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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第20章 大災厄(2)
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(44)変革⑲

お待たせしました。本日分の更新です。

お楽しみください。


ブックマークありがとうございました!

 カイル達は同調を終えると、アドリーからハーレイの村に移動した。

 ハーレイの家の壁に貼り付けてある地図の地下水脈情報を更新した。以前とは違う青色のインクを使ってカイルは加筆していった。


 カイルは唖然とした。以前と地下水脈は経路が移動していた。

 作業を見守っていたハーレイはカイルを見た。


「井戸が枯れるはずだな。水の道は変わるものなのか?」

「よく、わからない……今まで井戸が枯れたことは?」

「もちろんある。だが、今回は急に何か所で枯れたから、不安の声があがった。おまけに新しい井戸を掘っても水が出なかったから、なおさらだ」

「そりゃ、出ないよね。これだけ水脈がずれていれば」


 カイルも自分の目撃した新しい情報の道筋を指でなぞった。


「どうして、こんなにもずれたのだろう」


 白い虎も、カイルの作成した地図を一緒に見つめていた。ディム・トゥーラは、ロニオスの言葉が頭にひっかかり、離れなかった。ロニオスは何をしくじったと言ったのだろう。

 専門外分野のことはわからない。研究都市は専門が細分化されていて、それを補完するために多数の研究者がいる。地下水脈の異常は、何を示しているのだろうか?

 ディム・トゥーラもカイルも惑星科学の知識が(とぼ)しすぎた。


『ちょっと待っていてくれ』

『ディム?』

『専門家を拉致(らち)ってくる』

『専門家?』


 白い虎は姿を消した。





「僕が外出嫌いなのは、わかっているじゃないですか。もう怖い目にあうのは嫌です」


 クトリは西の地まで拉致(らち)ったディム・トゥーラの分身に文句たらたらだった。彼は、東国(イストレ)の経験が心的外傷(トラウマ)になっているようだった。


『まあまあ、おもしろい資料があるんだ。クトリの分野かと思ったんだ』


 ディム・トゥーラもすごい詐欺師(さぎし)だな、とカイルは二人の会話を聞いていて思った。いや、セオディア・メレ・エトゥール並みの釣り師と表現するのが正しいかもしれない。

 「おもしろい資料がある」とは、研究者にとって究極(きゅうきょく)の誘惑呪文だろう。そういえば所長のエド・ロウも似たような挑発の仕方で、研究者のやる気を200%ほど引き出していたことをカイルは思い出した。もしかして、研究都市の責任者になる素質は、口の旨さではないだろうか?


「僕の分野は気象学ですよ?」


『水資源や水環境は気象に関連があるだろう?水文学(すいもんがく)は惑星科学の中で、気象と関わりがあるから、俺達より知識があるはずだ』


「まあ、多少は……」


『この地図情報を見てどう思う?』


 壁の地図を虎は(あご)()した。


「ん?」


 クトリは目をすがめて、地図情報を読み取ろうとした。

 カイルが解説にまわった。


「西の地での地下水脈の地図だよ。赤線が過去の調査のもので、青線が最新の調査のものなんだ。割と短期間でズレが生じているんだ」

緯度経度(いどけいど)の補正がずれたのでは?」

「残念ながら機械観測ではない。僕が精霊鷹と同調して、上空から視認したネタなんだよ。だからほぼ正しい」

「…………便利ですね。今度、嵐の中を観測器を持って突っ込んでくれませんか?」


 クトリは研究馬鹿な要求をしてきた。カイルは(あき)れた。


「クトリだってサイラスから押し付けられた子竜(ウールヴェ)がいるだろう」

「身体が軽すぎて、風に飛ばされてしまうんです」

「試したんだ……」

「もちろん」

「……鷹だって同じじゃないか……」

「いや、試してみないと」

「やだ」


 カイルは真顔で拒否した。

 ディム・トゥーラがクトリの注意を引き戻した。


『どうして地下水脈のズレが起こったかわかるか?』


「うーん、うーん。単純に断層(だんそう)では?」


断層(だんそう)?』


「だって、こんなにポンポン、隕石が降っているんですよ?本番はまだとはいえ、クレーターができれば、地層はゆがむじゃないですか。断層と言って、地下の地層もしくは岩盤に力が加わって割れて、割れた面がズレ動いたんだと思いますよ」


『どうして地下水脈の経路がずれる?』


「僕、地質学は専門外ですが、この地下水脈は、岩盤にのっている帯水層(たいすいそう)――地下水によって飽和している地層部分だと思います。これがこちらに動いたということは、岩盤に断層が生まれれば、当然上にのっている帯水層(たいすいそう)もずれます。高い方から低い方に地下水脈が移動したんじゃないですかね?」


『断層が起きるとどうなる?』


「地震が起きやすくなります。断層直下の地震が起こると、その真上の生活圏は被害甚大(ひがいじんだい)になります。まあ、住まなければいいだけですが」

「この先、地面が揺れることが多くなるのか?」


 ハーレイがクトリに質問した。 

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