(4)情④
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『イーレとジェニ・ロウは親友同士で、お互いの考えていることぐらいわかるだろう』
『いや、でも……』
『俺だって、お前のことがわかる。だいたい、お前も姫の支援追跡なしにリルに同調して、泣いているんじゃないか?』
カイルは、かっと頬に血がのぼった。
『な――』
『お前がサイラスの死という現場を見せたくなくて、姫に支援追跡を頼まないだろうとは思っていた。一刻も原因を知りたくて無防備に同調しただろう?』
図星であった。
『今、行く。待ってろ』
念話が切れたかと思うと、すぐに聖堂に白い虎が現れた。
そのとたん、カイルに支援追跡が入り、心理的負荷が驚くほど軽減した。
とても有難いことだったが、全て把握されているようで、カイルは少し悔しい気分に陥った。
『カイル、南に行く前にまずはメレ・エトゥールに事情を説明してこい。彼の領土内の話だ。サイラスだけの話ではないだろう。街の住民の救助や現状調査を欲しているはずだ』
カイルは失念していた事実に、はっとした。
『イーレ、噴火なら降灰がひどい。メイン拠点からマスクとゴーグルをとってきてくれ。俺は拠点に入れない』
「わかったわ」
『カイルもメレ・エトゥールに救助隊を出すときの注意を伝えろ。火山灰は鋭いから、目を傷つけて、角膜剥離や炎症を引き起こす。地上文明ではまだその治療法はない。灰を吸えば呼吸器の疾患も引き起こす。メイン拠点のマスクとゴーグルを後で救助部隊に配布しろ』
「……いいの?」
『今更だろう。それから移動装置を一つ調達しろ。救助部隊が片道10日もかけるわけにはいかない。もともと設置する予定だっただろう?』
「うん」
ディム・トゥーラは次々と指示を飛ばした。サイラスの突発的な死という非常事態に彼は完璧な司令塔だった。
カイルとイーレは、どこかほっとしていた。今回の事件で、二人とも思考がうまく働いていないのは確かだった。
セオディア・メレ・エトゥールは、動けない自分の代わりに、ウールヴェを同行させるという手段を選択した。白豹姿のウールヴェは、首飾りにシルビアが設置したカメラを持っていたからだ。
被害状況を記録するのに、これ以上適したものはない。
「サイラス殿の件には、お悔やみ申し上げる」
メレ・エトゥールは、イーレに対してエトゥール式の哀悼の意を表した。イーレは西の民の作法で応じた。
メレ・エトゥールがカイル達の同行者として指名したのは、アッシュだった。
「彼が希望した」
セオディアはカイルにそう説明した。
「サイラス様から預かったウールヴェが突然眠りにつきましたから、何事かあったとは、察していましたが……」
同席していたアッシュは低い声で告げた。
カイルは思わず確認した。
「眠りについた?姿を消したのではなく?」
「はい。ですから、こんな事態とは思いませんでした」
カイルはセオディアを振り返った。
「主人が死んだら、ウールヴェは姿を消すのではないの?」
「その通りだ。だから最悪の事態の報告に驚いている」
セオディアは吐息をもらした。
「メレ・アイフェスは不老不死だと思い込んでいた」
「前にも言ったけど、不老長寿であって、不死ではないよ」
「ただ、不死に近い技術はありますよ」
イーレは懺悔するかのように語った。
「貴女が昔、西の地で亡くなったという件か」
「そうです。例えるなら双子の妹を生み出す技術とでも、言いましょうか。サイラスも同じ処置を依頼しましたが、大災厄までの復活は無理です。地上に戻ってくる時期の確約もできません」
『彼が死ぬ前に、移動装置を再起動できたのは、不幸中の幸いだった。エトゥールの地下拠点も発見できていたこともだ。南のサイラスの移動装置のそばに、エトゥールからの新たな移動装置を設置しようと思う。救助の兵団の移動に使ってくれ』
メレ・エトゥールは、虎のウールヴェに感謝の視線を投げた。
『ただ、俺は別の問題を危惧している』
「別の問題?」
『星の落下を正確に予想する導師が、なぜ、噴火を予測出来なかったのか、と南の被災者が我々を責める可能性があることだ』
ディム・トゥーラの言葉に息をのんだのは、メレ・エトゥールではなく、イーレとカイルだった。全くそんなことを考えていなかったからだ。




