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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第21章 大災厄③
811/1015

(2)地下探索②

今週、風邪でダウンしており、投稿時間が乱れて申し訳ありません。

お待たせしました。本日分の更新になります。

お楽しみください。


おかげさまでブックマーク500を超えました。

ありがとうございました!

 当然、セオディア・メレ・エトゥールに事前相談をしていたが、エトゥール王は最終的な探索(たんさく)メンバーを聞いて顔をしかめた。


「ディム殿は参加しないのか」

「残念ながら」

「大丈夫なのか?」

「……どういう意味で?」

「昔、ハーレイ殿とイーレ嬢が出会って、対立すれば『にだいかいじゅーだいけっせん』が始まると言ってたではないか」

「よく覚えているね」

「それに初代の四つ目使いのアードゥルが加わるのだろう?どう考えても、エトゥールの地下で野生のウールヴェが三頭野放しになる光景が目に浮かぶのだが」


 カイルはさっと、視線をそらした。メレ・エトゥールは賢者の態度に短い溜息をついた。


「地下が崩落(ほうらく)したら、王都は大災厄の前に壊滅(かいめつ)だな」

「不吉なことを言わないでよっ!そんなことにはならない………………と思う」

「なんとも頼りない返事だ。歌姫とエルネストは参加しないのか?」

「残念ながら、どこまで潜ればいいかわからないから、体力的観点から見送ったよ。エルネストは歌姫の護衛として残った」

「アードゥルではなく?」

「歌姫の支援追跡者(バックアップ)はエルネストだから」

「能力的には四つ目使いの方が強大では?」

「強大な能力者は、支援追跡(バックアップ)がつく対象であって、真の支援追跡者(バックアップ)にはなれないんだ。共鳴して能力が暴走したら問題でしょ?」

「メレ・アイフェスの世界の基準はよくわからんな」


 セオディアの言葉に、カイルは苦笑した。


「優秀な能力者は、エルネストやディム・トゥーラのような自己制御(じこせいぎょ)が完璧な人物なんだよ。僕やアードゥルはむしろ問題児だ」

「自己制御が完璧という点は、わかるような気がするな。二人とも統治者になれる人物だ」


 セオディアの評価に、カイルの方が興味を引かれた。


「どういうところが?」

「冷静沈着、周囲をよく見ている、判断力と統率力がある。上に立つことになれている――それから」

「それから?」

「最終的に非情な判断も下して実行できる(はがね)の意思がある」

「………………」


 カイルはじっとメレ・エトゥールを見つめた。


「それは貴方そのものじゃないかな?」

「私などまだまだ無力だ。王都の民の半分も疎開させれていない」


 セオディアは苦笑して、椅子の背もたれに身体を預けた。

 目の前の執務机に山積みになっている報告書は最近のエトゥール国内の被害のものだった。


「……メレ・エトゥール」、

「……初代が反対しているのは理解しているが、エトゥール城の地下を避難所にできることが理想だ。おそらく王都に残留する民が多数でる」

「わかっているよ。あなたを慕う兵団や専属護衛とかもね」


 カイルは頷いてみせた。


「メインである拠点だから、役に立つ物が多数あると思う」

「発見したら、私も同行することを条件に地下を探索をする許可をしよう」


 メレ・エトゥールはカイルの計画書にサインをして返した。


「同行?」

「我々が伝承通りに初代達の子孫なら、それぐらいの権利はあってもいいのではないか?」


 もっともな意見だ、とカイルは思った。

 


 



 食糧や野営の道具を背嚢(はいのう)で運ぶことを担当したのは、ハーレイとミナリオだった。賢者の面々は体内チップがあるため、飲まず食わずでも問題はない。だが地上人である二人はそうはいかなかった。

 遺恨のあるアードゥルとイーレは互いを見ようとしなかった。当然会話もない。だが、カイルが想像していた緊張は存在しなかった。

 拠点を発見できないのなら、ウールヴェのトゥーラをカイルが呼び、そのまま空間を跳躍して城に戻るつもりだった。


 王族だけが知っている地下道への入り口を開けるのは、もちろんメレ・エトゥールだった。

 彼は古びた扉の鍵を開けた。そこに現れたのは、エトゥール城内の地図の最下層の空白へと続く細く長い階段だった。

 

「気を付けて行くがいい」


 カイルは(うなず)くと、手にしていた浮遊灯(ふゆうとう)を展開させ階段を下り始めた。

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[一言] お体悪い中、ありがとうございます。 毎日のたのしみがつづきうれしいです。 どうぞお体大切になさってください。 無理は禁物ですので。
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