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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第6章 精霊の審判者
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(7)占者①

 占者(せんじゃ)ナーヤの家は村の奥、長の家の隣にある。彼女の占いはよく当たる。長についで村で尊敬され、権力を持つ人物だ。精霊の加護をもち、優れた先見の能力をもつ彼女の力は村の(かなめ)でもあった。

 別に前触れを出したわけでもないが、ナーヤは若長を迎える準備を終えていた。囲炉裏(いろり)で茶をわかしている。


「坊、よく来たなあ」

「……坊はやめてくれ。俺も三十路をすぎた」

「若長ハーレイと呼ばれるのとどちらがいいか?」

「……坊でいい」


 70歳以上と思われるナーヤ婆に勝てる者など村にはいない。彼女は恐ろしい記憶力をもっており、村人達の子供の頃の悪事を全部覚えている。大人になってから、それをつらつらと暴露されるのはいたたまれないというものだ。 

 ナーヤ婆は、ひゃっひゃっと笑う。

 ハーレイはナーヤの前に腰を下ろした。


「そろそろくると思っていたよ。見てもらいたいのは異国の嫁か?」

「違うっ!」


 否定して、慌てて言い繕う。


「いや、確かに、見てもらいたいのは異国の子供だ。だが、嫁でも隠し子でもない」


 ナーヤはハーレイに、いれたクコ茶をすすめた。


「しかし、ナーヤ婆のところまで噂が届いているとは、あいつらめ……」

「お前に隠し子がいるとしたら、あたしゃ、引退するね」

「うん?」

「何度、村の女共にお前のことを相談されたと思ってんだい」


 ハーレイは飲んでいたお茶をふいた。


「俺のことを()たのか⁈」

占料(せんりょう)を倍にしても依頼はきた。ずいぶん儲けさせてもらったから、今回は無料(ただ)でよい」

「……ウールヴェの肉を持ってきたが……」

「もらおう。3回くらい見てやるよ」


 ハーレイは笑って、持ってきた肉のはいった包みをナーヤ婆に差し出した。ウールヴェ肉の報酬を断れる者は、なかなかいない。ナーヤも例外ではないのだ。


「で、見てもらいたいのは異国の子供だったな?」

「そうだ。正体はなんだ?」

導く者(メレ・アイフェス)

「俺がエトゥールで知り合った者と一緒か?」

「同じ」

「なぜこの地にきた?」

「世界の番人の意思」


 イーレの言っていた言葉と同じ返答にハーレイは唖然としたが、質問をとめるわけにはいかない。


「なんのため?」

「風を起こすため」

「風?」

「浄化の風、変化の風、隠されたものを暴く風」

「もっと具体的に」

「まだ、見えぬよ」

「なぜ、彼女は子供の姿をしている?」

導く者(メレ・アイフェス)(わざ)だな。彼女の意思でもある」

「彼女の真の年齢は?」

「……」


 ナーヤ婆の占いをしていた手がとまる。


「お前の首元に鎌があるから、聞かぬ方がよい」

「……」


 ハーレイは思わず首をさすった。それはハーレイが見た光景と一致していた。


女子(おなご)の年齢は、えてしてそんなもんじゃ。聞いちゃいかん」

「彼女をどうしたらいい?エトゥールにつれていけばいいのか?」

「村におけばいい。かの地より迎えがくる」

「ウールヴェで連絡をとるべきか?」

「いや、もう向こうから連絡がくる。ありえぬ事態に向こうも焦っておるの。どうやら、導く者(メレ・アイフェス)(かなめ)が、今かけておるようじゃ」


 ナーヤの占いの手が止まる。


「だが、気をつけろ。彼女の道は二つに分かれている。お前は深くそれにかかわるだろう」

「なんだって?」


 ハーレイは突然の警告に唖然とした。


「どういう意味だ? どう二つに分かれているんだ?」

「それは彼女の運命。お前のものではない」


 ナーヤ婆は意外な言葉を告げた。


「続きを()たければ、彼女をここに連れてきな。いうべき言葉もあるし、彼女もききたいことがあるだろう。ナーヤ婆が呼んでいるといえば、村にはいる口実になろう」


 それからハーレイがどんなに問いかけても、ナーヤは沈黙を守り答えなかった。


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