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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第22章 大災厄④
899/1015

(39)祝宴⑬

お待たせしました。本日分の更新です。

お楽しみください。


感想ありがとうございました!

面白ければ、ぜひ布教やブックマークをお願いします。(拝礼)

作者は、昨日の矢沢永吉のライブで、はっちゃけすぎて、HP=1です。誰かエリクサーをください。(末期)

 言われたカイルの方は、唐突な助言にきょとんとした。


「え?あ?うん、わかった……」


『君の支援追跡者(バックアップ)は優秀だが、時に非常に面倒(めんどう)くさい人間になるのだ。君が彼に怪我(けが)を負わせたことを気に病み、接触(コンタクト)に間が空いた時など、とくに(ひど)くて――』




 ディム・トゥーラはロニオスに向けて、内密の思念を放った。

『酒の注文書を永久削除しますよ』

 それは、「黙れ」の変換呪文だった。




(ひど)くて?」


 狼のウールヴェは、なぜか途中でぴたりと口を閉ざした。


(ひど)くて?どうなったの?」


 カイルの追求にロニオスは視線を彷徨(さまよ)わせた。


『…………なんだったかな?おっと、夜があけているじゃないか。長居をしすぎた』

「気になるから、続きを言ってよ」


 カイルは、がしっとウールヴェの長い尾を(つか)んで逃亡を妨害した。


『たいしたことではない』

「気になって夜も眠れないよっ!」

『カイル、そんなことよりロニオスに空中展開の飛距離の伸ばし方のアドバイスをもらったらどうだ』


 ディム・トゥーラは露骨(ろこつ)に話題を変えた。カイルはディム・トゥーラの隠蔽(いんぺい)工作に(にら)んだが、確かに重要なことがどちらか、明白だった。

 話題の転換に飛びついたのはロニオスだった。


『空中展開の飛距離とは?』

「今、アードゥルの指導の元、防護壁(シールド)の金属球を空中に飛ばして展開する訓練をしているんだけど、僕がやるとせいぜい上空100メートル程度で――」

『連絡シャトルの全長(ぜんちょう)にも満たないではないか』

「……そうだよ」

『そんなところに防護壁(シールド)を展開する意味はないだろう』

「だから飛距離の伸ばすコツを聞きたいんだよっ!」

『コツ?コツは――』


 ウールヴェは尊大(そんだい)に言い放った。


()せば()る』

「………………」

『………………』

「ディム、この人、酔っぱらってない?」

『その可能性はあるな』


 失礼な若人(わこうど)の反応に、ウールヴェは鼻をふんと鳴らした。


『アドバイスが欲しいのだろう?私は何回か講義したはずだが?』

「どんな?」

『こうだ、と思い込む概念(がいねん)が邪魔をしている、と。どうして、アードゥルと君に差が生じていると思う?』

「……わかんない」

『アードゥルは飛ばすことぐらい造作(ぞうさ)もないと考えて、君は飛ばすことを(むずか)しいと思っている』

「………………」

『思い込んでいる概念(がいねん)が全ての結果を左右する。できると思う者はでき、できないと思う者はできない。この世の中の法則は実に単純なんだよ』


 カイルはあんぐりと口をあけた。


「え?そんなことで、結果が左右されるの?」

『されるとも。世の中の大半の人間はそれに気づいていない。もちろん中央(セントラル)の人間もだ。君は今、アードゥルの強大な能力を目の当たりにして、自己評価が低くなっている。目標が高すぎて、その目標ができないことを悩んでいる。訓練を始めた初心者が、果てしない目標を前に挫折(ざせつ)している状態だ』

「アードゥルぐらいの能力がないと意味がないじゃないか」

『意味がないと思うところが、すでに自己否定になっている』


 カイルは混乱した。


「……今、哲学的な観念で話している?」

『いや、極めて現実的な問題解決手法について講義している』


 ウールヴェは静かに言った。


『君は念動力に関して、初心者だ。その初心者が100メートル飛ばせることを評価することから始めるべきだ』

「え?え?」

『100メートルができるなら101メートルなんてお茶の子さいさいだな?』

「まあ、それぐらいなら……」

『では102メートルは』

「そんなにかわらないかな」

『アードゥルの場合、100メートルも1万メートルも変わらない』

「いや、変わるでしょ?!」

『なぜ?』

「なぜって――」

『はるか遠距離のディム・トゥーラとコンタクトがとれる君が、なぜその距離を遠いとか考えるのかね?』

「――」

『これが概念による典型的な制限だ。だから言ってるじゃないか、できると思う者はでき、できないと思う者はできない。できる者は自分自身の行動に制限を設けない。例えるなら天才と凡人の差はない。あるとしたら、己の限界を制限するか、しないかだ』

「………………やっぱり哲学論に思える」


 カイルは途方にくれた表情をした。

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