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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第22章 大災厄④
922/1015

(62)カウントダウン⑳

お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。 現在、更新時間は迷走中です。

矢沢永吉の日本武道館ライブが楽しすぎました。日本武道館アリーナ席で永ちゃんがあんなに近いなんて(吐血卒倒)

よし、完結まで頑張るぞっ!

あ、ごめん。今週末も横浜アリーナで更新あやしいかも(宣言)


ブックマーク、ダウンロードありがとうございました。

面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

「一応被害範囲は、例の赤い(はた)だけど、ズレる場合もあるので、必ずエトゥールの国外に避難して。申し訳ないけど、侵攻(しんこう)しているカスト軍は全滅する」


 カイルは感情を込めないよう、淡々と告げた。

 大量の人間が死ぬとわかっていても、何もできないし、するつもりもなかった。カスト人のこの二人に非道とか鬼畜だと(ののし)られることも覚悟していた。

 だが、罵声(ばせい)はあがらなかった。それをカイルは不思議に思った。

 老将軍はカイルをじっと見つめていた。それから静かに語りだした。


「アドリーで私達のテントに姫とメレ・アイフェス達がきてな」

「え?」

「あのディヴィの武器の所持を見抜いた千里眼(せんりがん)の少年のメレ・アイフェスと西の民の若長夫婦と一緒に」


 ファーレンシアとクトリとイーレ夫婦が、カストの避難民キャンプのガルース将軍を訪問した――それはカイルにとって初耳だった。もしかしたら、第一兵団と被害境界線の村々を巡回して不在だった時の話かもしれない。


「千里眼を持つ少年が動く絵を見せてくれた。今までとは比べ物にならないほど大きな星が落ちてくる『想像の動く絵』だと言うものを見たぞ」

「――」

「それに加えて、若長の妻がわかりやすく説明してくれた。星が海に落ちると、恐ろしいことになると。丘よりも高い波が大地を襲い、大陸の半分が水につかり、海では新たな火の山が生まれ、噴煙(ふんえん)が陽を(さえぎ)る。やがて全てが凍りつく時代がくると」


 はあ、っとガルースは大きなため息をついた。


「実際に星が落ちる光景を見てなければ、眉唾(まゆつば)な話だと笑い飛ばしていたことだろう。だが、空から星は落ちてきた。導師の警告に嘘はないことは、散々思い知った。世界は滅ぶ――それをメレ・エトゥールとメレ・アイフェス達は、変えようとしていると姫は説明してくれた」

「ファーレンシアがそんなことを……?」

「君の重荷を少しでも減らしたいそうだ」




 カイルは泣きたくなった。

 前にもそんな感情を抱いたことがあった。あれは、自分の助言が引き起こした戦争の結果として、聖堂で死を待つ人々を前にした時のことだ。


――俺はお前の支援追跡(バックアップ)をする。お前がここに戻るまで


 ディム・トゥーラの言葉に救われた時と同じだ。


 一人ではない。

 ファーレンシアがいる。

 ディム・トゥーラがいる。

 シルビアやイーレ、クトリや初代達がいる。


 今、自分は一人ではないのだ。




「本当に世界を救うために、星をエトゥールに落とすのか?」

「……うん」

「美しい王都だった」

「……僕もそう思う」

「あれがなくなるのか……」

「……うん」

「カスト軍のことは、気にしなくていい。我々の問題だし、かなりの平民兵士は救えている。むしろそのことに感謝している。この恩は将来必ず返そう」


 カイル少し視線を落としてから、ガルース将軍と副官の娘を金色の瞳で見つめた。


「貴方の未来が光り輝くものでありますように」


 それは聖句だった。異教の祝福をガルースは激高することなく、受け入れた。そして驚いたことにカイルに同じ言葉を投げた。


「君の未来が光り輝くものでありますように――。導師(メレ・アイフェス)よ、君は私が人生で会った二番目の知恵者だ。出会えたことを光栄に思う」

「……ありがとう」

「ちなみに一番目はセオディア・メレ・エトゥールだ」


 意外なことをカストの大将軍は言った。


 カイルとアードゥルは、ウールヴェの背にまたがると、将軍達に見送られながら跳躍(ちょうやく)をした。





「カイル様……」

「泣かないで、ファーレンシア。お腹の子に障るよ」

「は、はい」


 それでも、ファーレンシアは別れの寂しさから、ポロポロと涙をこぼした。これからファーレンシア達は、ライアーの塚の地下拠点に避難して、大災厄が終わるまで待機することになっていた。


「ファーレンシア」

「ご、ごめんなさい。でも、でも――」


 カイルは微笑んだ。


 彼女が愛しくてたまらない。

 人生の中で、ほんの(わず)かな時間しか共に過ごしていないが、こんなにも自分を愛してくれて、自分も愛することができる存在に出会えるなんて奇跡に等しい。

 カイルはファーレンシアを抱きしめた。

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