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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第23章 大災厄⑤
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(2)我がいのち、我が信は汝に属す②

お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。


ブックマークありがとうございました!

現在、更新時間は迷走中です。

面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

「あの……よくわかりませんが……」


 ディム・トゥーラは正直に言った。上司であるエド・ロウの警告は支離滅裂(しりめつれつ)だった。いつもの彼からは想像できない混乱ぶりが(うかが)えた。


『すまん。正直な話、私にも訳がわからないが、ジェニがそう言うんだ。ロニオスに関する(つちか)われた経験則というか、野性の本能というか、散々な目にあった教訓というか――ジェニが言うから間違いない』


 いったいジェニ・ロウはロニオスの副官時代にどんな目にあったと言うのか――確認するのも恐ろしい、とディム・トゥーラは思った。


「なんとなく、言いたい状況の悲惨(ひさん)さは伝わりますが…………こう……もう少し具体的な参考になるヒントが欲しいところです」


 どうして単純に物事(ものごと)は進行しないんだ、とディム・トゥーラは呻いた。


「いったいロニオスが何をやらかすと言うのやら……」

『心当たりはないか?』

「ありませんね。えっと……状況を整理すると、ロニオスがいなくなっている――これであってますか?」

『まあ、とりあえずは』

「旧区画の爆破に関しては、問題がないから所長達に丸投げ――それは理解できます。ロニオスが不在で困るのは、俺と地上ですね」


 ディム・トゥーラは言及(げんきゅう)したが、困っているような口調ではなかった。


『なんだって?』

「シャトルからの脱出で、俺は元々彼に瞬間移動(テレポート)してもらう予定だったんですが?」

『そういえば、そうだったっ!――待ってくれ、脱出手段の有無(うむ)の問題なのに、なぜ君はそんなに冷静なんだ?』

「あらゆる状況を想定しろって言うのが、ロニオスの教えです。その教えを受けた俺の想定の中に、『ロニオスがへべれけ状態で使い物にならない』場合が含まれていないとでも?」

『……………………』


 エド・ロウが大きな溜息をついた気配があった。


『彼はそこまで君の信頼を失っていたのか…………』

「いや、信頼していますよ?腹立たしいほど、正確な未来予測と、その容赦ない指導力。部下の能力を最大限に引き出す狡猾(こうかつ)な手法。人を(おとし)めることに密やかな喜びを見出す性格の悪さ。文明滅亡より酒を選びかねない依存っぷり――」

『…………それは、信頼なのか?本当に、信頼に分類していい項目なのか?』

「そこらへんは奥方に見解を聞いてください」


 ディム・トゥーラは(かたわ)らに待機する自分のウールヴェにこっそり(たず)ねた。


「ロニオスの居場所はわかるか?」


 質問に白い虎は困ったような表情を浮かべた。そんな反応を示すところが、人語を理解して動物とは違うウールヴェの特徴だった。


「なるほど。わからないか、口止めされている、と判断する」


 ウールヴェは申し訳なさそうな表情でディム・トゥーラを見つめている。


「俺もロニオスが何かやらかす説を支持します。ウールヴェに口止めをしているから確定だ」

『ウールヴェに?』

「地上にもロニオスは当てにするな、と伝えます」

『君の脱出手段は?』

「地上の話がなかった当初の予定通り脱出ユニットを使います。こちらはシャトルを衝突の航行軌道に乗せれば、お役ごめんだ」

『初回の恒星間天体の爆発時に大量のデブリが発生する』

「デブリ対策は完璧ですよ」


――お前はちゃんと正しい道を選択する。それについては心配ない

――思わぬ出来事が起きても動揺して立ち止まるな。冷静でいろ。お前は要石(かなめいし)


 地上の占者(せんじゃ)である老婆の言葉が蘇る。

 思わぬ出来事とは、このことだろうか?

 立ち止まるな。冷静でいろ――老婆の助言は有用だった。

 ならば、自分が選ぶべき正しい道とは?


「決まっている……」


 ディム・トゥーラは呟いた。恒星間天体の軌道をかえ、カイル達の世界を存続にさせることだ。





「ロニオスが行方不明?」


 カイルはディム・トゥーラの報告に唖然(あぜん)とした。この土壇場(どたんば)になって、期待していた戦力が半減したとの宣告に等しい。


『所在が確認できないだけだ』

「いや、それを行方不明って言わない?」

『予定通り恒星間天体の軌道(きどう)は、俺が変えることには、何ら変更はない。ロニオスがいない場合のプランで行くぞ』

「え?あのまさかのへべれけ想定プラン?」

「なんだ、そのプラン名は?」


 思念会話を聞いていたアードゥルが突っ込みを入れる。


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