(37)祝宴⑪
お待たせしました。本日分の更新になります。
お楽しみください。
ダウンロードありがとうございました。
虎がやっと日本一になりました。(応援疲労中)
優勝記念で最新話挿絵付きです。(意味不明)
意外にAIイラストの作成は難しい。この風景画に美少女を意味不明に載せてくるんだぜ?
語り合っているうちにあっと言う間に時間がすぎさり、気がつけば、夜が白み始めていた。
カイルは立ち上がって、ウールヴェに微笑んだ。
「見せたかった光景の一つはこれだよ」
カイルが外郭の城壁の方を指さした。
王都の外に広がる田園風景が朝日の赤い光に染まっていた。
ウールヴェと同調して、その光景を見たディム・トゥーラは驚いた。
目の前に広がる光景に思ってもいなかった美しさがあったのだ。美しさで感動する感覚が自分にもあったことにも、ディムトゥーラは困惑した。
絵でかけないとカイルが言った意味がわかった。
朝日がのぼるにつれて、光の加減が変化し、どんどんと印象が変わっていくのだ。
絵は一瞬の時間の切り取りに過ぎない。
だが、このは切り取ることのできない美の世界だった。
『……綺麗だ……』
「でしょう?でも、まだ本命があるよ」
『本命?』
カイルは振り返って、別の方向を指をさした。
その方向にエトゥール城が見えた。
「本命はこっち」
朝焼けの中に佇むエトゥール城は、荘厳で神聖不可侵の物に見えた。
「この光景が消滅する前に、ディムに見せることができてよかった」
カイルは満足そうに頷いた。
「シルビアが施療院を開くときに貴族の館を使ったんだけどね、そこに1枚の絵画があって、美しいものだったんだ。どこから見た光景なんだろうと、探しまくって、探し当てた場所がここなんだ。ずっとディムに見せたいと思っていた」
『……美しい……こんな美しい光景があるのか……』
「ほんの短時間の光景だけどね」
『……俺はこの美しい光景を消すのか……』
「ディムが消すわけじゃない。でもその気持ちはわかる。僕も同じ感情を抱いたよ」
カイルはエトゥール城を見つめながら静かに告げた。
「僕はとても複雑だよ。恒星間天体があるためにこの世界は滅びる可能性がある。だが、恒星間天体がなければ、ロニオス達はここにこなかった。エトゥールという文明は存在しなかったかもしれない。全てがからみあっていて、今がある」
その言葉をきいて、ディム・トゥーラもさらに複雑な気持ちに陥った。
ロニオスがこの惑星にきていなければ、カイル・リードは生まれていないのだ。
『……そうだな……』
「また、この光景を作るのに500年かかるかもしれないけど、ね。がんばるから、復興に協力してよ」
ウールヴェは相方の顔を見つめた。
『たまに、お前の図々しさに驚く。500年もつきあう気はないぞ』
「え……?」
カイルは焦った。
「手伝ってくれないの?」
『500年も復興につきあってられるか』
「で、でも」
『俺がいるんだから、復興は100年で終わる。いや、もっと短くできるな』
すごく、遠回しな承諾に、カイルは理解するのに数秒を要した。
「もう少しわかりやすく言ってよっ!僕はいつもディムの返答に、浮き沈みして心臓負担がひどすぎるっ!」
『俺も、お前の行動で、心臓負担が酷いから等価交換だな』
「うっ……」
『ロニオス用に酒の用意する必要があるからな、そこは考えておけよ』
「……やっぱり彼は酒でしか、釣れないわけ?」
『酒しか思いあたらない』
「美味い酒を造る自信がないよ……」
『大丈夫だ。本人の論文がある』
「はい?」
『あの人の未発表の論文の大半は酒造りだった。まだ未読が山ほどある』
「……読んでるの?」
『読んでいる』
「……どこにあったの?エトゥールの地下拠点にもなかった」
『所長が所持していた』
「……探し回った僕の時間を返して……」
『俺が隠したわけじゃない』
「僕も読みたい」
『大災厄が終わったらな』
カイルは、はあっと溜息をついた。初代達のくせの強さは相変わらずだった。
太陽が水平線からのぼりきり、幻想的な光景は終わりを告げた。
「城に戻ろうか」
『そうだな』
カイルはウールヴェと連れ立ってエトゥール城に向かって歩き出した。
『次に降下するのは大災厄時だな』
「わかった」




