(48)カウントダウン⑥
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カイルはそれが冗談か見極めようとしたが、途中で無駄な努力を放棄した。協力者になったアードゥルの本質をカイルはまだ読み取れなかった。
ただ一つはっきりしていることは、ロニオスがいなければ、アードゥル達の協力はなかっただろう。
逆説的に言えば、ロニオス自身はそれを自覚していて、アードゥル達を惑星救済に引き摺り込んだとも言える。
拒否を許さない状況に追い込むところが、「悪の秘密結社の総統」呼ばわりされているのかもしれない。
「お前はもう外にでるな。これ以上、犬猫を拾ってきて、時間をとられるのはかなわん。訓練の時間はそう残されていないんだぞ」
「………………はい」
カイルが強引に避難をさせた老夫婦に関しては、メレ・エトゥールとクレイ兵団長にまかせることとなった。
その代わり、カイルはアードゥルから外出を禁じられた。アドリーとエトゥールの移動装置を設置して、夜だけはファーレンシアの元に戻ることを許されたのは彼なりの恩情かもしれない。
「こうは言っているが、案外傷ついた小動物を拾ってくるのは彼なんだよ。地上人には冷たいんだけどね」
「エルネスト!」
余計なことを暴露したエルネストをアードゥルは怒鳴った。
二つに分裂した恒星間天体の先行する塊を旧観測ステーションをぶつけることで消滅させ、残りの塊を地上で精製した爆薬をのせた連絡用シャトルで軌道を変更し、大陸の中央に位置するエトゥールに落とす――作戦自体は単純だった。
シャトルに積み込む爆薬の運び手はカイルのウールヴェしかいなかった。
それにディム・トゥーラのウールヴェが加わった。
二匹のウールヴェは、背中に荷をくくりつけ空間を跳躍し、シャトルに待機しているエド・ロウの夫婦がそれを引き渡すことを繰り返した。この二匹以外のウールヴェは、運搬に関して、全くの役立たずの状態だった。
同じ大きさのウールヴェをもつセオディアとファーレンシアが目標である「衛星軌道上に存在するシャトル」というものを理解できなかったためだった。使役主の認知が、そのウールヴェの行動範囲に影響する――カイル達はそんな仮説をたてた。
だがそれ以上に大きな問題が存在した。
「非常に難しいですね」
ディム・トゥーラは音をあげかけた。
旧ステーションの爆破は、先行する恒星間天体の軌道上に置くだけでよかったが、シャトルに関しては、調達した爆薬とシャトルの入射角で地上の落下地点がぶれた。
『王都周辺なら御の字なんだが』
複数の解析結果を比べながら、ウールヴェは首をかしげた。
『ここまで厳密に計算する必要はないのでは?』
「これだけぶれると、カイル達に影響があります」
『ああ、なるほど』
「あの馬鹿が、防御壁を展開するなんて言いださなければ、もっと話が簡単にすんだのに」
『許した君も責がある。おかげで私まで駆り出される』
「俺は許したわけじゃありません」
むっとしたように、ディム・トゥーラは言った。
『止められなかったら、許したことになるじゃないか。君は案外、カイルを甘やかしているな』
「じゃあ、あなたが止めてください」
『私は無駄な努力はしない主義だ』
「止められないってことじゃないですか」
『そうともいう』
「なんか助言をください」
ディム・トゥーラはウールヴェに求めた。
『地上組はどうすると?』
「想定ルートにあらかじめ固定位置情報を設定してそれを目標に防御壁を展開すると言ってます」
『また、面倒くさいことを……』
「他人事のように言わないでください。貴方の仕事でもあるんですよ。想定ルートがずれると、固定位置情報が全く無意味になります」
『条件の優先順位を決めたまえ』
「着弾地点をですね」
『次は?』
「質量」




