表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第22章 大災厄④
866/1015

(6)情⑥

お待たせしました。本日分の更新になります。

お楽しみください。


いつも最新話を読んでくださり、ありがとうございます!

「ディムが?」


『……なんだ、その反応は?』


「あ、いや、ディムは我が道を岩を砕いても突き進むタイプで、そういうのを(うらや)ましがるのは無縁かと……」


『お前、俺を血が(かよ)わないアンドロイドだと思ってないか?』


「血の(かよ)わないアンドロイドなら、カイルを見捨ててとっくの昔に中央(セントラル)に帰っていますよ」


『……それ、誰かにも言われたな』


「カイルに関しては、無自覚なんですね」


『……それも、誰かに言われた』


 クトリは少し笑った。


『今からカイル達と現場にいってくる』


「え?!」


 クトリは驚いた。


「どうやって?」


『カイルのウールヴェと俺で、現場に跳躍(ちょうやく)する。イーレがサイラスの死んだ場所を確認したがっている』


「まだ噴火(ふんか)が継続する可能性もありますよ!危険です!」


『だから、瞬時に退避が可能なウールヴェで行く予定だ。大丈夫だ。悪いが、クトリはエトゥール城に残ってシルビアのフォローを――』


 クトリはディム・トゥーラの言葉を(さえぎ)った。


「ぼ、僕も行きます!」


 クトリの言葉に、ディム・トゥーラは一瞬、理解ができずにいた。


『……は?』


「僕も行きます。僕なら噴火の予兆(よちょう)があるなら警告できるし、ある程度の予測もできます」


『危険だとお前が言ったんだぞ?お前は危険なことが大嫌いだろう』


「僕に資料を持って、この危険な惑星に降下を依頼したのは、貴方じゃないですか」


『…………それを言われたら、反論の余地はない……』


「……僕は噴火が起こる兆候(ちょうこう)を知っていたけど、西の地と王都が巻き込まれなければいい、と思っていたんです。こんなことになるとは思わなかった」


 クトリの顔が陰った。


「僕がもっと真面目(まじめ)に解析していれば、サイラスは死ななくてすんだかもしれない。リルも大怪我をしなくてすんだかもしれない」


『カイルと同じことを言うんだな。だが俺はカイルにも言った。お前の責じゃない』


 ウールヴェは静かに言った。


『これは絶対にクトリの責ではない。確かに初代の地盤(じばん)解析情報があれば、多少は予想ができて回避できただろう。しかし、優先すべきことは、他にもあった。これは、あくまでも自然災害で、俺達が干渉するべき類ではない』


「だって、それでは僕は観測ステーションの連中と同じになってしまう……」


 クトリは半泣きだった。


「リルを見殺しにしようとした連中と何が違うというんです」


 ディム・トゥーラは胸を突かれた。

 観測ステーションの冷淡な反応に対しては、まだ(いきどお)りが彼の心の底でくすぶっていた。


『……気持ちはわかる』


「何もしないで、ディム達に何かあるのは嫌だし、起こった事実は直視したいんですっ!」


心的外傷(トラウマ)になるレベルだぞ』


「……そ、そうだと思います」


 指摘に狼狽(うろた)えたように視線を彷徨(さまよ)わせるのは、いつもの気弱なクトリだった。


「怖いの嫌だし、痛いの嫌だし、危険なことはもっと嫌だし……」


『…………無理はしなくても』


「でも、逃げちゃいけないような気がする。ここで逃げたら、お婆様に胸を張って会えないような気がするし、お婆様や死んだサイラスに胸を張って会えることをしておきたい。ど、動機が不純なのは自覚しています」


 クトリはウールヴェを見つめた。


「連れて行ってください」


――――連れて行くといい


 唐突にディム・トゥーラは声をきいた。間違いなく、世界の番人の声だった。

 依り代(ウールヴェ)を介さず、直接対話してくるとは何事(なにごと)か。だが、この助言は無視するべきではなかった。


 クトリが変わろうとしている――ディム・トゥーラはそう感じていた。凄惨(せいさん)な現場を帰還予定のクトリが見ることで、観測ステーションの無慈悲(むじひ)な連中に一石を投じることができるかもしれない。

 ディムは同行を承諾(しょうだく)した。





 クトリの同行を喜んだのは、カイルだった。


「ありがとう。専門家の同行は心強いよ。本当にありがとう」


 カイルはクトリの手を両手で強く握って、心からの感謝を伝え、その行為にクトリの方が照れて顔を真っ赤にした。


 人たらしが本領(ほんりょう)発揮(はっき)している――目撃した全員がそう思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ