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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第20章 大災厄(2)
764/1015

(35)変革⑩

お待たせしました。本日の更新です。

お楽しみください。


ブックマークありがとうございました。

「そういえばそうだったな。東国(イストレ)で私に刺されて、世界の番人でさえ手玉(てだま)にとっていた。思い出しても腹立たしい」

「ということは君も手玉(てだま)に取られたわけだ」


 微妙な表現にエルネストは笑いを含んで突っ込んだ。アードゥルは即座に、ぎろりとにらんだ。


「エルネスト、さっきからうるさいぞ」

「ロニオスの息子を殺さなくてよかったじゃないか。後から知れば、君は死ぬほど後悔していたに違いない」

「――」

「彼がここまで憤慨(ふんがい)しているのは、カイル・リードが東国(イストレ)の時よりも己の安全を(かえり)みないことだ」


 エルネストはアードゥルを黙らせつつも、フォローのためか、アードゥルの心理を暴露(ばくろ)した。


「エトゥールと敵対しているカストまで関わり救済するとは、いささか暴走すぎるだろう。カストはエトゥール王のウールヴェを殺したという(うわさ)が出回っている。そんな国に温情か、と民は当然不満に思う。救済の助言をしたカイル・リードが逆恨みされる可能性も高い。彼の自分の安全を軽視する悪癖が出ているのでは、ないかね?」


『それは俺の悩みと完全に一致する。定期的にデカイ釘を打ち付けているのだが、効果があるんだか、ないのだがわからない。今回に限っては、戦争の勃発(ぼっぱつ)よりも回避の方がはるかに危険が少ないと判断したから認めた』

 

 支援追跡者(バックアップ)の弁明の(げん)に、アードゥルはうんざりしたように首を振った。

 ここで、アードゥル達に手を引かれては困る。

 ディム・トゥーラは内心焦った。


『ロニオスの息子への協力は、今後見込めないのか?』


 カイルをわざとカイルのことを「ロニオスの息子」と表現してみた。

 ディム・トゥーラの小細工にアードゥルは(にら)みつけた。


支援追跡者(ほごしゃ)の方も小賢(こざか)しいな」


『正直、今更あんた達に撤退されても困るんだ。俺には地上の備えはできない。食料の備蓄や爆薬の精製は、あんた達が必要不可欠だ。カストとは戦争回避が前提だ。無駄にエトゥールの民に死者を出すわけにはいかない』


「虫のいい願いごとだとは思わないのか?」


『思っているが、カイルは死者が最小限になる道を望んでいる』


「だから、お人好しって言ってるんだ!!」


『それも認める。ヤツはお人好しで甘ちゃんだ』


 ウールヴェは静かに語った。ここで、なぜかディム・トゥーラは部屋全体に遮蔽(しゃへい)をはり、さらにそれを強化した。


『大災厄をとめる、と世界の番人に宣誓(せんせい)してしまった大馬鹿者だ。その世界の番人がロニオスと結託(けったく)してようと、俺はかまわない』


結託(けったく)だと?」


『どんなに追及してもロニオスは口を割らないけどな。ロニオスはあの精神生命体と何らかの取引をしている。アレは、どんな時にでも直接的に人を害しないという誓約(せいやく)に縛られている。これは逆の意味にも取れる』


「逆の意味とは?」


『その誓約(せいやく)がなければ、アレは人を大量に殺せる。それぐらいのエネルギーを秘めている』


「――」

「――」


『カイルを衛星軌道上から転移させたエネルギー。シルビアの使った移動装置を破壊したエネルギー。カイルがあんたと対峙(たいじ)した時に、四つ目を一掃(いっそう)したというエネルギー。それらを足し合わせるとすさまじい桁数の熱量になるんだ。ああ、それに探索装置(シーカー)の破壊も加えていい』

 

「我々の時は、そもそもそんな妨害が存在しなかった」


『その点を(かんが)みても、絶対にあの古狐(ふるぎつね)が一枚噛んでる。だが、エネルギー収支があわない。アレの源が精神エネルギーと仮定しても、足りない』


「ウールヴェもありうる」


『コレが?』


「世界の番人の手足と呼ばれている存在だ。どこからか現れて、どこかへ消えていく。形態もでたらめ。エネルギーを、世界の番人に提供している供給管(きょうきゅうかん)の役目を果たしているのでは」


 エルネストの推論にウールヴェは首を振った。


『むしろ逆だろう。こいつらの空間を跳躍(ちょうやく)できるエネルギーは、どこから得ているか謎だ』


 アードゥルは黙り込み、考えこんでいた。


『ロニオスは世界の番人が人間に手を出せないから、悪意ある攻撃から守護するためにウールヴェが作られたとも言っていた』

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