(1)我がいのち、我が信は汝に属す①
お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。
やっとこさ新章です。
いきなり訳のわからない会話からスタートしてますが、ロニオスさんのせいです。しばらく我慢してください。
本番です。
本番のはずだ。
本番だよね……?
キャラが言うこときいてくれない。助けて……(涙目)
現在、更新時間は迷走中です。 面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)
「昔から君はそういうタイプだった」
観測ステーションからのシャトル離脱は自動操縦に任せてアスク・レピオスは、相手に向かって言った。
シャトルの飛行空域は恒星間天体の爆発に巻き込まれないようすでにプログラム済みだった。その離艦間際の最後の最後で、望んでいた巨大なお宝を掘り当て、アスク・レピオスの胸は興奮で高鳴っていた。
なんと楽しい会話だろうか。
『そうかね?』
姿のない思念波は否定してきた。懐かしい声でもあった。
ロニオス――ロニオス・ブラッドフォード。彼は生きていた。
観測ステーションのドッグで密やかな離艦準備をしている時に彼は話しかけてきた。相も変らぬ強大な思念波をピンポイント的に送ってきたのだ。
『アスク・レピオス。随分急いでの中央へのご帰還のようだな』
話しかけられてアスク・レピオスは仰天した。
一つは密やかな観測ステーションの離脱計画を悟られたこと。もう一つは、その思念波が忘れたくても忘れることのできない波動だったことだ。
高慢ともとれるが、逆に感情の読めないような相矛盾する口調の主。
「ロニオス・ブラッドフォードっ!」
『おお、五百年ぶりというのに、名乗る前に察していただけるとは感激の極みだ。久しぶりだな、アスク・レピオス』
「やはり生きていたのか!エルネスト・ルフテールとアードゥルが生存している報は噂できいていたが……彼らが生存しているなら、君もそうだと思っていたっ!」
『なるほど、そう推論したわけか』
「どこだ?どこにいるのだ?!生体IDは反応していなかった!」
『ふむふむ、そういえば君は医療担当だったね。全員の生体IDを管理し、居場所まで把握するのはお手の物だ』
「医療担当責任者だ」
レピオスは厳格に訂正した。
『元だろう?』
さらなる訂正を加えられて、アスク・レピオスは顔をしかめた。
貶められることは不快だが、ロニオス・ブラッドフォードはそれが許される人間だ。もっとも本人はその発言が他者にどう受け取られるか無頓着なところがあった。
「ブラッドフォード、私は君の部下の言いがかりでひどい目にあったのだぞ?」
『おや、それはいったい?』
「君の副官だ。彼女は私を閑職に追いやった」
『ほう?』
「言いがかりも甚だしいっ!私が医療従事者として不適格だと貶めたのだぞっ?!責任者の職を剥奪されたのも彼女のせいだっ!」
『彼女の縁故を考えれば、それぐらいですんで御の字と思うべき事案だと思うが?闇に葬られても誰も気づかないということも十分にありうる』
「だから彼女の上司である君に訴えている」
『私は彼女の上司ではない』
「元上司だろう?中央のエリート職の彼女がこんな辺境に来ているのは、君のためではないかね?」
『………………』
ロニオスは考え込んでいるようだった。
『なるほど。機会があれば、彼女に注意をしておこう。君はこの件について、もう気に病む必要はないことを保証しよう』
「ありがたい」
『ところで、なぜこんなに急いで中央に帰還を?もうすぐ素晴らしい天体ショーが見られる。恒星間天体が惑星と衝突する確率は1億年に1度程度だと言われている。これを見逃す手はないと思うぞ?恒星間天体がこのまま落ちれば、記録的な津波が起き、海底火山が誘爆し、地軸は揺らぐ。天変地異による氷河期の期間は10万年程度だ。君が望んでいるこの惑星の地上文明の滅亡だ。なぜ見学しない?』
ブラッドフォードの思念がやや冷たさを帯びたのは気のせいだろうか?
「ジェニ、ロニオスは?」
新エリアの中央管理室でエド・ロウは指揮をとっている妻に囁くように尋ねた。
「こちらに丸投げ宣言が先ほどきたわ」
「なんだって?」
「私達の方は問題ないわ。すでに旧区画は衛星軌道上の固定座標に移動している。妨害はなかった。問題はディム・トゥーラの方よ。彼は所定の位置についてる?」
「すでにシャトルで航行開始をしている」
ジェニは考え込んだ。
「ディム・トゥーラに伝えて。ロニオスが何かをやらかすって」
「…………何かって何?」
ジェニは親指を噛んだ。
「それがわかれば苦労しないわよっ!でも長年の経験から確信しているわ!ロニオスが何かやらかすから気を付けてって伝えてちょうだいっ」
「君の経験則とロニオスの古狐ぶりを考えると、お先真っ暗じゃないか……」
「古狸の貴方がそれを言う?」
半眼でジェニ・ロウは夫に突っ込んだ。




