(43)変革⑱
ゴールデンウィークに突入しました。ひゃっほー。
お待たせしました。本日分の更新になります。
お楽しみください。
ブックマークありがとうございました!
いつの間にか、PV750000、ユニーク90000超えてました。
続けられたのは皆様のおかげです。(拝礼)
透視能力ならこんな見え方はしない。いや透視能力で地下水脈を探すのはかえって難しいだろう。
不思議な見え方だった。これがカイルの能力なのか、精霊鷹の能力なのか、ディム・トゥーラには判断の指標がなかった。
カイルが他のことを望めば、違うものが見えるのだろうか。
だが、観測機械を頼らないで情報収集ができることは便利だと言えた。
地上の人間に機械類を目撃されることなく、探査ができるのだ。そして地図上に地下水脈情報を可視化できる。これは地上人には宝の地図だ。
ディム・トゥーラは本人に悟られないよう、感心していた。
カイルの能力は今の地上の状況にマッチしていた。いまだに探査機械を降下させることができず、調査ツールが不十分なのに必要な情報を入手できていた。
『この後は、どうするんだ?』
『ハーレイの村に移動して、地図の加筆かな』
ディム・トゥーラは、支援追跡をすることで、カイルが視認している情景をそのまま受け取っていた。はるか上空を飛んで地上を見下ろす映像に奇妙な懐かしさを感じた。
『なつかしいよね』
カイルの感想にドキリとした。思わず自分の考えが読まれているのか、と遮蔽を確認してしまった。
『初めて、この惑星を探査する時に精神跳躍をしたことを思い出すよ』
『……ああ』
ディム・トゥーラの反応は、やや遅れたものになった。
確かにあの時も鳥と同調したカイルの支援追跡をしていたのだ。
『同じだね。あの時も精霊鷹に同調していたし』
『お前の同調が成功したとたん、データ取得順序で、もめたんだぞ。あの研究馬鹿達は』
『まるで、自分が研究馬鹿じゃない口ぶりだね?』
『連中よりマシだ』
カイルが笑ったような気配がした。
しばらく飛行を続けたあと、カイルが静かに言った。
『僕はね、隔離されて育ったから、よく窓から空を飛ぶ鳥を見ていた。僕の世界は、とても狭かったから、大空を飛んでいる鳥がうらやましかった。あの鳥は何を見ているんだろう、上からみたら人間なんてちっぽけだろう、どこまで飛んでいくのだろう、と――』
『――』
『そうしたら、いつのまにか視野が切り替わってびっくりしたんだ。僕は鳥と同調していた。それが初めての同調能力の発現だったよ』
カイルの告白にディム・トゥーラは胸を突かれた。
隔離されていたカイルの孤独さが、規格外の能力を生み出したきっかけになっていたとは思わなかったからだ。ロニオスの規格外の能力の遺伝が孤独をもたらし、これまた皮肉に、自力で父親と同じ同調に行き着いた。事情を知っているディム・トゥーラはなんとも言えない気分に陥った。
『……それで?』
『監視の目を盗んで、同調で遊ぶことを覚えたんだ。昼寝をしているふりをして、鳥と同調して、大空から地上を見たりしていた』
『支援追跡もなしにか?』
『だって、その頃は支援追跡なんて知らなかったし、それが必要だってわからなかったよ』
もっともな答えだったが、ディム・トゥーラは吐息をもらした。
『身体をこわしたりしただろう?』
『まあ、知恵熱をだしたり、疲労しすぎて寝込んだり、いろいろ……』
『能力者が壊れる典型ルートを驀進していたのか……』
『まあ、最終的には同調が原因とバレたけどね。数件しか前例がない能力だったらしいから、手のひらを返すように待遇が変わったよ。でもディム以外の支援追跡者は長続きしなかったかな』
能力差だ。
ディム・トゥーラはカイルの支援追跡者が挫折した根本的原因を悟った。カイルの能力の方が強大すぎたのだ。数件しかない前例の一つは間違いなく父親であるロニオスだろうと、ディム・トゥーラは推察した。
『……俺に感謝するんだな』
ディム・トゥーラの軽口は、意外にも真剣な思念で受け止められた。
『感謝しているよ、本当に』
『……真面目に受け取るな。こっちが照れる』
ディム・トゥーラは思わず本音を漏らしてしまい、カイルの方が笑った。




