(7)我は汝を守りたまわん③
お待たせしました。本日分の更新になります。
お楽しみください。
奇跡の3日連続更新!今月の奇跡は、きっとこれで使い果たした!もう期待しちゃいけないっ!(憔悴)
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「その仮説が真実なら、君はあちらのシャトルの救済に走るべきではないのか?」
『それは当然天秤に乗せてみたからだよ』
「天秤?」
『実は天秤の歴史は古くてね。超古代文明時代から、必要不可欠な道具として生まれ、産業、商業、科学、工業、農業、医学、あらゆる分野の発展を支えてきた素晴らしい古代遺物だ』
「いや、天秤の定義を聞きたいわけではないんだが?」
『いやいや、重要なことだよ?』
時が巻き戻ったような錯覚をアスク・レピオスは感じた。
「思い出した。昔から君はそういう性格だった」
『そうかね?』
「基本定義に立ち戻って講義してから、新説の議論に皆を巻き込んでいただろう。よく皆で寝不足になった」
『最後は、ジェニに論文の素案メモを消された』
「まあ、そうでもしなければ、解散しない連中だったから、その点のみジェニ・ロウを、支持してもいい」
『なんとつれない……そこは私に同情してくれてもいい事案だが』
「で、天秤がどうしたって?」
『天秤は公正と平等の象徴ともされる。私は文字通り天秤にかけてみたんだよ。あちらのシャトルの乗員の命か、はたまた君とこうして話す機会を得るか』
ロニオスの思念に笑いが走った。
『喜んでくれてもいいぞ?私はあちらのシャトルを救うことより、君との対話を選択したのだから』
管理室のスクリーンに映像が入った。
先行する恒星間天体だ。
「恒星間天体、観測地域に入りました」
「先行の恒星間天体α確認、軌道誤差修正コンマ000001」
「速度誤差ゼロ」
「カウントダウンにズレは?」
「ありません」
ジェニ・ロウはスクリーンを見つめた。通常の小惑星より巨大な塊の表面には、多数のクレーター痕が見られる。問題は速度だ。
「これで、半分の大きさ?冗談にもほどがあるわ」
「そうだねぇ。元の大きさで落ちていたら、打つ手なしだったよ」
「ああ、こんな悪趣味な惑星探査計画を立案した昔のロニオスを殴りたい気分よ」
「私はそう思えないんだよねぇ」
「なんですって?」
「あの惑星探査計画がなければ、君を口説くことは叶わなかったから」
「――」
ジェニ・ロウは思わず真横に立つエド・ロウを見つめた。彼は妻の視線に気づいて、微笑み返した。
次の瞬間、エド・ロウは思いっきり足を踏まれた。
「ライアーの塚」地下拠点では、人々が呆然と天井を見上げていた。
どうして、外の景色が空中の一部分に切り取られたように、存在しているのだろう。そしてそれは王都の空であることは、そこにいる誰もが悟った。
「この定点カメラはどこ?」
イーレは囁くようにエルネストに尋ねた。
「エトゥール城の城壁上部につながる側防塔から東方面、外壁に向けての風景だ。クトリ・ロダスが設置したと聞いている。これだけ解像度がよければ、しばらくは気を逸らすことができるだろう」
エルネストはイーレの質問に答えると、後ろに控えるファーレンシア・エル・エトゥールに頷いて見せた。
ファーレンシアは頷いて答え、深呼吸をした。
『エトゥールの民よ』
ファーレンシアの声が天井から響いた。
『ここに避難しているエトゥールの民よ。この光景をよく見て、記憶にとどめてください。今、私達の目の前にひろがる光景は、遠く離れたエトゥールの様子を、偉大なるメレ・アイフェスの技で見ています』
天井からファーレンシア・エル・エトゥールの声があたりに響く。それだけでも奇跡に等しい効果があった。
『兄であるセオディア・メレ・エトゥールと、私の夫であるカイル・メレ・アイフェス・アドリーは、今から起こる大災厄の被害を最小限に食い止めるべく、エトゥール城に残留しています』
場に衝撃が走った。誰もがエトゥール王とっくの昔に安全な場所に避難していると思っていたのだ。扇動していた者もそれを主張していた。それが否定され、人々の間にざわめきが広がっていった。
「カメラ切り替え。中庭の人物達を」
エルネストの小声の命令にAIは正確に従った。
スクリーンに映るエトゥールのシンボルである精霊樹が、エトゥール城中庭の光景であることを証明していた。エトゥール王と数人のメレ・アイフェス達が東の空を見つめて待機している。
「カイル様……」
離れた場所にいる愛する人の姿を思いがけず見ることができて、ファーレンシアは泣きたくなった。




