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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第20章 大災厄(2)
756/1015

(27)変革②

お待たせしました。本日分の更新です。

お楽しみください。


ブックマークありがとうございました!

 カイルの描いた複数の(はた)文様(もんよう)を見て、ガルースは吐息をもらした。


「間違いない。しかも第二、と第三の近衛隊(このえたい)だ。本来は王の警護をしている者達だ」

「考えられるのは人手不足……」


 ぼそりとカイルが言った。


「本来だったら、このような地方な村に派遣される隊ではない、そういうことですか?」

「そうだ」

「かなり、混乱していますね」

「無理もない……」


 前代未聞(ぜんだいみもん)災厄(さいやく)で多数の死者が出ているのだ。戦場で死を覚悟した兵士が死ぬのと、訳が違う。


「その人手不足の中、これだけの人数を()く理由は?」

「使節団メンバー生存の場合の(かせ)として、家族を捉えたかったのだろう」

「そういえば、副官の娘さんが、父親が死んだと王の使者から聞かされたと言っていたような……」

「我々が殺害されたことにして、民衆を(あお)り、着々とエトゥールと開戦する準備をすすめていたら、生還(せいかん)は邪魔でしかない」

「そこへ予想外に星が落ち続けている?」

「そうだな」

「……なるほど。ガルース将軍がおっしゃってたように、民衆より自尊心(じそんしん)ですか」

「だが、我々は裏をかいた。まさかエトゥールの賢者の協力により、この機動力を得ているとは想像できないだろう。家族を捕縛(ほばく)できず、エトゥールに逃れた避難民の所在もつかめないとなると、王はグラスを床に叩きつけていることだろう」


 ガルースは、少し笑いを漏らした。

 カイルはさらに何枚か、絵を描いた。身分の高そうな指揮官の人物画だった。

 その絵を見たガルースは、顔を(しか)めた。


「知っている人物ですか?」

「王の腰巾着(こしぎんちゃく)で、城の中で威張り散らしていた無能の宰相(さいしょう)のバカ息子だ」

「この場合、『無能』は、宰相(さいしょう)とバカ息子のどちらの修辞句で?」

「両方だ。こいつは頭が悪すぎて話の通じない大馬鹿者だ。現場の指揮にもっとも不適切な人物が派遣されたことになる」


 カイルはガルースを見つめた。


「………………将軍、案外、口が悪いですね?」

「カストの軍人はこんなものだ」

「まあ、わかりますが……」


 カイルはチラリと妻子(さいし)と話し合っている副官を見た。


「まて、ディヴィをカストの軍人の基準と考えるな」

「そうなんですか?」

「私でも翻訳不可な罵詈雑言(ばりぞうごん)を山ほど知っている男だ。口の悪さと、不敬ぶりと大胆さでは、カスト軍の頂点だ」

「えっと……その彼は将軍の副官ですよね?なぜ、そんな不敬な人物を採用したので?」

「口の悪さと不敬(ふけい)ぶりを差し引いても、巨大なお釣りがくる」

「つまり優秀だと……彼、メレ・エトゥールの暗殺を(たくら)んでいましたよね?」


 思わず、ガルースはエトゥールの賢者を見た。


「あれだけ、暗器を仕込んでいれば気づきますって。メレ・エトゥールが、貴方を殺害するなら、刺し違えることぐらい考えそうです」

「よくわかるな?」

「貴方を父親のように慕っています」

「――」


 ガルースは(きょ)を突かれた。

 カイルは絵を描くことを終えた。


「さて、とりあえず、アドリーまで、移動しましょう」

「そうだな。――ところで、その虎はなんだ?」

「僕の相方が(きずな)を結んだウールヴェです。その――」



『余計なことは、言わなくていい。ただのウールヴェだと思わせておけ』



 馬鹿正直に言いそうになったカイルは、言い換えた。


「戻ってくるために、召喚(しょうかん)しました」

「なぜ、虎なのだ?」

「それは僕も知りたいネタです」

「触れてもいいかね?」


 カイルは思わずディム・トゥーラが同調しているウールヴェを見た。

 ウールヴェは許可するように、老軍人の前にすすみでた。

 ガルースは軍馬を点検するかのように、ウールヴェの筋肉の付き方を検分した。


尻尾(しっぽ)は必ず複数なのだな」

「そうですね……あの……ガルース将軍?ウールヴェに拒否感はないのですか?」

「だいぶ慣れた」

「慣れ……」


 カイルは老人の順応力の高さに呆気にとられた。精霊鷹から逃げ回っていた当初の自分と、あまりにも対照的だった。


「すごいな。なんか、僕より順応力がありますね?」

「恐怖はどこからくると思う?」

「それは禅問答(ぜんもんどう)ですか?どこからです?」

「恐れは、無知からくるのだ。それを克服するには、知ればいいだけだ」

「――」


 研究員である自分の正体を言い当てられた気分にカイルは落ちいった。

 

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