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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第21章 大災厄③
829/1015

(20)地下探索⑳

お待たせしました。本日分の更新になります。

お楽しみください。


ブックマーク、評価、一気ダウンロードありがとうございました!

「……なんて書いてあるんですか?」

「『資材保管庫1』」

「……『1』とあるなら『2』も『3』もあるとか?」

「うん」


 カイルは表示通りの資材保管庫に辿(たど)り着くと手順にしたがって(ロック)を解除した。


「カイル様」

「うん?」

「先ほどの話ですが……」

「メレ・エトゥールに報告する?」


 カイルは少し困ったような表情を浮かべたが、ミナリオも付き合いが長くなったので誤魔化されなかった。

 ミナリオがカイルの懇願に弱いことを計算した表情の選択だった。


「もちろん、報告します」


 カイルはいつもの作戦が通じず、不満を示すように(ふく)れっ(つら)をした。


「意地悪だ」

「意地悪ではなく、駄目なものは駄目です。メレ・エトゥールへの報告は義務です。怒られる自覚があるのですね」

「……あるよ……」

「ファーレンシア様も泣きますよ?」

「ファーレンシアにも言うの?!」


 ミナリオは、カイルの慌てたような反応に考え込んだ。それからにっこり笑った。


「カイル様、取引をしましょうか?」

「どんな?」

「メレ・エトゥールには報告しますが、ファーレンシア様には黙っていてもいいですよ?」


 カイルは、ミナリオの提示した妥協案(だきょうあん)安堵(あんど)の表情を浮かべた。ファーレンシアに泣かれるくらいなら、セオディアの説教の方がマシだった。


「条件は何?」

「カイル様が、将来、先ほどの作戦をとるときは、私を連れて行くことです」

「え?!」

「その反応……よもや、私を連れていけないような危険な行為――そんなわけはありませんよね?」


 ミナリオのさわやかな笑顔に、巨大な釘が自分に刺さったことを、カイルは感じた。シルビアの笑顔とどこか通じるものがあった。

 ミナリオは間違いなく怒っている。


「それは……その……」

「私は別に、ファーレンシア様に報告してもいいのですが」

「待って待って待って」

「大災厄時に私を同行させるのと、ファーレンシア様に全てを報告されるのとどちらがいいですか?」

「だから待ってよっ!」


 カイルは叫んだ。


「ファーレンシアには知られたくないけど、ミナリオを危険な目にあわせたくないよっ!」


 はっとして、カイルは口を押えた。


「ほほう、やっぱり危険な行為だったわけですね」


 ミナリオが目を細めた。


「初代との会話の内容の半分も理解できませんでしたが、カイル様が自分の安全を軽視していることは、察しました」

「そ、それはだね……」


 カイルは言い訳の言葉を探した。


「申し開きは、メレ・エトゥールにしてください」

「ううっ……」

「どうされましたか?」

「……メレ・エトゥールに、1日中説教を受ける未来しか浮かばない」

「素晴らしい先見(さきみ)です。占者(せんじゃ)になれます。で、私との取引はどうしますか?」

「ううっ……」

「簡単なことですよ?私を同行させて、私とカイル様の安全が保障されればいいんですよ。自分の安全は軽視しても、専属護衛をそれに道連れにしたくないでしょう?カイル様は、そういう性格していますものねぇ」

「ううっ……」

「あ、もう一つ究極の脅迫ネタを考え付きました」


 それは不吉な言葉だった。


「…………どんな?」

「ディム様に全てばらします」

「絶対にやめて。メレ・エトゥールの説教の恐怖の比じゃない」


 カイルは青ざめ、本気で(おび)えた。想像するだけで恐ろしい。

 ディム・トゥーラに隠し通すことは無理だとは思っていたが、他人から問題が耳に入るのと、懺悔的に事前報告をするのでは、激怒の度合いが違うことは、カイルにも十分理解できた。


「じゃあ、取引成立ですね」


 ミナリオは満足そうに、カイルから満額回答を引き出した。


「……主人を脅迫(きょうはく)するなんて、ひどい専属護衛だ……」

「優秀な専属護衛と言ってください。主人を諫めるのも専属護衛の任の一つです」


 カイルは諦めの吐息をついた。


「そういえば、カイル様にもう一つお願いごとが……」

「お願いごとなの?脅迫(きょうはく)なの?」


 ()ねたようにカイルは言った。


「お願いごとの類です」

「何?」

「私にカイル様の世界の言語を教えてください」

「へ?」


 意外な申し出にカイルは驚いた。


「別に言語を覚えなくても、僕と会話できているでしょ?」

「どちらかといえば文字ですかね」

「文字?」

「さっきのような案内表示を読めるようになりたいです。これから先、必要になる可能性もありますから」


 カイルはミナリオの意見をもっともだと感じた。

 

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