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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第22章 大災厄④
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(74)閑話:拠点の思い出⑤

お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。


ブックマーク、ダウンロード、ありがとうございました!

現在、更新時間は迷走中です。 面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

「ロニオスには感謝しているし、おかげでエレンに出会えた。子供の世話ぐらいどうってことはない。いくらでも協力しよう」

「ありがたいけど、貴方って本当にエレンにベタ惚れね……」


 アードゥルは珍しく唇の端をあげ、肯定した。





 ロニオス・ブラッドフォードが中央(セントラル)から帰還するまで、三人による育児は続いた。今まではロニオスが管理していたから、地上人が普通に世話をしていたという。

 ロニオスは不在中に赤子が起こす超常現象が、パニックを引き起こし、無知な地上人の迫害犠牲になることを恐れ、ジェニ達に託したのだ。


「…………それって、すでに子供に情を()かしてないのか?」

「気づかないふりをしてあげるのも温情よ?」


 ジェニは、片目をつぶってみせた。


 アードゥルが遮蔽(しゃへい)をしてさえいれば、金髪と金色の瞳をもつ赤ん坊は、素直で愛らしかった。

 赤子はアードゥルと共に過ごせばいつでも上機嫌だった。


「普通は女性の方に(なつ)くものだけどね」


 ジェニとエレンは、その様子を見て笑った。


「それは男性がこういう触れ合いをしないからだろう」

「違いないわ」


 アードゥルはジェニに許可をもらい、ロニオスの赤ん坊に地下拠点への入場権限を与えた。さすがにアードゥル自身の日常の業務を放置するわけにはいかなかったのだ。


 普段、無愛想で人付き合いの悪いどこか排他的なアードゥルが、見慣れぬ赤ん坊を片腕に抱いて地下拠点の廊下を闊歩(かっぽ)した時、すれ違う研究員は皆、ギョッとして二度見していた。


 未だかつて、これほどおかしな組み合わせがあっただろうか。


「アードゥル、どこから誘拐してきたんだ?!」


 失礼極まりない驚愕(きょうがく)の叫びに、アードゥルは発言者達を(にら)んで黙らせた。だが、その不釣り合いぶりは、何よりもアードゥルが自覚していた。


「本当に、どこから誘拐(ゆうかい)してきたんだか」


 アードゥルの研究区画までわざわざ訪問しにきたエド・アシュルは、事実を確認して面白そうに言った。


「エディ、それを言いにわざわざ拠点に戻ってきたのか?」

「各拠点に衝撃が走る噂が駆け巡ったんだ。確かめたくなるのは当たり前だろう?『アードゥルが誘拐犯(ゆうかいはん)になった』『アードゥルが気が触れてデカいぬいぐるみを持って廊下を歩いていた』『エレン・アストライアーが子供を産んだ』……」

「あっているのは2番目だけだな」

「え?本当にこのぬいぐるみを抱いて拠点の廊下を歩いたのかい?」


 柵のある簡易寝台の中で赤子より大きなぬいぐるみと、問題の赤ん坊は(たわむ)れている。やや驚愕の表情でエド・アシュルは、アードゥルを見た。


「歩いたが、何か?」


 遭遇した連中にとって、さぞホラーな光景だっただろう、とエド・アシュルは思った。

 鉄面皮(てつめんぴ)に近い無愛想な男が、巨大なテディ・ベアを持って拠点の廊下をずんずんと歩いていく――そんな面白い光景を見逃したのか、とエド・アシュルは本気で(くや)しがった。


「で、女性達は?」

「今は仮眠時間で、休んでいる。エディ、拠点に舞い戻るくらい暇なら、育児を手伝って欲しいものだな」

「噂のロニオスの三番目の子供を見に来ただけだ。それほど暇でもないんだ」

「手伝うとジェニ・ロウの覚えがめでたくなると思うが……」

「なんでも手伝うから言ってくれ」


 ロニオスの副官を口説き落としている最中のエド・アシュルの豹変ぶりに、アードゥルは笑いを噛み殺した。





 そんな育児事業はロニオス・ブラッドフォードの帰還により終わりを告げた。

 すでにルーチンと化していた日常を失い、アードゥルは心に空虚なモノが生まれたことを自覚したが、それが何かわからなかった。


 ロニオスからの育児協力の礼は、地上植物の大量サンプルやアードゥルが欲しがっていた論文や資料と潤沢な予算だった。

 過剰(かじょう)とも言える贈答品(ぞうとうひん)にアードゥルは呆然とした。


「受け取っていいと思うわよ。私達はそれぐらいの貢献はしたんだから」


 臨時補給品の個人リストを渡しながら、ジェニは言った。


「ジェニは何を貰ったんだ?」

「最新の量子コンピュータよ」


 にっ、と勝利の笑みをジェニ・ロウは浮かべた。


「これまたロニオスの財産を消耗(しょうもう)させる品を頼んだなあ」

「ロニオスに説教しようと思ったけど、やめてあげたわ」


 それはロニオスの目論見(もくろみ)にハマっているのでは、という指摘をアードゥルは懸命にも飲み込んだ。ロニオスだったら、ジェニの要求を予想して、とっくの昔に手配を終えていそうだった。


「ところで最近元気がないとエレンが心配していたけど?」


アードゥルは突然の問いかけに苦笑を漏らした。

普段は真面目な無表情男が、ある日巨大テディ・ベアを抱えて歩いている――この光景に遭遇する恐怖!

(なお、このぬいぐるみはエレン・アストライアーの手作り品である)

※注)イーレの裁縫の腕は聞かない方がいい(何)


続きます。

(いつになったら新章に入るんだ、と作者も思っている)


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