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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第22章 大災厄④
897/1015

(37)祝宴⑪

お待たせしました。本日分の更新になります。

お楽しみください。


ダウンロードありがとうございました。

虎がやっと日本一になりました。(応援疲労中)

優勝記念で最新話挿絵付きです。(意味不明)


意外にAIイラストの作成は難しい。この風景画に美少女を意味不明に載せてくるんだぜ?

 語り合っているうちにあっと言う間に時間がすぎさり、気がつけば、夜が白み始めていた。

 カイルは立ち上がって、ウールヴェに微笑(ほほえ)んだ。


「見せたかった光景の一つはこれだよ」


 カイルが外郭(がいかく)の城壁の方を指さした。

 王都の外に広がる田園風景(でんえんふうけい)が朝日の赤い光に染まっていた。



 ウールヴェと同調して、その光景を見たディム・トゥーラは驚いた。

 目の前に広がる光景に思ってもいなかった美しさがあったのだ。美しさで感動する感覚が自分にもあったことにも、ディムトゥーラは困惑した。

 絵でかけないとカイルが言った意味がわかった。

 朝日がのぼるにつれて、光の加減が変化し、どんどんと印象が変わっていくのだ。

 絵は一瞬の時間の切り取りに過ぎない。

 だが、このは切り取ることのできない美の世界だった。


『……綺麗だ……』

「でしょう?でも、まだ本命があるよ」

『本命?』


 カイルは振り返って、別の方向を指をさした。

 その方向にエトゥール城が見えた。


「本命はこっち」


 朝焼けの中に(たたず)むエトゥール城は、荘厳(そうごん)神聖(しんせい)不可侵(ふかしん)の物に見えた。


「この光景が消滅する前に、ディムに見せることができてよかった」


 カイルは満足そうに頷いた。


「シルビアが施療院(せりょういん)を開くときに貴族の(やかた)を使ったんだけどね、そこに1枚の絵画(かいが)があって、美しいものだったんだ。どこから見た光景なんだろうと、探しまくって、探し当てた場所がここなんだ。ずっとディムに見せたいと思っていた」

『……美しい……こんな美しい光景があるのか……』

「ほんの短時間の光景だけどね」

『……俺はこの美しい光景を消すのか……』

「ディムが消すわけじゃない。でもその気持ちはわかる。僕も同じ感情を抱いたよ」


 カイルはエトゥール城を見つめながら静かに告げた。


「僕はとても複雑だよ。恒星間天体があるためにこの世界は(ほろ)びる可能性がある。だが、恒星間天体がなければ、ロニオス達はここにこなかった。エトゥールという文明は存在しなかったかもしれない。全てがからみあっていて、今がある」


 その言葉をきいて、ディム・トゥーラもさらに複雑な気持ちに(おちい)った。

 ロニオスがこの惑星にきていなければ、カイル・リードは生まれていないのだ。


『……そうだな……』

「また、この光景を作るのに500年かかるかもしれないけど、ね。がんばるから、復興(ふっこう)に協力してよ」


 ウールヴェは相方の顔を見つめた。


『たまに、お前の図々しさに驚く。500年もつきあう気はないぞ』

「え……?」


 カイルは(あせ)った。


「手伝ってくれないの?」

『500年も復興(ふっこう)につきあってられるか』

「で、でも」

『俺がいるんだから、復興(ふっこう)は100年で終わる。いや、もっと短くできるな』


 すごく、遠回しな承諾(しょうだく)に、カイルは理解するのに数秒を要した。


「もう少しわかりやすく言ってよっ!僕はいつもディムの返答に、浮き沈みして心臓負担がひどすぎるっ!」

『俺も、お前の行動で、心臓負担が(ひど)いから等価交換だな』

「うっ……」

『ロニオス用に酒の用意する必要があるからな、そこは考えておけよ』

「……やっぱり彼は酒でしか、釣れないわけ?」

『酒しか思いあたらない』

美味(うま)い酒を造る自信がないよ……」

『大丈夫だ。本人の論文がある』

「はい?」

『あの人の未発表の論文の大半は酒造りだった。まだ未読が山ほどある』

「……読んでるの?」

『読んでいる』

「……どこにあったの?エトゥールの地下拠点にもなかった」

所長(たぬきおやじ)が所持していた』

「……探し回った僕の時間を返して……」

『俺が隠したわけじゃない』

「僕も読みたい」

『大災厄が終わったらな』


 カイルは、はあっと溜息をついた。初代達のくせの強さは相変わらずだった。

 太陽が水平線からのぼりきり、幻想的な光景は終わりを告げた。


「城に戻ろうか」

『そうだな』


 カイルはウールヴェと連れ立ってエトゥール城に向かって歩き出した。

 

『次に降下(こうか)するのは大災厄時(本番)だな』

「わかった」

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