(61)カウントダウン⑲
お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。
現在、更新時間は迷走中です。
今日は武道館前の駐車場に朝からいて、スマホから変な時間に投稿してます。(懺悔)
今日のライブ後、寝落ちの先見をしているからです。(占者ナーヤ)
評価ありがとうございました!大変励みになります。(拝礼)
面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。
カイルはそう言って説明用に開封したアンプルを、どちらかに飲むようにすすめた。
「私が飲みます」
ダナティエは躊躇なく、カイルの手からアンプルを受け取ると、ガルースが止めるまもなく、飲み干した。カイルはその行為が毒味役も兼ねていると気づいた。不在の父親に変わり、ガルース将軍を護る――見上げた根性だった。
カイルは空の容器を受け取ると、地面に無造作に放った。
空のアンプル容器が軽い音をたてて地面に触れたとたん、容器の外形の腐食が始まり1分もしないうちに砂になってしまう。
地面にはかすかな砂粒が見えるだけで、容器は消失していた。ガルースとダナティエは、目をみはった。
「一度開封した容器は、土壌成分に触れると、分解する仕組みなんだよ」
「「どういう仕組みで?!」」
「これはね、土壌にある大量の微生物と 反応して――」
馬鹿正直に説明しようとするカイルの頭を、アードゥルは背後から拳骨で容赦なく殴った。
痛みにカイルは頭を抱え込みながら、しゃがんで耐えた。
「メレ・アイフェスの技術だ。忘れろ」
アードゥルは説明を中断させ、カスト人の二人ににそっけなく言った。
「ふむ」
ガルースは地面の砂粒に指で触れて、容器が消失したことを実際に確認していた。未知の技術でも自分で確認しないと気が済まない性格のようだった。
ダナティエは物怖じせず、アードゥルの腕を掴み迫った。無礼さを越えて、その行為は馬の絵を得るまで逃すまいとカイルを捕獲したガルース将軍にどこか似ていた。
意外にもアードゥルは激怒しなかった。
「原理は諦めます。取り扱いのため、確認したい注意事項がいくつか」
「…………なんだ?」
「もし泥だらけの手で触れたら?」
「開封前なら大丈夫だが、開封と同時に容器が腐食して傷薬を手に浴びることになる」
「なるほど。容器の耐久度は?ガラスみたいに割れますか?」
「割れない」
「再利用時に地面にふれたり、泥だらけの手はダメ、と。丈夫。容器に口をつけたらどうなります?」
「なんだって?」
「汚いものにふれたら分解するということかな、って。口の中も汚い場合、ありますよね?」
「――」
アードゥルはダナティエを見つめた。
「…………頭の回転が速いな」
「わーい、メレ・アイフェスに褒められた」
ダナティエは手を叩いて喜んだ。
「……なぜ喜ぶ?」
「叡智を司る賢者に褒められたら、嬉しいのは当たり前です」
すごい、あのアードゥルを翻弄している――カイルが感心したとたん、カイルはアードゥルに頭を再び叩かれた。
筒抜けだった。
「簡単に言うと、土の汚さと口の汚さは種類が違う。容器の再利用で水を飲むために口をつけても劣化はしない。だが時間が経てば、水は雑菌が繁殖して腐るぞ?」
「飲料水とするときは、煮沸しろ、ってことですね?」
「そうだ」
「あと、もう一つ、ガラスではないのは容器の重量のせいだと推察しますけど、あえてこんな高価なものを使い捨てにするのは、なぜですか?」
「………………」
アードゥルは、目を輝かせて尋ねる少女を見つめ、視線をそらし、ため息をついた。
歌姫といい、もしやアードゥルは探究心旺盛なタイプに弱いのでは――と、カイルが訝しんだとたん、またもや後頭部を叩かれた。
「我々にとっては高価じゃなく、安価でいくらでも作り出せる利便性の高いものだ。だからこそ地上に痕跡を残すわけには、いかない」
「なるほど。よくわかりました」
ダナティエはブツブツとつぶやいて、何事か検討しているようだった。研究者向きの好奇心の強さに、カイルは感心した。
「ガルース将軍、カウントダウンを忘れないでくださいよ?必ずエトゥールから離れるように」
「0になれば、空から星が降ってくる、だったな」
「一つ目の異変は、空が異様に激しく輝く。流れ星が多数生まれて、昼間でも見えるはず。そこから2回目のカウントダウンが始まるから」
「2回目?」
「およそ、その3時間後にエトゥールは消滅するんだ」
ガルース将軍は黙った。
(2023/12/18 次話との都合上、カイルの口調を修正しました。矢沢永吉のライブにはっちゃけすぎて、日曜日は寝てたことを懺悔いたします)




