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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第22章 大災厄④
906/1015

(46)カウントダウン④

お待たせしました。本日分の更新になります。

お楽しみください。


第11回ネット小説大賞二次選考通過ならず!(悔)

通過していたら焼肉食べようと思ってましたが、吉野家になったことをご報告いたします。(真顔)

引き続き頑張りますので、応援をお願いします。(`_´)ゞ


凹まず更新した自分、えらいっ!(自画自賛)

「昔の冷害の飢饉(ききん)でここら一帯でも多数の餓死者(がししゃ)がでました。何度も食糧にすべきかと迷う飢餓(きが)を経験しました。この先、きっとこの(たね)は役に立つと思います。導師(メレ・アイフェス)ならこれを増やす知恵をお持ちでしょう」

「…………ありがとうございます。これはいただいて帰ります」


 カイルは老人に向かって頭を下げた。立ち会っていたクレイが重い革袋を引き取った。

 カイルはこのまま立ち去ることをためらった。

 本人の残留の意思を尊重するつもりだったが、これだけ貴重なものをくれた功労者(こうろうしゃ)にむくいたいという気持ちが()きあがっていた。


「やはり避難しませんか……?」


 老人はカイルの言葉に首をふった。


「わしらはこのままで、いいのです。この土地で生まれ、この土地で死んでいける幸せというものがあるのです」


 愛着のある土地で死んでいける幸せ――それは不老長寿であるカイルには、理解できない事柄だった。


「予言の通り、星が落ちて荒地になるのなら、再びこの種子から穀物(こくもつ)がたわわに実る時代がくることを切に願います。どうか、この地に再び金の穂を実らせてください」

「――」

「貴方様の未来が光り輝くものでありますように」


 老人は別れの言葉として聖歌の一句をカイルに贈った。

 老人の家からでたカイルは、村から立ち去ろうとしたが、思い直したように再び老人の家に向かった。


「クレイ、手を貸して」


 部下の馬に、種籾(たねもみ)の重い革袋を(くく)り付けていた第一兵団の団長は、その行動を予想していたかのように、笑って承諾(しょうだく)した。






「お前は馬鹿か」


 アードゥルの言葉は容赦(ようしゃ)なかった。


「お前は散歩すると、子犬や子猫を拾ってくるのか?あ?」

「……」

「しかも死が間近な老犬を拾ってくるとは、どういうことだ。()扶持(ぶち)を増やしてどうする」

「……あの人達は老犬じゃない」


 カイルは小声で言い訳をした。

 アードゥルは笑いに肩を震わせている第一兵団長の方を振り返った。


「兵団長も同行していたなら、なぜ、この馬鹿をとめない?」

「我々の目的は、避難しない人々の再説得でありまして、カイル様の行動はメレ・エトゥールの方針に沿ったものです。今更、避難民が一人や二人増えても変わりません」

「こいつはこの調子で、大量に犬や猫を拾ってくるぞ」

「避難民を犬や猫扱いしないでよ」

「お前の無節操(むせっそう)な行動が元凶だ」

「はい……申し訳ありません……」


 カイルは説教を受けて、しょんぼりと頭を下げた。


「しかも体内チップを分け与えて治療しただと?この間際(まぎわ)に……」

「だって、あの人はそれぐらいのことをしてくれたよ?一から遺伝子解析(いでんしかいせき)して冷害に強い品種を生み出すより、その特性を持った品種からさらに強い品種を生み出す方が、数年短縮できるでしょ?」

「……………………」

「不要と言うなら、あの老人に返してくるよ」

「誰が不要と言った」


 アードゥルは不機嫌に応じて、その隣のエルネストもクレイ同様、その反応に笑いを堪えて肩を振るわせていた。

 アードゥルは隣に立つエルネストを(にら)んだ。


「エルネスト、お前も何か言え」

「カイル・リード。君のお人好(ひとよ)し度は底抜けだ。たいしたものだ」

「誰が()めろと言った?」

「何か言えというから、言ってみたのに、注文が多いな。品種改良された種も私が引き取ってもいい。アードゥルがいらないなら、私が遺伝子分析をしてデータを独占をするのも楽しそうだ」

「誰が不要と言った」

「素直じゃないなぁ」


 エルネストはアードゥルに向かって、手をひらひらとふった。


「これを入手したのは、カイル・リードの手柄(てがら)だから、その点は認めてやればいいじゃないか」

「……………………」


 アードゥルは嫌そうに顔をしかめた。

 それから深々と溜息(ためいき)をついた。


「カイル・リード。自分が軽率(けいそつ)な行動をとったと自覚しているか?」

軽率(けいそつ)?」

「自覚がないとは、びっくりだ」


 エルネストがあとを引き取った。


「エトゥールの民に対して、平等性がないことをアードゥルは心配している」

「平等性?」

「似たように、加齢(かれい)(やまい)に悩んでいる者を全員(なお)すのか、ということだ」

「――」


 カイルは黙り込んだ。

 それは以前、シルビアにも指摘されたことがあった。自分達の技術は諸刃(もろは)(つるぎ)になると――。

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