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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第21章 大災厄③
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(12)地下探索⑫

お待たせしました。本日分の更新になります。

お楽しみください。

外野(がいや)は少し黙っていてください」


 ディム・トゥーラは、ロニオスがやり込められることを期待している夫婦を(にら)んで黙らせた。


「ロニオス、俺のウールヴェに尻尾(しっぽ)を噛み切られたくなかったら答えてください」


『……それって、脅迫(きょうはく)と言わないかね?』


「どうとってくださっても結構です。俺が不必要になるほど、カイルは安定しているとお考えですか?」


『いや』


「だったら、俺が義務から解放されるとなんで言うんです?」


『そもそもここは中央(セントラル)管轄下(かんかつか)じゃない。本来、接触禁止文明であるところを私が抜け穴を探して今に(いた)る』


「まあ、貴方が元凶ですよね」


『滅亡する文明がイレギュラーに生き残ったらどういう扱いになるか、これはまったく未知数だ。前例がないんだから』


「………………」


『惑星降下組は既得権益(きとくけんえき)が認められると踏んでいる。だが地上人の精神進化に関してはわからない。扱いについては、長い議論を生み出し、永久封鎖惑星になる可能性もある』


 それは当初のディム・トゥーラも恐れていたことだった。カイル達を残して、永久封鎖判定がつく――観測ステーションからの強制退去で、衛星軌道上からの支援追跡(バックアップ)もかなわなくなるのだ。

 ディム・トゥーラはちらりと、隣にいる自分のウールヴェを見つめた。

 ウールヴェなど恰好の実験動物になってしまう。


「……それは大災厄の後の話でしょう?」


『君が私に盤上遊戯(ゲーム)で負ける素養はそこだよ?なぜ全ての展開を想定しない?』


 うっとディム・トゥーラは軽い叱責(しっせき)に詰まった。


『極端な優先順位をつけることはやめることだ。あらゆる場合を想定する――それが司令官に求められる才覚だ』


「俺は司令官じゃありませんし」


『やさぐれなくていい。常に先を読むことが必要だ。さあ、これは盤上遊戯(ゲーム)だ。勝利条件は何だと思う?』


 ディムは考えこんだ。


「地上降下メンバーの安全確保と、恒星間天体の軌道変更」


『まあ、合格だ。氷河期の要因回避が第一優先になる』


「…………地上降下メンバーの安全確保が二の次ですか?」


 ディム・トゥーラはウールヴェを(にら)みつけた。


『何を今更……惑星探査で死者が出るのは珍しくないだろう。そのためのクローン登録だ』


「あら、でも、イーレが死んで12番目のクローン誕生になったら、私が貴方をくびり殺すわよ?」


 穏やかな微笑で語られた元副官の言葉に、白い狼は尻尾を逆立(さかだ)てた。


「ジェニ」

「貴方は黙っていて。私は過去のロニオスの所業を完全に許したわけじゃないんだから」


 ディム・トゥーラは降下メンバーの死亡リスクについて、検討した。あまり考えたくないことだった。


「……一番死亡リスクが高いのは、守る術を持たないシルビアとクトリでしょう」

「だが、シルビア・ラリムはカイル同様、残留を決めている」

「……クトリを早期に回収しますか。本人も希望していることですし」

「エトゥール直下の拠点を再起動しても、こちらと連携をとらないなら、戻る手段は、君がサイラスを降下させた移動装置(ポータル)だけになる」

「逆に今、降下する馬鹿研究員が出ませんか?」

「ロニオスの指示で、移動装置(ポータル)は全封印処置をしているわ」

「……いつのまに……」


 ディム・トゥーラは驚いた。


『だから、君は私に盤上遊戯(ゲーム)で勝てないと言っているんだ』


 ディムは両手を軽くあげて降参した。


「じゃあ、大災厄後の俺の進路は後日に語りあうとして、今のリスクの高い可能性と対策を論じましょう」


『我々の方は、妨害者の存在が最大のリスクになる』


「地上は?」


『避難の遅延や不満者の暴動に巻き込まれることだ』


「その対策は?」


『地上で、移動装置(ポータル)のネットワークを再構築することだ』


 ロニオスはあっさりと解決策を提示した。


「なぜ、それを提言してくれなかったんですか?」


移動装置(ポータル)がなかったじゃないか。カイルがエトゥールの地下にたどり着いたのは今だ。誰が案内人になると?エレン――イーレは記憶がない』


「それを目的で、アードゥル達を説得したのですか?」


『残念ながら違う』


「もし、今もアードゥル達と対立していたら?」


『地下拠点の再起動の計画路線がなくなるだけだった』


 ディム・トゥーラは混乱した。

 ロニオスは確かにいろんな未来状況を想定していた。



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