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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第20章 大災厄(2)
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(37)変革⑫

お待たせしました。本日分の更新になります。

お楽しみください。

更新時間は、さらに迷走中!(自信あり!)


ブックマークありがとうございました!

『カイル一人が探索したって、初代の誰かがいなければ生体認証で開放できないだろう』


「勘違いしていないか?私達が拠点開放につきあう義理はない」


『ロニオスが拠点開放を躊躇(ためら)う鍵がそこにあっても?』


「――」


 ディム・トゥーラは、(えさ)を小出しにしてみたが、手ごたえは確かにあった。

 エルネストがつぶやいた。


「そんなところにあるだろうか?ロニオスが失踪(しっそう)した時に、行方を探すために彼の個室(コンパートメント)は散々調べた。手がかりになるようなものは何もなかった」


 アードゥルも同意した。


「むしろ今までの痕跡(こんせき)を消していた」

「そうだ。まるで退任するかのように見事にもぬけの殻だった。個室(コンパートメント)を移動したと思ったくらいだ」

「活動拠点を変えたと皆は考えた」

「だから失踪(しっそう)を確信するのが遅れた」


『彼の執筆中の論文は?』


「なんだって?」


『論文だ。研究成果を抹消(まっしょう)する研究バカはいない』


「そういや、その(たぐい)もなかった」

「考えなかったな」


『さらに聞きづらいことを聞く。エレン・アストライアーの遺品は?』


 アードゥルとエルネストは顔を見合わせた。沈黙は怒りのためではなく、困惑から生まれているようだった。


「多分、拠点にそのままだ」


『多分?』


「あの事件のあとに、そんなことを気にする余裕はなかった……記憶も曖昧(あいまい)だ」

「あの時の君の精神状態は、まっとうではなかった。無理もない」

「ジェニ・ロウが気をきかせて、整理したとか?」

「だったら、君か私に一言打診するだろう」

「だが、ジェニなら親友の遺品を放置しない」

「確認する必要はあるな」

「乗せられた感は多々あるが、よし、付き合ってやる」


 アードゥルは探索に同意した。

 ディム・トゥーラは釣果(ちょうか)に満足した。






「何がどうなって、どうなると、こうなるの?」


 合流したカイルは、やや呆然としながら突っ込んだ。


『成り行きだ』


「てっきり僕に対する文句が山ほどくると思ったけど……」

「ご希望なら別途時間を用意しよう」

「いえ、結構です。お気になさらず」


 エルネストの提案を即座にカイルは退けた。

 だが、困惑は隠しきれない。

 説教と怒声を覚悟して、アードゥル達が待機している部屋にファーレンシアと共に出頭したら、二人と一匹は議論に夢中になっており、ノックの音に気づいてくれたのは歌姫だった。

 エトゥールの地下の探索という話になっており、これにはカイルも驚いた。

 多忙すぎて、手がつけられず放置していた項目だった。


「探索のメンバーは?」


『俺は多分、途中で待機になる。ウールヴェが入れないことが確かなら、カイルとアードゥル、エルネスト――』


「ミオラスも」


 カイルは驚いたようにアードゥルとミオラスを見つめた。


「歌姫を連れていくの?!」

「もちろんだ」

「危険かもしれないのに?!」

「仕方あるまい」

「仕方ない?」

「私達には信頼できる専属護衛がいるわけではない」

「――」

「それに、それがミオラスとの取り決めだ」


 カイルは思わず歌姫の方を見た。

 ミオラスはカイルに対して微笑んで見せた。


「アードゥルの信用は、失墜(しっつい)している」

「うるさいぞ、エルネスト」

「エルネスト様の信用も同様です」


 続いたミオラスの言葉にエルネストは固まった。


「なんだって?」

「大事なことを語っていただけないのは、アードゥル様そっくりです」

「いや、ここまで酷くないだろう?」

「いえ、そっくりです」

「叱られてザマーミロだが、エルネストとそっくり認定はいただけないな」


 アードゥルが複雑な心情を覗かせた。

 カイルはファーレンシアの方を向き直った。


「ファーレンシアはどうしたい?」

「同行したいのは、山々ですが、今のアドリーを放置するわけにはいきませんでしょ?こちらで待っております。ただカイル様単独の行動は兄が許さないかと」

「ミナリオかアッシュが同行することが、条件?」

「多分、そうなります」


『カイルと専属護衛二人、初代二人と女性一人……』


「イーレとハーレイも」


 全員がギョッとして提案したカイルを見つめた。

 エルネストが愕然として言った。


「君も火薬庫にミサイルをぶち放つタイプか」

「そんなつもりはないけど」

東国(イストレ)でアードゥルと殺し合ったそうじゃないか?」

「あれは、アードゥルがイーレの愛弟子(まなでし)(いじ)めるからだよ」

「虐めるってレベルか?」

「半殺し?」

「そっちの方がしっくりくるだろう」

「まあ、応急処置は確かに大変だったよ」


 ファーレンシアが、パンと手をたたいて、二人の注意をひいた。


「お二人とも、物騒な会話は控えてくださいませ。思い出したら、私は腹が立ってまいりました」


 ひっ、とカイルは怯えた。


『俺も腹が立ってきた』


 ウールヴェが姫に同意した。


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