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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第22章 大災厄④
914/1015

(54)カウントダウン⑫

お待たせしました。本日分の更新になります。

お楽しみください。

相変わらず更新時間は不明です。(土下座)


ブックマーク、ダウンロード、評価ありがとうございました。

面白ければ、ぜひブックマーク、評価をお願いします。(拝礼)


「カイル、どの道、エトゥールにおちたら周辺は跡形(あとかた)もありません。それはわかっているでしょう?熱で()がれた欠片(かけら)なんて、今までの落下物に比べればかわいいものです」


 クトリが淡々と事実を指摘した。

 

「高速でおちてくる巨大隕石の方が、はるかに凶悪な巨大爆弾ですよ」

「わかってる」

「本当にわかってるんだか……」

「どちらかというと、我々の脱出時間を稼ぐための外郭全体を覆う防護壁(シールド)の方が重要だぞ?」


 アードゥルが言う。


「脱出の安全が確保できないのでは、本末転倒だ。少なくとも私はお前達と心中する気はないからな」

「僕だってカイルと心中するのはイヤですよ。何が悲しくて、こんなボランティアで死ななくちゃいけないんですか」

「……言い方……」


 カイルはクトリの手厳しい物言いに吐息をついた。


「脱出時間は何秒欲しいんですか?」

「30秒」

「また、無茶を言う。地面を25キロえぐる爆発の中でそれに耐えろと言うんですか?」

「30秒だけだ。この馬鹿を引きずって、移動装置(ポータル)に飛び込むならそれぐらい欲しい」


 二人は揃って、元凶の馬鹿を見つめ、同時に大げさなため息をついた。協力してもらっている手前、カイルは何も言えなかった。


「三重……いや五重に展開して耐えるしか……」

「一つの防御壁の耐久時間は6秒か……」

「いや、再外側は2秒ぐらいですよ」


 クトリは計算式と結果のグラフを見せた。


「なんで、こんな計算ができる?」

「元々、隕石の着弾計算の理論式はあるんです。隕石の大きさ、質量、入射角、突入速度でおおよそは算出できます」

「ほう。さすが専門だな」

「僕の専門は気象学であって、宇宙物理学ではありません」

「では、なぜこの馬鹿の協力を?」


 クトリはあらためて問われて、思わず考えこんだ。


「………………成り行き?」


 答えてクトリは、はっとした。

 いつだったか、カイルと仲がいいわけではないと言ったディム・トゥーラを追求した時と同じ台詞だった。「こんなに労力を割いているのは、何故か?」の質問にこの答えが出てきたのだ。


「……………………やばい。僕も究極(きゅうきょく)人たらしに、完全に垂らされている……」

「なんだ、それは?」

「カイルですよ。カイルは恐ろしい魅了人垂らしスキルを持っていて、エトゥールの姫どころか、敵国の大将軍まで口説き落とすんですよ」

「――」

「クトリ、酷いよ?」


 カイルのやんわりとした抗議は二人に無視された。


「私も元祖人垂らしを知っているから、それが厄介(やっかい)なことは、すごく理解できるぞ」

「本当ですか?」

「ああ、関わらないのが一番だ。距離をとるしかない。例えるなら中央(セントラル)ぐらいの距離が必要だ」

「………………もう手遅れです」

「………………そうだな」


 しみじみと二人は状況を認識しあった。

 カイルがさらなる抗議をしようとした時、純白の猫が3人の間に出現した。

 カイルに対して、尻尾(しっぽ)をブンブンと振ってみせた。


「猫?」

「いや、ウールヴェだ」


 アードゥルは二つに分かれている尻尾(しっぽ)にすぐに気づいた。


「ダナティエのウールヴェですよ」


 クトリがあっさりと正体を看破(かんぱ)した。


「カストの副官の娘の?なんでクトリが知っているの?」

「え?だって、彼女はハーレイの村にしょっちゅう出入りしてますよ?」


 初耳な事案だった。


「なんだって?」

「知らなかったんですか?メレ・エトゥール宛のガルース将軍の書簡をハーレイに預けていますよ?たまに逆のことも」

「――」

「――」


 カイルとアードゥルは、あっけに取られた。


「イーレと意気投合しているし、メレ・エトゥールの返事を待つあいだ、長棍や弓矢の鍛練(たんれん)をしてたりしますね」

「クトリ、彼女は副官(ディヴィ)の娘で――」

「将来、将軍付きの間者(スパイ)でしょう?」

「……え?そこまで明け透けに言っちゃうの?」

「本人が言ってました」


カイルはあんぐりと口をあけた。

 

「僕達との交流も将来の情報収集ネットワーク構築の一環だそうです。将軍や父親が亡くなったあとは、情報屋として生計を立てるそうです」


 完璧な将来計画だ、とカイルは思った。

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