(19)我は汝が誇りの源①
お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。
はい、現在、ヘルニア再発で寝ています。パソコンにすら触れられません。(椅子に座れないから)
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(主人公と相棒を虐めすぎたんじゃね?説が、身内で流れている。まさに壁に叩きつけられたディム・トゥーラ状態。痛いよー。動けないよー)
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(今の私の心のオアシス)
そんなわけで 現在、更新時間は『さらに』迷走中です。
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毎日が平穏に過ぎていく。
満たされているようでどこか退屈な日常。
仕事と称して繰り返されるルーチン。それは単調であり、明日は変わらず訪れると思っていた。
でも知ってしまった。
大切なものが突然失われることがあるということに。
その不条理は災厄そのものだ。
当たり前の生活が、当たり前である幸福を人々は忘れてしまう。
それを思い出させるために、災厄はあるのかもしれない。
だが、不条理だ。
なんの予兆もなく、絶望の大穴に突き落とされるのだ。
そこから這い上がって見ろ、と。
足掻いてみせろ、と。
喪失の悲しみに耐えろ、と。
未来の希望を想像できない今を生きろ、と。
明日をどうしたらいいかわからない難事に立ち向かえ、と。
どうやって?
気力もない。
希望もない。
世界はそこに暮らす人々に何を求めているのだろう。
しばし、ロニオスの思念が途絶えた。
「ロニオス?」
アスク・レピオスは呼びかけた。
返事はない。シャトルの航行距離がロニオスの思念領域から離れたのだろうか?彼が観測ステーションにいるなら、ありうることだった。
「ロニオス・ブラッドフォード?」
アスク・レピオスは再度、呼びかけた。
やがて、小さな笑い声が聞こえた。
「ロニオス?」
笑いの思念が徐々に大きくなる。
なぜだかわからないが、ロニオスは笑っていた。笑い転げているというのが正しいかもしれない。
『これは……傑作だ。いやいや、こんな選択があるとは…』
「ロニオス?」
『君の思惑は、若い世代に阻止されたよ、アスク・レピオス』
「は?」
『だから、君の企みは、ものの見事に阻止された。乗員は無事だ。シャトルも無事だ。私が手を貸さなくても、彼は見事この難題を凌いだ。素晴らしい』
ロニオスの指摘に、アスク・レピオスは端末に飛びついて状況を確認した。
「馬鹿な!シャトル内の生体反応はなくなっているっ!」
『機械判定に依存するのは、我々の悪い癖だ。そうやって、データばかり追いかけるから、判断や想像力が退化していく。面白い証明事例だな。まあ、誰が細工したか推してしるべし、だ』
「ジェニ・ロウか?!」
『彼女以外の誰がいるというのだね?彼女はまさに君の天敵だな。笑ってしまうよ。実際、笑わせてもらった』
「馬鹿な――いや、例え乗員が生き延びていたとしても――」
『彼の選択は非常に面白いものだったよ。脱出ポットの全エネルギーを宇宙塵防御システムに注ぎ込み回復させるなどという発想はなかなかできないだろう?若さゆえの特権かもしれないな』
「シャトルから脱出できないぞ?!」
『そうだよ。わかっていながら彼はそれを選択した。自分の役割を果たすために』
ロニオスの口調は、どこか誇らしげだった。
「自己を犠牲にしてか?!狂っている!!」
『いやいや、狂っているのは我々の世界かもしれないよ?アスク・レピオス。私はそう考えているし、少なくとも君と私は同類だ。君も私も狂っている。――ところで、私がこちらに来た理由をもう一度言おう。私は君と昔話をしにきた』
声と思念の威圧が増した。
「………………昔話……?」
『そうだ、昔話だ。この惑星に来た頃の話は、昔話に該当する。それぐらい地上では、年月が立っている。彼等は極めて短命で、我々と違う時間軸を過ごしている』
ロニオスの思念に冷たさが増した。
いや、思念ではない。実際にシャトル内の温度が急激に下がったようだ。その証拠にレピオスの吐く息が白くなっていた。
シャトル内の温度が10℃以下になったとでも――。
アスク・レピオスは慌てた。空調の故障か?
空調は正常に起動しており、それにもかかわらず、内部温度はゆっくりと低下している。まるでそれはカウントダウンだった。
「何を……」
『今更、君が私の妻たる地上人の治療を拒否したことは、責める気はない。そう、治療を拒否したことは――ね。この長い年月、どうしても、君に確認したいことがあったのだよ。もちろん、君は覚えているだろう。いや、忘れたとは言わさない』
ロニオスの声の冷たさがさらに増した。
『君は私の妻であるリヴィアの生命維持装置を切らなかったかね?』




