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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第22章 大災厄④
864/1015

(4)情④

お待たせしました。本日分の更新になります。

お楽しみください。


ダウンロードありがとうございました!

累計100万PVが近づいてきて、ドキドキしています。

皆様のおかげで継続できています(拝礼)

『イーレとジェニ・ロウは親友同士で、お互いの考えていることぐらいわかるだろう』

『いや、でも……』

『俺だって、お前のことがわかる。だいたい、お前も姫の支援追跡(バックアップ)なしにリルに同調して、泣いているんじゃないか?』


 カイルは、かっと頬に血がのぼった。


『な――』

『お前がサイラスの死という現場を見せたくなくて、姫に支援追跡(バックアップ)を頼まないだろうとは思っていた。一刻も原因を知りたくて無防備に同調しただろう?』


 図星であった。


『今、行く。待ってろ』


 念話が切れたかと思うと、すぐに聖堂に白い虎が現れた。

 そのとたん、カイルに支援追跡(バックアップ)が入り、心理的負荷が驚くほど軽減した。

 とても有難いことだったが、全て把握されているようで、カイルは少し悔しい気分に陥った。


『カイル、南に行く前にまずはメレ・エトゥールに事情を説明してこい。彼の領土内の話だ。サイラスだけの話ではないだろう。街の住民の救助や現状調査を欲しているはずだ』


 カイルは失念していた事実に、はっとした。


『イーレ、噴火なら降灰がひどい。メイン拠点からマスクとゴーグルをとってきてくれ。俺は拠点に入れない』


「わかったわ」


『カイルもメレ・エトゥールに救助隊を出すときの注意を伝えろ。火山灰は鋭いから、目を傷つけて、角膜剥離や炎症を引き起こす。地上文明ではまだその治療法はない。灰を吸えば呼吸器の疾患も引き起こす。メイン拠点のマスクとゴーグルを後で救助部隊に配布しろ』


「……いいの?」


『今更だろう。それから移動装置(ポータル)を一つ調達しろ。救助部隊が片道10日もかけるわけにはいかない。もともと設置する予定だっただろう?』


「うん」


 ディム・トゥーラは次々と指示を飛ばした。サイラスの突発的な死という非常事態に彼は完璧な司令塔だった。

 カイルとイーレは、どこかほっとしていた。今回の事件で、二人とも思考がうまく働いていないのは確かだった。




 セオディア・メレ・エトゥールは、動けない自分の代わりに、ウールヴェを同行させるという手段を選択した。白豹姿のウールヴェは、首飾りにシルビアが設置したカメラを持っていたからだ。

 被害状況を記録するのに、これ以上適したものはない。


「サイラス殿の件には、お悔やみ申し上げる」


 メレ・エトゥールは、イーレに対してエトゥール式の哀悼(あいとう)の意を表した。イーレは西の民の作法で応じた。

 メレ・エトゥールがカイル達の同行者として指名したのは、アッシュだった。


「彼が希望した」


 セオディアはカイルにそう説明した。


「サイラス様から預かったウールヴェが突然眠りにつきましたから、何事かあったとは、察していましたが……」


 同席していたアッシュは低い声で告げた。

 カイルは思わず確認した。


「眠りについた?姿を消したのではなく?」

「はい。ですから、こんな事態とは思いませんでした」


 カイルはセオディアを振り返った。


「主人が死んだら、ウールヴェは姿を消すのではないの?」

「その通りだ。だから最悪の事態の報告に驚いている」


 セオディアは吐息をもらした。


「メレ・アイフェスは不老不死だと思い込んでいた」

「前にも言ったけど、不老長寿であって、不死ではないよ」

「ただ、不死に近い技術はありますよ」


 イーレは懺悔するかのように語った。


「貴女が昔、西の地で亡くなったという件か」

「そうです。例えるなら双子の妹を生み出す技術とでも、言いましょうか。サイラスも同じ処置を依頼しましたが、大災厄までの復活は無理です。地上に戻ってくる時期の確約もできません」


『彼が死ぬ前に、移動装置(ポータル)を再起動できたのは、不幸中の幸いだった。エトゥールの地下拠点も発見できていたこともだ。南のサイラスの移動装置(ポータル)のそばに、エトゥールからの新たな移動装置(ポータル)を設置しようと思う。救助の兵団の移動に使ってくれ』


 メレ・エトゥールは、虎のウールヴェに感謝の視線を投げた。


『ただ、俺は別の問題を危惧している』


「別の問題?」


『星の落下を正確に予想する導師(メレ・アイフェス)が、なぜ、噴火を予測出来なかったのか、と南の被災者が我々を責める可能性があることだ』


 ディム・トゥーラの言葉に息をのんだのは、メレ・エトゥールではなく、イーレとカイルだった。全くそんなことを考えていなかったからだ。


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