(25)地下探索㉕
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最近、一気ダウンロードの方が増えて、作者のテンションが爆あがり状態です。
現在のささやかな目標:盆休みまでにキャライメージイラストを挿絵としてUP(実行期待度1%←………逃げ道は常に残す)
女心に疎く、ミオラスを館に放置して孤独を味合わせ、その点を若いファーレンシアに叱りとばされた時のアードゥルから比べると、わずか短期間で驚くべき各段の成長と進歩と言えた。
「……進歩だな」
エルネストも同じ感想を抱いたようだった。
「……貴方に言う資格はないのでは?」
カイルはエルネストを半眼で見つめた。放置に関しては、エルネストも同罪のはずだった。
「絶対に、貴方も本に夢中になり食事時間も惜しむタイプだ」
エルネストが咳払いをして視線をそらしたことが証拠だった。だが、エルネストはカイルの言葉の微妙な言い回しに気づいた。
「……貴方『も』ということは、君も同じ穴のムジナということだな?」
エルネストの逆襲に、カイルは言葉に詰まった。
「どちらかと言うと、この子のムジナっぷり具合は絵よね。アードゥルに腹を刺されたあとも、病室を抜け出して天井画を模写しに行く馬鹿っぶりよ。おまけにヘタレだし」
イーレが容赦なく暴露した。今度はアードゥルが呆れた視線をカイルに投げた。
「私はそこまでひどくないぞ?同レベル扱いは、謹んで遠慮しよう」
「残念ながら私には判断できる記憶がないし」
「――」
忘れられている切なさに、元支援追跡者はため息をつき、カイルはエルネストが気の毒になった。
「えっと……アードゥル抜きで話をすすめていいのかな?」
「本人が席をはずしたのは、その意志表示だから、いいだろう。結果は私から伝える」
カイルは頷いた。
亡き妻の痕跡を無遠慮に辿りたいという欲望はアードゥルにはないようにも見えた。
あれほど、大きな傷跡であったエレン・アストライアーの死を500年という長い年月でようやく受け入れたのかもしれない。どこか、それは妻子を失った若長のハーレイの立ち直りとどこか似ていた。
「で、原体の支援追跡者として、この件はどう思うの?」
いきなりイーレが本題に切り込んだ。原体が絡んでいるから、その追求の権利は彼女にあった。
「我々が地上存続を拒否したため、エレン単独で行動して拠点を構築、隠蔽していた――納得のいく話だ」
「どうやって隠蔽したのかしら?」
エルネストは考え込んだ。
「多分、ジェニ・ロウが協力者として、噛んでいるな」
「…………そうね。少なくともジェニには相談していると思う」
「すると、話は単純だ」
「単純?」
「君は親友であるジェニ・ロウと、よくつるんでいた。私達が気づかなかったのは、第3者による目撃談がなかったからだ。つまり移動装置の設置は、多数、人が出入りする研究所エリアではない。ジェニ・ロウは、エド・アシュルに口説かれかけていたが、あの時は、まだ付き合う前だったはずだ」
「…………さりげなく暴露の爆弾を落としたわね?」
「どこらへんが?」
「『ジェニがエド・アシュルに口説かれかけていた』とか『付き合う前だったはず』とか」
「君に記憶がないから情報提供しただけだ」
「真の意図は?」
「将来、これをネタにエド・アシュルを揶揄する君の姿を見たい」
くるりと、イーレはカイル達聴衆者を振り返った。
「これがアドリーを納めていた元辺境伯の破綻した性格だから、歴史的証言は貴方達にまかせるわ」
「元々アドリー辺境伯は、凡人ではなく、狡猾かつ聡明だった。馬鹿やお人好しには、絶対に統治できない土地だぞ?特に我々西の民ともめていた時代では、防衛の要でもあった。多少の性格の難は、目をつぶらざるをえない」
「ハーレイ、それってエルネストの性格がどうしようもないけど、超有能って言ってない?」
「言ってる」
ハーレイは真顔で自分の発言を認めた。
「昔から、アドリー辺境伯が王族の血を引いていれば、メレ・エトゥールとして君臨できたのでは、と西の地では噂になっていた」
「…………そりゃそうよね……エトゥールの初代王の同僚だもの。思考は似ているわ」
「ひどいな。私はロニオスほど性格は破綻していないぞ?」
エルネストはやんわりと抗議をした。
「まあ、いいわ。エルネスト、私は貴方の推理の結論を聞きたいわ」
「おや、君にはまだわからない?」
「……私を揶揄しなくていいわよ?」
「焦らすのはやめておこうか」
イーレの危険な表情に、エルネストは肩をすくめた。
「殴られそうだ」
「よくわかったわね」
「君に殴られて、それに快感を覚えるような性癖に目覚めたら、困る」
「貴方ねぇ――!!!」
性格の悪さは、エルネストの方が一枚上手だった。
飛んできた平手打ちを、余裕でエルネストは片手で止めた。
「ジェニ・ロウの個室に決まっているじゃないか。独身だった彼女の個室は、我々男性陣が踏み入れることができなかった一種の聖域だよ」




