(54)カウントダウン⑫
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「カイル、どの道、エトゥールにおちたら周辺は跡形もありません。それはわかっているでしょう?熱で剥がれた欠片なんて、今までの落下物に比べればかわいいものです」
クトリが淡々と事実を指摘した。
「高速でおちてくる巨大隕石の方が、はるかに凶悪な巨大爆弾ですよ」
「わかってる」
「本当にわかってるんだか……」
「どちらかというと、我々の脱出時間を稼ぐための外郭全体を覆う防護壁の方が重要だぞ?」
アードゥルが言う。
「脱出の安全が確保できないのでは、本末転倒だ。少なくとも私はお前達と心中する気はないからな」
「僕だってカイルと心中するのはイヤですよ。何が悲しくて、こんなボランティアで死ななくちゃいけないんですか」
「……言い方……」
カイルはクトリの手厳しい物言いに吐息をついた。
「脱出時間は何秒欲しいんですか?」
「30秒」
「また、無茶を言う。地面を25キロえぐる爆発の中でそれに耐えろと言うんですか?」
「30秒だけだ。この馬鹿を引きずって、移動装置に飛び込むならそれぐらい欲しい」
二人は揃って、元凶の馬鹿を見つめ、同時に大げさなため息をついた。協力してもらっている手前、カイルは何も言えなかった。
「三重……いや五重に展開して耐えるしか……」
「一つの防御壁の耐久時間は6秒か……」
「いや、再外側は2秒ぐらいですよ」
クトリは計算式と結果のグラフを見せた。
「なんで、こんな計算ができる?」
「元々、隕石の着弾計算の理論式はあるんです。隕石の大きさ、質量、入射角、突入速度でおおよそは算出できます」
「ほう。さすが専門だな」
「僕の専門は気象学であって、宇宙物理学ではありません」
「では、なぜこの馬鹿の協力を?」
クトリはあらためて問われて、思わず考えこんだ。
「………………成り行き?」
答えてクトリは、はっとした。
いつだったか、カイルと仲がいいわけではないと言ったディム・トゥーラを追求した時と同じ台詞だった。「こんなに労力を割いているのは、何故か?」の質問にこの答えが出てきたのだ。
「……………………やばい。僕も究極人たらしに、完全に垂らされている……」
「なんだ、それは?」
「カイルですよ。カイルは恐ろしい魅了人垂らしスキルを持っていて、エトゥールの姫どころか、敵国の大将軍まで口説き落とすんですよ」
「――」
「クトリ、酷いよ?」
カイルのやんわりとした抗議は二人に無視された。
「私も元祖人垂らしを知っているから、それが厄介なことは、すごく理解できるぞ」
「本当ですか?」
「ああ、関わらないのが一番だ。距離をとるしかない。例えるなら中央ぐらいの距離が必要だ」
「………………もう手遅れです」
「………………そうだな」
しみじみと二人は状況を認識しあった。
カイルがさらなる抗議をしようとした時、純白の猫が3人の間に出現した。
カイルに対して、尻尾をブンブンと振ってみせた。
「猫?」
「いや、ウールヴェだ」
アードゥルは二つに分かれている尻尾にすぐに気づいた。
「ダナティエのウールヴェですよ」
クトリがあっさりと正体を看破した。
「カストの副官の娘の?なんでクトリが知っているの?」
「え?だって、彼女はハーレイの村にしょっちゅう出入りしてますよ?」
初耳な事案だった。
「なんだって?」
「知らなかったんですか?メレ・エトゥール宛のガルース将軍の書簡をハーレイに預けていますよ?たまに逆のことも」
「――」
「――」
カイルとアードゥルは、あっけに取られた。
「イーレと意気投合しているし、メレ・エトゥールの返事を待つあいだ、長棍や弓矢の鍛練をしてたりしますね」
「クトリ、彼女は副官の娘で――」
「将来、将軍付きの間者でしょう?」
「……え?そこまで明け透けに言っちゃうの?」
「本人が言ってました」
カイルはあんぐりと口をあけた。
「僕達との交流も将来の情報収集ネットワーク構築の一環だそうです。将軍や父親が亡くなったあとは、情報屋として生計を立てるそうです」
完璧な将来計画だ、とカイルは思った。




