(12)地下探索⑫
お待たせしました。本日分の更新になります。
お楽しみください。
「外野は少し黙っていてください」
ディム・トゥーラは、ロニオスがやり込められることを期待している夫婦を睨んで黙らせた。
「ロニオス、俺のウールヴェに尻尾を噛み切られたくなかったら答えてください」
『……それって、脅迫と言わないかね?』
「どうとってくださっても結構です。俺が不必要になるほど、カイルは安定しているとお考えですか?」
『いや』
「だったら、俺が義務から解放されるとなんで言うんです?」
『そもそもここは中央の管轄下じゃない。本来、接触禁止文明であるところを私が抜け穴を探して今に至る』
「まあ、貴方が元凶ですよね」
『滅亡する文明がイレギュラーに生き残ったらどういう扱いになるか、これはまったく未知数だ。前例がないんだから』
「………………」
『惑星降下組は既得権益が認められると踏んでいる。だが地上人の精神進化に関してはわからない。扱いについては、長い議論を生み出し、永久封鎖惑星になる可能性もある』
それは当初のディム・トゥーラも恐れていたことだった。カイル達を残して、永久封鎖判定がつく――観測ステーションからの強制退去で、衛星軌道上からの支援追跡もかなわなくなるのだ。
ディム・トゥーラはちらりと、隣にいる自分のウールヴェを見つめた。
ウールヴェなど恰好の実験動物になってしまう。
「……それは大災厄の後の話でしょう?」
『君が私に盤上遊戯で負ける素養はそこだよ?なぜ全ての展開を想定しない?』
うっとディム・トゥーラは軽い叱責に詰まった。
『極端な優先順位をつけることはやめることだ。あらゆる場合を想定する――それが司令官に求められる才覚だ』
「俺は司令官じゃありませんし」
『やさぐれなくていい。常に先を読むことが必要だ。さあ、これは盤上遊戯だ。勝利条件は何だと思う?』
ディムは考えこんだ。
「地上降下メンバーの安全確保と、恒星間天体の軌道変更」
『まあ、合格だ。氷河期の要因回避が第一優先になる』
「…………地上降下メンバーの安全確保が二の次ですか?」
ディム・トゥーラはウールヴェを睨みつけた。
『何を今更……惑星探査で死者が出るのは珍しくないだろう。そのためのクローン登録だ』
「あら、でも、イーレが死んで12番目のクローン誕生になったら、私が貴方をくびり殺すわよ?」
穏やかな微笑で語られた元副官の言葉に、白い狼は尻尾を逆立てた。
「ジェニ」
「貴方は黙っていて。私は過去のロニオスの所業を完全に許したわけじゃないんだから」
ディム・トゥーラは降下メンバーの死亡リスクについて、検討した。あまり考えたくないことだった。
「……一番死亡リスクが高いのは、守る術を持たないシルビアとクトリでしょう」
「だが、シルビア・ラリムはカイル同様、残留を決めている」
「……クトリを早期に回収しますか。本人も希望していることですし」
「エトゥール直下の拠点を再起動しても、こちらと連携をとらないなら、戻る手段は、君がサイラスを降下させた移動装置だけになる」
「逆に今、降下する馬鹿研究員が出ませんか?」
「ロニオスの指示で、移動装置は全封印処置をしているわ」
「……いつのまに……」
ディム・トゥーラは驚いた。
『だから、君は私に盤上遊戯で勝てないと言っているんだ』
ディムは両手を軽くあげて降参した。
「じゃあ、大災厄後の俺の進路は後日に語りあうとして、今のリスクの高い可能性と対策を論じましょう」
『我々の方は、妨害者の存在が最大のリスクになる』
「地上は?」
『避難の遅延や不満者の暴動に巻き込まれることだ』
「その対策は?」
『地上で、移動装置のネットワークを再構築することだ』
ロニオスはあっさりと解決策を提示した。
「なぜ、それを提言してくれなかったんですか?」
『移動装置がなかったじゃないか。カイルがエトゥールの地下にたどり着いたのは今だ。誰が案内人になると?エレン――イーレは記憶がない』
「それを目的で、アードゥル達を説得したのですか?」
『残念ながら違う』
「もし、今もアードゥル達と対立していたら?」
『地下拠点の再起動の計画路線がなくなるだけだった』
ディム・トゥーラは混乱した。
ロニオスは確かにいろんな未来状況を想定していた。




