(3)地下探索③
お待たせしました。本日分の更新になります。
お楽しみください。
風邪が完治するまで、ややスローペース更新かも。
皆様、コロナ陰性、インフル陰性で熱が下がったあとに発作のような咳が酷くなったら、再度病院に行きましょう。マイコプラズマ肺炎とかの可能性がありますぞ。(抗生物質と咳止め処方されて、やっと楽になりました)
お見舞い感想ありがとうございました!
「……ずいぶんと綺麗な階段ですね」
ミナリオが困惑したように言った。
規則正しい高さの階段とたまに現れる長い坂道の材質を不思議そうに確認する。
「隠し通路は、埃と蜘蛛の巣で酷かったから掃除に苦労しましたが、ここは塵ひとつない隧道です」
エトゥールの『埃と蜘蛛の巣で酷かった隠し通路』に心当たりがありすぎるカイルは真っ赤になった。そういえばマリカは「通路を知る専属護衛達」と掃除をしたと言ってた。ミナリオまで清掃に駆り出されていたとは初耳だった。
だが、何も知らないイーレは突っ込んだ。
「隠し通路って?」
「エトゥール城の中に、王族専用の通路があります」
「ああ、メレ・エトゥールあたりが、お忍び用に使っていそうね」
鋭い。
カイルはイーレの洞察力に舌を巻いた。カイルは本人から聞くまで、セオディアがお忍びの常習犯だとは思わなかった。
「自動で空調管理されている」
意外なことにアードゥルがミナリオの疑問に答えた。
「くうちょう……管理ですか?」
「埃やカビや苔が付着しない材質で、湿度、温度ともに管理されている領域だ。ネズミや虫、蛇やこの惑星特有の危険生物の巣になったら困るだろう?」
「……なるほど」
「だいたい管理されてなければ、これぐらいの深さでは、酸欠で地上人は倒れている」
アードゥルはさらりと物騒なことを言った。
「ねえ、どうしてアドリーのように移動装置がないの?」
カイルは複数の浮遊灯に照らされた階段を下りながら、事情を知っていそうなアードゥルに質問を投げた。
「いや、ある。拠点が起動すれば、使えるようになるはずだ」
「そうじゃなければ、毎回この階段を登り下りする羽目になるよね?」
「まあ、そうだな」
利便性に慣れすぎたカイルはぞっとした。かなりの距離を下ってきたが地下拠点の気配はまだなかった。
「どれだけ、深いの?」
「山一つ分ぐらいじゃないか?」
「はあ?!」
地上の山々は500m級から8000m級まで様々だ。どの山を指すのかカイルは不安に陥った。
「大陸の山の高さは様々でしょ。いったいどのくらい……」
「正確な距離は知らん」
「なんで知らないの?」
「私の研究分野には必要のない情報だったからだ」
まさかのアードゥルまで典型的な研究馬鹿の回答をするとは思わず、カイルは半眼になった。アードゥルはその責めるような視線に気づかないふりをした。
「広さは?」
「王都ぐらいはあるな」
「は?」
「観測ステーションがまるっとはいる規模だと思っていい。元はここは深い森だった。人目のないところに自動構築ユニットを降下させて偽装の地上建物と地下の研究施設を作った」
「よくある手法よ」
無口だったイーレが初めて口を開いた。
「観測ステーションから探査機械を展開して、地上の情報を網羅してから、一番地層が安定している場所にメイン拠点を構築するの。文明のない未開の惑星だと、メイン拠点を地上に構築することもあるわ。でも周期的な嵐とか巨大生物の襲撃とかの対応を考えると地下が一番、楽で安全ね。多分、文明がある地上から目立たないように、地下を選択したのだと思う」
「この惑星のそこらへんの記憶もないのか?」
アードゥルが初めてイーレに話しかけた。
「ないわ」
「そうか」
元夫婦の会話はあっけなく終了してしまい、見守るカイルの方が、冷や汗を流した。
いやいや、東国の対立から考えれば、各段の進歩じゃないのか?
「進歩とか言うな」
「僕の思念を拾わないでよ。ほんと、遮蔽をしているのになんで読み取れるのさ?元祖、規格外すぎるよ」
「お前の思念と表情が読みやすいだけだ。絶対にカードゲームが弱いだろう?」
「うっ…………」
「そういえば、ディム・トゥーラに対して古典遊戯で連敗記録を伸ばしていたわね」
イーレが余計な情報を提供した。
「お前は馬鹿だな」
アードゥルから、カイルに対してさらなる酷評が飛んだ。




