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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第21章 大災厄③
834/1015

(25)地下探索㉕

お待たせしました。本日分の更新になります。

お楽しみください。


一気ダウンロード、ありがとうございます。

面白かったら、ブックマーク、布教等をぜひお願いします。

最近、一気ダウンロードの方が増えて、作者のテンションが爆あがり状態です。

現在のささやかな目標:盆休みまでにキャライメージイラストを挿絵としてUP(実行期待度1%←………逃げ道は常に残す)

 女心(おんなごころ)(うと)く、ミオラスを(やかた)に放置して孤独を味合わせ、その点を若いファーレンシアに(しか)りとばされた時のアードゥルから比べると、わずか短期間で驚くべき各段の成長と進歩と言えた。


「……進歩だな」


 エルネストも同じ感想を抱いたようだった。


「……貴方に言う資格はないのでは?」


 カイルはエルネストを半眼で見つめた。放置に関しては、エルネストも同罪のはずだった。


「絶対に、貴方も本に夢中になり食事時間も惜しむタイプだ」


 エルネストが咳払いをして視線をそらしたことが証拠だった。だが、エルネストはカイルの言葉の微妙な言い回しに気づいた。


「……貴方『も』ということは、君も同じ穴のムジナということだな?」


 エルネストの逆襲に、カイルは言葉に詰まった。


「どちらかと言うと、この子のムジナっぷり具合は絵よね。アードゥルに腹を刺されたあとも、病室を抜け出して天井画を模写(もしゃ)しに行く馬鹿っぶりよ。おまけにヘタレだし」


 イーレが容赦(ようしゃ)なく暴露(ばくろ)した。今度はアードゥルが呆れた視線をカイルに投げた。


「私はそこまでひどくないぞ?同レベル扱いは、(つつし)んで遠慮しよう」

「残念ながら私には判断できる記憶がないし」

「――」


 忘れられている切なさに、元支援追跡者(バックアップ)はため息をつき、カイルはエルネストが気の毒になった。


「えっと……アードゥル抜きで話をすすめていいのかな?」

「本人が席をはずしたのは、その意志表示だから、いいだろう。結果は私から伝える」


 カイルは頷いた。

 亡き妻の痕跡を無遠慮に辿りたいという欲望はアードゥルにはないようにも見えた。

 あれほど、大きな傷跡であったエレン・アストライアーの死を500年という長い年月でようやく受け入れたのかもしれない。どこか、それは妻子を失った若長のハーレイの立ち直りとどこか似ていた。


「で、原体(オリジナル)の支援追跡者として、この件はどう思うの?」


 いきなりイーレが本題に切り込んだ。原体(オリジナル)が絡んでいるから、その追求の権利は彼女にあった。


「我々が地上存続を拒否したため、エレン単独で行動して拠点を構築、隠蔽(いんぺい)していた――納得のいく話だ」

「どうやって隠蔽(いんぺい)したのかしら?」


 エルネストは考え込んだ。


「多分、ジェニ・ロウが協力者として、噛んでいるな」

「…………そうね。少なくともジェニには相談していると思う」

「すると、話は単純だ」

「単純?」

「君は親友であるジェニ・ロウと、よくつるんでいた。私達が気づかなかったのは、第3者による目撃談がなかったからだ。つまり移動装置(ポータル)の設置は、多数、人が出入りする研究所エリアではない。ジェニ・ロウは、エド・アシュルに口説かれかけていたが、あの時は、まだ付き合う前だったはずだ」

「…………さりげなく暴露の爆弾を落としたわね?」

「どこらへんが?」

「『ジェニがエド・アシュルに口説かれかけていた』とか『付き合う前だったはず』とか」

「君に記憶がないから情報提供しただけだ」

「真の意図は?」

「将来、これをネタにエド・アシュルを揶揄(やゆ)する君の姿を見たい」


 くるりと、イーレはカイル達聴衆者を振り返った。


「これがアドリーを納めていた元辺境伯の破綻(はたん)した性格だから、歴史的証言は貴方達にまかせるわ」

「元々アドリー辺境伯は、凡人ではなく、狡猾(こうかつ)かつ聡明(そうめい)だった。馬鹿やお人好しには、絶対に統治できない土地だぞ?特に我々西の民ともめていた時代では、防衛の要でもあった。多少の性格の難は、目をつぶらざるをえない」

「ハーレイ、それってエルネストの性格がどうしようもないけど、超有能って言ってない?」

「言ってる」


 ハーレイは真顔で自分の発言を認めた。


「昔から、アドリー辺境伯が王族の血を引いていれば、メレ・エトゥールとして君臨できたのでは、と西の地では噂になっていた」

「…………そりゃそうよね……エトゥールの初代王の同僚だもの。思考は似ているわ」

「ひどいな。私はロニオスほど性格は破綻(はたん)していないぞ?」


 エルネストはやんわりと抗議をした。

 

「まあ、いいわ。エルネスト、私は貴方の推理の結論を聞きたいわ」

「おや、君にはまだわからない?」

「……私を揶揄(やゆ)しなくていいわよ?」

「焦らすのはやめておこうか」


 イーレの危険な表情に、エルネストは肩をすくめた。


「殴られそうだ」

「よくわかったわね」

「君に殴られて、それに快感を覚えるような性癖(せいへき)に目覚めたら、困る」

「貴方ねぇ――!!!」

 

 性格の悪さは、エルネストの方が一枚上手だった。

 飛んできた平手打ちを、余裕でエルネストは片手で止めた。


「ジェニ・ロウの個室(コンパートメント)に決まっているじゃないか。独身だった彼女の個室(コンパートメント)は、我々男性陣が踏み入れることができなかった一種の聖域だよ」

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