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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第21章 大災厄③
830/1015

(21)地下探索㉑

お待たせしました。本日分の更新になります。

お楽しみください。


ユニーク人数が11万を達成していました。

いつも読んでくださりありがとうございます!(拝礼)

 アードゥルは人手不足を管理維持の問題点としてあげていた。

 一般の避難民の出入りではなく、カイルが信頼するエトゥールの関係者を維持管理の補助要員として採用するなら、交渉(こうしょう)余地(よち)はありそうだった。

 

「……ミナリオ、アイリ、メレ・エトゥールとファーレンシア、ハーレイ……いや、いっそうのこと第一兵団あたりとかに文字を教えるか……?」

「カイル様?」


 カイルは顔をあげた。


「うん、確かに。ミナリオはもう出入りが許可されているし、案内板ぐらいは読めるようになってもいいかもしれない」

「あとはその『たんまつ』の操作方法も教えていただければ」

「イーレとアードゥルに交渉(こうしょう)してみるよ」

「お願いします」


 ミナリオは満足そうに頷いた。


「……なんだか(うれ)しそうだね……」

「カイル様が一人で危険なことをすることは阻止(そし)できそうですから」

「どうして僕が危険なことをすることが前提(ぜんてい)なんだ?」

「危険なことをしなかったことがありましたか?精霊鷹に同調して肋骨(ろっこつ)()るわ、野生のウールヴェに同調して毒をうけるわ、初代に腹をさされるわ、腹に傷がある状態で病室を抜けるわ、婚約の儀直前に初代に拉致られるわ、カストに乗り込むわ……」


 指折り列挙(れっきょ)され、それがとどまる様子がないので、カイルは慌てた。


「だいたい今回のことだって、危険なことをしている自覚があるから、ファーレンシア様に黙っていてもらいたいのでしょう?」

「……うっ……」

「カイル様の思考パターンはお見通しです」

「………………はい、その通りです」

「私もシルビア様のお世話にならず、胃の健康を守りたいのでよろしくお願いします」

「………………はい、反省しています。ごめんなさい」


 ああ、僕が勝てない人物が、どんどん増えていく――カイルは専属護衛との下剋上(げこくじょう)に遠い目をした。





 本当にファーレンシア様の言った通りだな、とミナリオは内心、感心していた。


「カイル様は、エトゥールの被害を最小に食い止めることを、いまだに模索(もさく)しています。ただ、それを追求するあまり自分の安全に無頓着(むとんちゃく)になります」


 エトゥールの姫は、呼び出した伴侶(はんりょ)の専属護衛に語った。


「ミナリオの負担を増やして申し訳ないのですが、カイル様から絶対に目を離さないでください」

「それが、専属護衛の責務(せきむ)ですから、喜んで。しかしエル・エトゥール、それは先見(さきみ)でしょうか。何か見られたのですか?」


 ファーレンシアは首を振った。


「最近、先見(さきみ)がまったくないのです。もしかしたら私の能力は失われたのかもしれません。これは、カイル様の性格によるただの行動予測にすぎません」

「その行動予測には同意しますが……」


 ミナリオは困ったように言った。


「問題は私に口止めを強要する可能性があることです」


 ファーレンシアは、ふっと笑った。


「専属護衛には、メレ・エトゥールに報告の義務があります。それを(おこた)れば、(にん)から外される――そう言えば、カイル様も強くは言えないはずです」

「確かに……」

「細かいことでもいいので、兄にカイル様の動向を報告してください」

「メレ・エトゥールはともかく、ファーレンシア様に対する口止めは回避できませんが?」

「むしろ、それを上手(うま)く使ってください。『ファーレンシア様に報告します』『ファーレンシア様が泣く』――これらは、カイル様の行動に(くぎ)をさせます」

「…………ファーレンシア様、それは惚気(のろけ)ですか?」

「私の本気の惚気(のろけ)を聞きたいというなら、貴方が非番の日にきてください。マリカも聴衆(ちょうしゅう)の犠牲者仲間が増えて喜ぶことでしょう」

「…………えっと、それはファーレンシア様の惚気(のろけ)をいつもマリカが聞かされて、気の毒なレベルだが、やめるつもりはない、という解釈であってますか?」

「あってます」

「……独身者(ひとりみ)には地獄の責苦(せめく)なので、遠慮しておきます」

「残念です」


 ファーレンシアは本当に残念そうな顔をした。どんな惚気話(のろけばなし)が飛び出すかミナリオは興味が()かれたが、エトゥールの姫が延々と伴侶について惚気(のろけ)る可能性は多大だった。

 危険だ――本能が回避の道を選択させた。


「ファーレンシア様への口止めは、本当によろしいんですか?」

「兄から聞きますので、大丈夫です」


 意外な攻略手法にミナリオは、あっけにとられた。


「……えっと、それは……」

「ちゃんと、ミナリオは『私に』報告はしていないでしょ?カイル様に嘘はついていないから大丈夫です」


 ファーレンシアはにっこり笑った。




 カイル様は、ファーレンシア様に完全攻略されている――ミナリオはそう思った。

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