(2)地下探索②
今週、風邪でダウンしており、投稿時間が乱れて申し訳ありません。
お待たせしました。本日分の更新になります。
お楽しみください。
おかげさまでブックマーク500を超えました。
ありがとうございました!
当然、セオディア・メレ・エトゥールに事前相談をしていたが、エトゥール王は最終的な探索メンバーを聞いて顔をしかめた。
「ディム殿は参加しないのか」
「残念ながら」
「大丈夫なのか?」
「……どういう意味で?」
「昔、ハーレイ殿とイーレ嬢が出会って、対立すれば『にだいかいじゅーだいけっせん』が始まると言ってたではないか」
「よく覚えているね」
「それに初代の四つ目使いのアードゥルが加わるのだろう?どう考えても、エトゥールの地下で野生のウールヴェが三頭野放しになる光景が目に浮かぶのだが」
カイルはさっと、視線をそらした。メレ・エトゥールは賢者の態度に短い溜息をついた。
「地下が崩落したら、王都は大災厄の前に壊滅だな」
「不吉なことを言わないでよっ!そんなことにはならない………………と思う」
「なんとも頼りない返事だ。歌姫とエルネストは参加しないのか?」
「残念ながら、どこまで潜ればいいかわからないから、体力的観点から見送ったよ。エルネストは歌姫の護衛として残った」
「アードゥルではなく?」
「歌姫の支援追跡者はエルネストだから」
「能力的には四つ目使いの方が強大では?」
「強大な能力者は、支援追跡がつく対象であって、真の支援追跡者にはなれないんだ。共鳴して能力が暴走したら問題でしょ?」
「メレ・アイフェスの世界の基準はよくわからんな」
セオディアの言葉に、カイルは苦笑した。
「優秀な能力者は、エルネストやディム・トゥーラのような自己制御が完璧な人物なんだよ。僕やアードゥルはむしろ問題児だ」
「自己制御が完璧という点は、わかるような気がするな。二人とも統治者になれる人物だ」
セオディアの評価に、カイルの方が興味を引かれた。
「どういうところが?」
「冷静沈着、周囲をよく見ている、判断力と統率力がある。上に立つことになれている――それから」
「それから?」
「最終的に非情な判断も下して実行できる鋼の意思がある」
「………………」
カイルはじっとメレ・エトゥールを見つめた。
「それは貴方そのものじゃないかな?」
「私などまだまだ無力だ。王都の民の半分も疎開させれていない」
セオディアは苦笑して、椅子の背もたれに身体を預けた。
目の前の執務机に山積みになっている報告書は最近のエトゥール国内の被害のものだった。
「……メレ・エトゥール」、
「……初代が反対しているのは理解しているが、エトゥール城の地下を避難所にできることが理想だ。おそらく王都に残留する民が多数でる」
「わかっているよ。あなたを慕う兵団や専属護衛とかもね」
カイルは頷いてみせた。
「メインである拠点だから、役に立つ物が多数あると思う」
「発見したら、私も同行することを条件に地下を探索をする許可をしよう」
メレ・エトゥールはカイルの計画書にサインをして返した。
「同行?」
「我々が伝承通りに初代達の子孫なら、それぐらいの権利はあってもいいのではないか?」
もっともな意見だ、とカイルは思った。
食糧や野営の道具を背嚢で運ぶことを担当したのは、ハーレイとミナリオだった。賢者の面々は体内チップがあるため、飲まず食わずでも問題はない。だが地上人である二人はそうはいかなかった。
遺恨のあるアードゥルとイーレは互いを見ようとしなかった。当然会話もない。だが、カイルが想像していた緊張は存在しなかった。
拠点を発見できないのなら、ウールヴェのトゥーラをカイルが呼び、そのまま空間を跳躍して城に戻るつもりだった。
王族だけが知っている地下道への入り口を開けるのは、もちろんメレ・エトゥールだった。
彼は古びた扉の鍵を開けた。そこに現れたのは、エトゥール城内の地図の最下層の空白へと続く細く長い階段だった。
「気を付けて行くがいい」
カイルは頷くと、手にしていた浮遊灯を展開させ階段を下り始めた。




