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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第20章 大災厄(2)
770/1015

(41)変革⑯

お待たせしました。本日分の更新です。

お楽しみください。


ブックマーク、ダウンロードありがとうございました!

土竜(モグラ)から戻ったら、会いに来いと伝言だ」

土竜(モグラ)?」

「地下にもぐるのだから、土竜(モグラ)だろう」

「イーレは、ハーレイになんと説明したの?」

「そのうちエトゥール城の地下へ穴掘りに行く、と」


 あってるようで、微妙に違う説明だった。

 イーレが、ハーレイへの説明が面倒くさくなって、端折(はしょ)ったのは明白だった。


「説明が面倒だったのだろう」


 ハーレイは正確に見抜いていた。


「時々不思議なんだが、イーレは本当にカイル達の指導者なのか?」

「僕も時々疑うことがあるよ」


 痛い質問にカイルは視線をそらしつつ、同意した。


「エトゥール城の地下に何があるんだ?」

「……賢者の昔の住処(すみか)

「なぜイーレが必要なんだ?」

「そこを利用していた地上にいる初代達がアードゥルとエルネストとイーレしかいないから」

「よりによってその面子(めんつ)か……」


 ハーレイは顔をしかめた。


「例のアードゥルに会って、イーレが不安定にならないか?」

「だからハーレイにも同行してもらいたいんだよ。どうなるかわからないから」

「やれやれ」

「ナーヤ婆が何も言わないなら、問題はないと思うけど……」

「ナーヤはたまにわかっていても、言わないことがあるぞ」

「え?!」


 それは意外なことで、カイルは焦った。


「先見の結果を黙っていることがあるの?!」

「あるとも」

「どういう時に?」


 ハーレイはやや、言い(よど)んだ。


「ハーレイ?」

「ナーヤ婆の元に、村の女が占いに押し寄せた時期があったんだ」

「うん?」

「俺の後添(のちぞ)いになれるか、と」

「……………………モテ自慢(じまん)?」

阿保(あほ)。最近、発覚したネタだ。ナーヤはなんと答えたと思う?」

「…………何?」

「『お前じゃない』」

「正しいのでは?」

「ナーヤは、『村の女じゃない』という先見を得ていたんだぞ?」

「――」

「ナーヤは占料(せんりょう)を荒稼ぎするためにそう答えたんだ。『村の女じゃない』と言えば、結果は即座に村中に広まり、誰も占いに来ないじゃないか」

「――」


 カイルはあっけにとられた。ナーヤ婆がそのネタでがっぽり稼いだ気がした。


「お婆様……頭、いいなあ」

稀代(きたい)詐欺師(さぎし)だ」

「でも、ハーレイが後添(のちぞ)いを取ることは認めているよ」

「そういえばそうだな」

「嘘は言ってないよね」

「こういうところはメレ・アイフェスそっくりだ」

「一緒にしないで?!」

「カイルは時々、嘘は言わないが、言葉を選んで語らないじゃないか」

「うっ……」


 カイルは指摘に言葉を詰まらせた。


「僕たちの加護は、人の心を悟るモノが多いんだよ。だから下手な嘘はつけない」

「なるほど、わかるような気はする」

「シルビアは別の方法で嘘を見抜くけどね」

「ほう、どんな?」

「体温の微妙な上昇、血圧や脈拍の増加、発汗、目の動きやわずかな挙動で」

「面白い」

 

 ハーレイは感心した。


「そういえば、奇妙な現象が起きているんだが」

「奇妙な現象?」

「いくつか井戸が枯れた」

「え?」

「イーレは地下水脈の経路が変わったんじゃないかと言ってる」

「…………もう一度飛んでみる必要があるかも」

「そうしてくれるとありがたい。だが姫も治癒師も忙しいだろう?」

「まあ、最強の助っ人を頼んでみるよ」


 カイルはディム・トゥーラへの相談内容を頭の中でまとめ上げた。





『………………』


 カイルへの予想に反して、ディム・トゥーラの反応は(かんば)しくなかった。カイルの説明と依頼内容に長い沈黙が続いた。


『ディム?やっぱり忙しくて支援追跡(バックアップ)は無理かな?』

『……そうじゃない。いろいろ質問がある』

『なんだろう?』

『地下水脈の地図とは?』

『西の地が水場で争いが起きそうだったから、井戸を掘るために調査したんだ』

『どうやって?』

『精霊鷹と同調して西の地の上空を飛んだら、水脈らしき情報を取得できたんだ。それを地図におとした』

『いつごろの話だ?』

『イーレが西の地に降下して、和議が成立した後ぐらいだったかなぁ』


 長いため息の思念がきた。なぜだか操作卓に肘をつき両手で額を抑え込んで苦悩するディム・トゥーラの姿が浮かんだ。


『ディム?』

『あれだけ関係者に事情聴取していながら、なぜ未報告のネタがでてくるんだ……』

『あれ?これって、報告してなかった?』


 カイルは首を傾げた。

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