(53)閑話:マニュアルを作ろう②
お待たせしました。本日分の更新です。
お楽しみください。
ブックマークありがとうございました!
今回の閑話にフラグ?
ないですよ。多分ないかな。ないと思う。あったらごめんね。(おい)
『はぐれていた子供を見つけたら?』
「兵団長か侍女に託して両親を探す」
『混乱時は?』
「安全な場所に一時避難させる」
『孤児だったら?』
「とりあえず施療院に届け保護」
『一般の怪我人がいたら?』
「兵団に指示をして救助、シルビア達に連絡」
『想定外のことが起きたら?』
「ウールヴェを飛ばして、メレ・エトゥールに指示をあおぐ」
『暴動が起きたら?』
カイルは考え込んだ。
「……とりあえず、暴徒を昏倒させる?」
ウールヴェは呆れたようにカイルを見つめた。
『……お前なぁ……』
「え?ダメ?」
『安全を確保して、状況を正確にメレ・エトゥールに伝えるだろう』
「昏倒させて数を減らしておいた方がよくない?」
『一般市民相手に加減ができるのか?』
「……わかんない……」
『……最後の手段にとっておけ』
ディム・トゥーラはその手法を否定しなかった。
カイルは端末に予想できる事態についての対応策を打ち込んでいた。泣いている子供に遭遇したことがきっかけに作成し始めた大災厄の対応マニュアルは、かなりのリストになっていた。
「次は?」
『俺が死んだときは?』
言葉を聞いたとたん、カイルは端末を振りかざし、虎の頭を間髪いれず殴っていた。
『痛いじゃないか』
暴力にディム・トゥーラは怒った様子はなかった。カイルはその平然とした態度にむかついて怒鳴った。
「不吉なことを口にされるのが嫌なくせに、どうして自分は平気で口にするんだ?!」
『これはいろいろなことを想定しての対応策の検討だろう?俺が事故った時のことも想定しておけ』
「やだ」
『……おい……』
「そんな想定はいらない。絶対にいらない」
『考えとけ、次までの宿題だ』
「じゃあ、僕が死んだとき、ディムはどうするんだ」
不吉なことを口にされることが大嫌いなディム・トゥーラへの報復のつもりの言葉は、予想外の内容で反撃を受けた。
『お前の遺体を回収して、中央に帰還』
用意されていたかのような即答に、カイルは衝撃を受けた。
「……はい?………………え?…………帰っちゃうの……?」
『大災厄の前だろうが、後だろうが即帰還だ。お前が死んでいるんだからな』
「……え……でも……恒星間天体が……」
『何度も言ってるだろう。お前がかかわってなければ、俺にこの惑星を救う義理はないと。俺に惑星救出任務を継続させたければ、まず、お前は自分の安全を確保しろ。お前が死んだら、ロニオスが何と言おうとも俺は手をひく』
カイルはディム・トゥーラの言葉に狼狽えていた。
『だいたい、お前は簡単に死んで、姫を一生泣かせるつもりか』
「ううっ……」
『お前が死んだらこの世界が滅亡すると思え』
「僕とこの世界を天秤にのせないでよ……」
『俺にとってはお前の方がはるかに重い。支援追跡者が対象者を喪失するほど不名誉なことはない。初代のエルネストあたりにイーレの原体を失った体験談でもきいてこい』
「そんな残酷なことを聞けないよっ!!」
『多分、後悔の塊だろうな』
ディム・トゥーラはエレン・アストライアーの支援追跡者の心情を正確に言い当てた。
『俺やシルビアはクローン申請してあるから、事故があっても再生してここに戻ってくることが可能だ。俺が死んだ時にお前がやることは、俺が再生されて戻ってくるまで生き延びることだ。記入しておけ』
カイルは顔をしかめた。
「僕の精神的安定が支援追跡者の務めなら、ディムは死ぬべきではない。支援追跡者としてそこの点はどう思っているわけ」
『その時のフォローは姫に依頼してある』
「は?」
カイルは目を剥いた。
続きます。




