(44)変革⑲
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カイル達は同調を終えると、アドリーからハーレイの村に移動した。
ハーレイの家の壁に貼り付けてある地図の地下水脈情報を更新した。以前とは違う青色のインクを使ってカイルは加筆していった。
カイルは唖然とした。以前と地下水脈は経路が移動していた。
作業を見守っていたハーレイはカイルを見た。
「井戸が枯れるはずだな。水の道は変わるものなのか?」
「よく、わからない……今まで井戸が枯れたことは?」
「もちろんある。だが、今回は急に何か所で枯れたから、不安の声があがった。おまけに新しい井戸を掘っても水が出なかったから、なおさらだ」
「そりゃ、出ないよね。これだけ水脈がずれていれば」
カイルも自分の目撃した新しい情報の道筋を指でなぞった。
「どうして、こんなにもずれたのだろう」
白い虎も、カイルの作成した地図を一緒に見つめていた。ディム・トゥーラは、ロニオスの言葉が頭にひっかかり、離れなかった。ロニオスは何をしくじったと言ったのだろう。
専門外分野のことはわからない。研究都市は専門が細分化されていて、それを補完するために多数の研究者がいる。地下水脈の異常は、何を示しているのだろうか?
ディム・トゥーラもカイルも惑星科学の知識が乏しすぎた。
『ちょっと待っていてくれ』
『ディム?』
『専門家を拉致ってくる』
『専門家?』
白い虎は姿を消した。
「僕が外出嫌いなのは、わかっているじゃないですか。もう怖い目にあうのは嫌です」
クトリは西の地まで拉致ったディム・トゥーラの分身に文句たらたらだった。彼は、東国の経験が心的外傷になっているようだった。
『まあまあ、おもしろい資料があるんだ。クトリの分野かと思ったんだ』
ディム・トゥーラもすごい詐欺師だな、とカイルは二人の会話を聞いていて思った。いや、セオディア・メレ・エトゥール並みの釣り師と表現するのが正しいかもしれない。
「おもしろい資料がある」とは、研究者にとって究極の誘惑呪文だろう。そういえば所長のエド・ロウも似たような挑発の仕方で、研究者のやる気を200%ほど引き出していたことをカイルは思い出した。もしかして、研究都市の責任者になる素質は、口の旨さではないだろうか?
「僕の分野は気象学ですよ?」
『水資源や水環境は気象に関連があるだろう?水文学は惑星科学の中で、気象と関わりがあるから、俺達より知識があるはずだ』
「まあ、多少は……」
『この地図情報を見てどう思う?』
壁の地図を虎は顎で指した。
「ん?」
クトリは目をすがめて、地図情報を読み取ろうとした。
カイルが解説にまわった。
「西の地での地下水脈の地図だよ。赤線が過去の調査のもので、青線が最新の調査のものなんだ。割と短期間でズレが生じているんだ」
「緯度経度の補正がずれたのでは?」
「残念ながら機械観測ではない。僕が精霊鷹と同調して、上空から視認したネタなんだよ。だからほぼ正しい」
「…………便利ですね。今度、嵐の中を観測器を持って突っ込んでくれませんか?」
クトリは研究馬鹿な要求をしてきた。カイルは呆れた。
「クトリだってサイラスから押し付けられた子竜がいるだろう」
「身体が軽すぎて、風に飛ばされてしまうんです」
「試したんだ……」
「もちろん」
「……鷹だって同じじゃないか……」
「いや、試してみないと」
「やだ」
カイルは真顔で拒否した。
ディム・トゥーラがクトリの注意を引き戻した。
『どうして地下水脈のズレが起こったかわかるか?』
「うーん、うーん。単純に断層では?」
『断層?』
「だって、こんなにポンポン、隕石が降っているんですよ?本番はまだとはいえ、クレーターができれば、地層はゆがむじゃないですか。断層と言って、地下の地層もしくは岩盤に力が加わって割れて、割れた面がズレ動いたんだと思いますよ」
『どうして地下水脈の経路がずれる?』
「僕、地質学は専門外ですが、この地下水脈は、岩盤にのっている帯水層――地下水によって飽和している地層部分だと思います。これがこちらに動いたということは、岩盤に断層が生まれれば、当然上にのっている帯水層もずれます。高い方から低い方に地下水脈が移動したんじゃないですかね?」
『断層が起きるとどうなる?』
「地震が起きやすくなります。断層直下の地震が起こると、その真上の生活圏は被害甚大になります。まあ、住まなければいいだけですが」
「この先、地面が揺れることが多くなるのか?」
ハーレイがクトリに質問した。




