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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第22章 大災厄④
880/1015

(20)情⑳

お待たせしました。本日分の更新になります。

お楽しみください。


現在、更新時間は迷走しています。(宣言!)

 恒星間天体の衝突で文明が滅ぶ予定の惑星を、ロニオス達は箱庭(はこにわ)とした。

 そしてエトゥールの地下に拠点を築いた――いや、逆だ。地下拠点の上に王都の基礎となる都市を築いたのだ。


 確かになぜだろう。わざわざ国を作る必要がない。

 民衆を統率することは500年後を考えると、まったくの無意味だった。


 ロニオスが地上人を伴侶としたことと関係しているのだろうか?

 青い髪の精霊の巫女を初代エトゥール王が見初めた、とか、舞踏会の三曲目を踊るとその相手と結ばれるとか伴侶については民間伝承が多い。


 ロニオスと初代達はエトゥールを築き、ロニオスは伴侶を失うとすべてを捨てて立ち去った。

 残された初代メンバー達は右往左往(うおうさおう)としたことだろう。例えるなら、エド・ロウやディム・トゥーラが個人的な理由で職場放棄をして行方不明になるのだ。


 ありえない――その一言につきる。


 カイルは考え込んだ。何か重要な要素を見落としているような気がした。


『確かに、クトリの指摘はもっともだ』


「でしょ?」


 クトリはディム・トゥーラの賛同に満足そうな顔をした。


当時者(所長達)に聞いてみるしかないんじゃない?」


 カイルの言葉に、虎はしばし天井を見上げてから床に視線を落とした。


『……(けむ)にまかれる俺の姿しか未来予想できないのはなぜだ?』


「た、確かに」

「所長は究極の(たぬき)親父(おやじ)だからなぁ……」


『大災厄後にでも追及してみる。クトリは本当に残留でいいのか?』


「はい」


『ところで俺ばかり対価を要求されているが、カイルはいいのか?』


「余計なことを言わないでっ!」


 矛先(ほこさき)がディム・トゥーラに向いていて安堵(あんど)していたカイルは、余計な指摘に焦った。些細な問題も有耶無耶(うやむや)にできないのが、支援追跡者(バックアップ)の特徴でもあった。


「カイル?もちろん、カイルにも対価を要求しますよ」


 クトリはにやりと笑った。






「そんなわけで、ナーヤお婆様。賭は僕の負けなので賭けの報酬として、カイル・リードを好きに使ってください」


 お前は帰らない――その占者(せんじゃ)先見(さきみ)を真っ向から否定して、賭けに負けたはずのクトリは、晴れやかな表情でナーヤ婆に敗北宣言をした。

 ナーヤは日参している天候を司る賢者の態度に片眉をあげた。少年姿の賢者に引きずられて現れたのは馴染みの金髪の賢者だった。


「……何をやらかした……?」


 問いかけ先は、クトリではなくカイルに対してだった。

 

「まあ……いろいろと……」


 ナーヤの(にら)むような視線にカイルは明後日の方向を見つめ頬をポリポリとかいた。

 ナーヤの家にはすでに若長とイーレが待機しており、クトリとカイル用にお茶が用意されているのはいつものことだった。


「カイル、貴方いったい何をやらかしたの?完全に下剋上(げこくじょう)じゃないの」

「あ~~その~~」

「リルが城壁から飛び降りるのを静止する役目を僕に押し付けたんです」

「はあ?!」


 イーレは蒼白(そうはく)になった。


「リルが自殺未遂(じさつみすい)を起こしたってこと?!」

「まあ、端的に言うとそうなりますね」

「そこまで思い詰めていたなんて……」

「おまけにカイル並みに思念力が覚醒(かくせい)していました。一時的なものかわかりませんが……」

「カイル並みって……」


 イーレは呆然とした。


「野生のウールヴェが暴走したようなものじゃないっ!!」

「イーレ、もう少し穏やかな比喩(ひゆ)を希望するよ」

「そんな要求、おこがましい。自覚がないにもほどがあるわっ!」


 カイルのささやかな要望をイーレは一刀両断した。


「……ひどい」


 カイルは傷ついたように胸を押さえた。


「それで、どうしたのよ?!」

「どうしたもなにも……リルは第一兵団を多数昏倒(こんとう)させました」

「――」


 イーレは救いを求めるように天井を見上げた。


「つまり観測ステーションのような事態になったのね」

「その通りです」

「リルは?」

「落ちるところを、ディムとカイルが受け止めました」

「自分の功績(こうせき)端折(はしょ)る必要はないよ。クトリがとめてくれたんだ」


 クトリはぎろりとカイルを(にら)んだ。


「そうですよね。僕がとめたんですよね。貴方達は下かどっかから僕が焦りまくりのを、見学してたんですよね~~」


 地の底から響くような怨嗟の声だった。


「これは相当、怒っているわね」

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