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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第21章 大災厄③
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(5)地下探索⑤

お待たせしました。本日分の更新になります。

お楽しみください。


ブックマークありがとうございました!

 アードゥルの予告通り、カイル達はまもなく岩壁にあたった。まるで、ここで下る階段の構築を諦めたような(てい)だった。

 カイルは終点の岩壁に手でふれた。見た目は岩壁に似ているが触感(しょっかん)は微妙に違った。


擬岩(ぎがん)?」

「よくわかったな」

「つまり、探検に来た地上人対策用の偽装工作(ぎそうこうさく)なの?これ、どうしたらいいの?」


 アードゥルは何事(なにごと)か考え込んでいた。

 が、唐突にカイルの右手首をつかむと強引(ごういん)に右側の壁にその手のひらを押し付けた。

 

「ちょ、ちょっと?」


 アードゥルの奇行(きこう)にカイルは焦ったが、耳は小さな電子音の反応を聞き逃さなかった。

 行き止まりの岩壁(いわかべ)は、唐突に左右に分かれた。中に見えるのは人工的な通路だった。


「……やっぱり開いたか」

「え?なんで、開くの?アドリーの拠点(きょてん)で登録したから?」


 アードゥルはカイルの言葉を無視するかのように、扉の境界をまたいだ。それから慣れた手つきで、内部の壁際に設置された端末を起動し操作を始めた。

 アードゥルはイーレの方を振り返った。 


「念のために確認だ。ここに手のひらを当ててくれ」

「わかったわ」


 イーレが端末に手をかざすと、先ほどと同じように小さな電子音が鳴った。

 その結果に、アードゥルの方が、長い吐息をついた。


「遺伝子認証が成立した。本当にエレンの人形(クローン)か……」

「ちゃんと自己申告しているでしょ?何をいまさら」


 イーレは(くちびる)を尖らせた。アードゥルはイーレをしげしげと見つめ、それから再びため息をついた。


「認めがたい事実に、客観的証拠が欲しかっただけだ」

「文句は中央(セントラル)に言ってちょうだい」

「そうだな。エド・アシュルあたりを地上に引きずり下ろしたい気分だ」

「あら、いいわね、ソレ。協力は惜しまないわよ」

 

 妙なところで意気投合(いきとうごう)している二人だった。





『ディム、入口にたどりついた。開いたよ』

『了解だ』


 ディム・トゥーラの返答は、そっけなく短かった。


『このまま、中にはいるけど、いいかな』

『かまわないが、再起動の前に絶対に連絡をよこせ。こちらにもいろいろ都合(つごう)がある』

都合(つごう)?』

『こちらの問題だ』

『どんな問題?』

『気にしなくていい。そっちに集中しろ』

『めちゃくちゃ気になるんですけど?!』


 ディムとの念話は唐突に終了した。

 カイルはムッとした。支援追跡者(バックアップ)らしからぬ放置(ほうち)ぶりだった。


「どうした?」

「観測ステーションの都合があるから、再起動前に連絡をよこせ、って」

「……ロニオスが何か(たくら)んでいるのか……?」

不穏(ふおん)なこと言わないで?!」


 アードゥルのつぶやきにカイルは焦った。

 アードゥルは端末をカイルに向かって放った。


「そっちの地上人も登録しろ」

「ああ、うん」


 カイルは端末の指示通りに、ハーレイとミナリオの生体登録(せいたいとうろく)をした。小さな針で、血液を一滴だけ採取し、端末の表示画面におとしていく。


「これはどういう仕組みなんだ?」


 落とした血が端末の透明部に吸い込まれていくのを見て、ハーレイが不思議そうに言った。


「血液でハーレイの情報を登録したんだ。ここに入れる許可をしたし、ハーレイが迷子になっても発見できるよ」

「…………精霊の世界はすごいな」

「僕達は精霊じゃない」

「似たようなものではないか」

信仰(しんこう)されても困る」


 ハーレイは笑いをもらした。


「その気になれば、西の地を支配できるのに、相変わらず無欲(むよく)だな」

「西の地は西の民のものだ」


 カイルはアードゥルの方を振り返った。

 

「これ、登録しないとどうなるの?」

「さあ、侵入防止システムが作動して、レーザーに焼かれるか切り(きざ)まれるか試してみたらどうだ?」

「……冗談だよね?」

「冗談だ」


 カイルは脱力した。アードゥルの性格がつかみどころがない。


「まだまだ歩くぞ」

「え?」

「再起動するまで、拠点内の移動装置(ポータル)は使えない。水平移動も垂直移動もな」


 カイルは慌てて端末を見た。拠点の基本地図を呼び出してみた。エトゥールの王都の広さを持つ拠点は、複雑な階層構造をなしていた。


「………………すごく不吉な予感がするんだけど?」

「管理室はてっぺんで、機関室は最下層。いくつかのエリアに分かれている。マニュアルを読まないとなんとも言えないが、移動装置(ポータル)が稼働するまで、何往復すればいいのか私も検討がつかない」

「――」


 メンバーの中で一番体力がないカイルはその言葉に(ひる)み、思わず体内チップの残量を確認した。 

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