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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第22章 大災厄④
917/1015

(57)カウントダウン⑮

お待たせしました。本日分の更新になります。

お楽しみください。

現在、更新時間は迷走中です。


面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

 カイルはウールヴェのトゥーラを呼び出した。

トゥーラは最近、身重のファーレンシアの専属護衛のごとく、アドリーにいる彼女のそばから離れなかった。多忙であるカイルの代理として、見守っているような気配すらあった。

 純白の狼は軽やかに跳躍(ちょうやく)してきた。


――なあに?


「傷薬の運搬を手伝ってほしいんだ」


――がるーす将軍の ところにいくの?


 トゥーラは会話を聞いていたかのように、察しがよかった。いや、もしかして世界の番人が伝えているのかもしれない。


 カイルはトゥーラの質問に考え込んだ。

 将軍が作戦中だとしたら、その目の前に出現するのは、まずいかもしれない。


 カイルはダナティエに対して短い伝言をかき、彼女のウールヴェと共にトゥーラを一度跳躍させて、様子をうかがうことにした。


 二匹はすぐに戻ってきた。


――だなてぃえ 傷薬の補給の件 感激していたよ。 彼女が 代理で受け取るって


「跳躍先は安全かい?」


――大丈夫


 カイルはダナティエのウールヴェに背嚢(はいのう)を一つ持たせた。


「私も行こう」


 意外なことにアードゥルはそう言うと、ウールヴェへの傷薬の積み込みに手を貸してくれた。


「え?」

「お前が厄介ごとに巻き込まれて、本番に不在とかになると作戦が失敗に終わる」

「不吉なことを言わないでよ」


 これは信用がないから同行して見張ることにしたのでは――と、カイルは思った。


「私のウールヴェも使ってください」


 有難いことにシルビアが申し出てくれたので、アードゥルは複数の背嚢(はいのう)を背負ってシルビアのウールヴェにまたがった。

 カイルはトゥーラにまたがると、猫型のウールヴェに話しかけた。


「ダナティエのところに連れて行っておくれ」


 3匹のウールヴェは同時に跳躍した。





 跳躍した先には、一人の娘が待ち構えていた。

 ディヴィ副官の娘は、複数のウールヴェの出現に動じることなく、丁寧に一礼をして応じた。


「カイル様、ありがとうございます」

「将軍達は不在かな?」

「少々、お待ちいただけますか?」


 ダナティエは自分のウールヴェから背嚢(はいのう)をはずすと、何か話しかけ、どこかに飛ばした。彼女はウールヴェを完璧に使いこなしていた。


「……使いこなしているね……」

「はい。頭のいい子で助かっています」


 ダナティエはカイルの同行者を見つめた。


「彼はアードゥルと言って――」

「四つ目使いですね?」


 ダナティエの言葉に、カイルはあんぐりと口をあけた。

 ダナティエはカイルの反応に笑った。


「メレ・エトゥールが彼を指名手配した時に、父はちゃっかりと写し絵を手に入れたそうです。メレ・エトゥールと敵対しているなら、味方にできないか、とまで考えたみたいですよ?」


 副官ディヴィが、セオディア・メレ・エトゥール並みに暗躍(あんやく)するタイプだとは思わなかった。有能な大将軍の副官は、やはり有能だった。


「……カスト王が(おろ)(もの)でよかった……」


 カイルは、ぽつりと本音をもらした。カスト王がガルース将軍を厚く重用(ちょうよう)していたら、恐ろしいことになっていたかもしれない。

 もしかして、セオディア・メレ・エトゥールがガルース将軍を欲したのは、有能な副官がセットで付いてくることが理由だったのでは、とカイルは思い当たった。


「私がカストに組することは、天地がひっくり返っても、ないな」

「残念です」


 アードゥルのつぶやきに、ダナティエは笑いながらトゥーラの荷をはずしにかかった。


「トゥーラ、あとで林檎(りんご)をあげるね」


――わーい


 アードゥルが呆れたようにカイルを見た。


「お前のウールヴェが買収されているが、いいのか?」

「僕のウールヴェのメレ・エトゥールへの忠義(ちゅうぎ)は、林檎(りんご)より安いんだよ」


――そんなことないよ


 トゥーラは抗議したが、若干(じゃっかん)説得力に欠けた。


「なぜ、ウールヴェが猫型なんだ?」


 アードゥルが質問した。ダナティエは隠すことなく、あっさりと答えた。


「どこにでもいて、しかも違和感がない生物だからです」

「なんだって?」

「街や村に猫がいても、誰も気にしないでしょう?猫嫌いじゃない限り、たいていの人は愛でます。まあ、犬でもよかったんですが――」


――犬じゃない


「こんな風に、犬型はウールヴェに拒否されてしまったんです」


 ダナティエは肩をすくめてみせた。

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