオスはあのまま突っ込むつもりか……」


 ディム・トゥーラの言葉に、場が静まりかえった。


「……結局、ロニオスは情を持ったんだな……」


 アードゥルがつぶやくように言ったが、その意味は誰にもわからなかった。


「そうか、ロニオスのおかげで、ディムは無事に地上に来れたのか……」


 カイルが少し視線を落として言った。


 ディム・トゥーラの中で迷いが生じた。

 今、事実をカイルに伝えるべきか?ロニオス・ブラッドフォードはお前の遺伝子上の父親で、お前のルーツはこの惑星にあると――。


 シルビアの治療が終わると、ディム・トゥーラはあらためてカイルに向き直った。


「カイル」

「何?」

「……お前にずっと黙っていて悪かった。ロニオスはお前の――」

「知ってる」


 カイルは短く答えた。

 カイルの返答にぽかんとしたのは、ディム・トゥーラとアードゥルだった。


「……知ってるって……」

「ああ、うん。アドリーの隠し部屋でうっかり移動装置(ポータル)に触れて、地下拠点に飛ばされた時に、管理権限をもつ初期メンバーの名簿を見たことがあるんだ。その時は名前を確認できなかったけど、金髪金眼の短髪の男性で、僕に似ていた。まあ、エルネストがすぐに来たから、そこまでだったけど」

「……………………」

「……………………」


 二人は、カイルを呆然と見ることしか出来なかった。


「でも、過去の人だと思ったんだ。初代エトゥール王の人物は彼だと推察しただけで。あとから、記憶をたどり、その男性の絵を起こしてみたら、本当に僕にそっくりだから、骨格の遺伝子類似とか検証してみたんだ。まあ、近しい血縁者だとは、思った、その時は」

「…………じゃあ、どこで……」

「う〜ん、いろいろかな」


 自分のことなのに、カイルは妙に淡々としていた。


「世界の番人やウールヴェは、僕を頑固とか、似ていると連呼していたり、起動しないはずとエルネストが言ってた隠し部屋の移動装置(ポータル)が、起動したこととか。イーレが僕に管理者権限を与えようとした時に、登録エラーが起きて――後からエラーコードを確認したら、二重登録だったこととか。あと、エトゥールの地下拠点で、僕は認証されたよね?ほら、アードゥルが僕の手を掴んで認証させたヤツ」

「……………………」

「……………………」

「あとは、ロニオスだとウールヴェの正体が判明したあとの、アードゥルが協力的になって、僕に対してやや過保護になったことかな」


 ディム・トゥーラの半眼の視線を、アードゥルは避けた。


「でも、決定打は、僕の結婚の儀にディム・トゥーラがロニオスを秘蔵酒(さけ)で釣って参加させた時」


 今度はアードゥルが半眼の視線をディム・トゥーラに向けた。


「……お前……わかっているなら言えよ」

「本人が語らないことを、言うわけにはいかないでしょ?」

「「……うっ…………」」


 正論だった。


「クトリ、本番まで何分?」

「あと15分って、ところです」


 カイルがクトリに時間を確認してから、ディム・トゥーラを見つめた。


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