表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第19章 大災厄(1)
717/1015

(49)講義⑤

お待たせしました。

本日分の更新になります。お楽しみください。

ブックマークありがとうございました!

 ディム・トゥーラは地上と自分たちの決定的な差を思い知った。

 それは政治経済が安定していないために、生じるリスク管理と、その対策を施行する統率者としての才だった。


 完璧に管理されている中央(セントラル)より、そのコントロールは(はる)かに難しかった。見下していた地上の方が、例えるなら盤上遊戯の超上級戦が展開され、より高度な技能を要求されていた。


 複雑怪奇(ふくざつかいき)極まる。


 これがロニオスを魅了した地上の特色の一つなのだろうか。


『後日、また講義をお願いしたい』


「こんな内容でよければ」


『この先の地上側の予想解析では、必要な分野になりそうだ』


「大災厄だけではなく、大災厄後の混乱をおさめることに手を貸してくれると?」


『大災厄後にカイルが姫と離縁(りえん)してエトゥールを離れると思うか?』


「それこそ星が落ちてきてもないように思えるが」


『その通りだ』


 虎のウールヴェは事実を認め、エトゥール王の前で愚痴(ぐち)った。


『そうなると俺の地上への協力も自動継続される仕組みだ。カイルはそれを見越している節もある。俺はすでに貧乏くじを引いているんだ』


 メレ・エトゥールが笑いを漏らした。


「これは我が妹を()める案件かな?よくぞカイル殿(メレ・アイフェス)を口説き落とした、と」


『まあ、そうだが、実は最初から勝負はついてた』


「ほうほう」


『俺の世界ではこう言われている――()れたら負け、と』







 カイルは、過去に丸暗記したエトゥールの書物から該当する外国語の辞書を探しだし、シルビアが記録した動画を繰り返し視聴した。カイルの翻訳インプラントが新しい言語情報の記録をはじめた。


 そのデータをクトリに渡す。

 クトリは、撮影動画に自動翻訳されたエトゥール語の字幕がつくプログラムをすぐに作成した。


 これには、ファーレンシアとメレ・エトゥールが驚いた。


 メンバーの中で外国語を学んでいるのは、王族である二人だけだった。


「まあ、すごい。動く絵に、絵本のように文字がつきました」

「これは会話の内容ではないか」

「そう」

「驚くべき技術だ」

「翻訳の精度(せいど)はどうだろう?」


 カイルはメレ・エトゥールに意見を求めた。


「助詞や助動詞が(つたな)いぐらいだ。未翻訳になっているのは、その国独特の表現や、貴族の婉曲な言い回しだな。だいたいの大筋は、あっている」

「学習が必要だなあ……」

「当面は十分だし、私達はわかるから補完(ほかん)できる」


 カイルはミナリオを見た。


「外国の書は手に入る?」

「もちろんです」

「国境が隣接している国を優先でよい」


 メレ・エトゥールは指示をかぶせた。


『イーレやサイラスも呼び出して、言語を学習させろ。異邦人が闊歩(かっぽ)すれば目立つ西の地ではともかく、エトゥール内で間者(かんじゃ)を洗い出すには全員が言語修得しておいた方がいい』


 ディム・トゥーラはカイルに指示した。その内容に絶望した表情でカイルは支援追跡者(バックアップ)が同調しているウールヴェを見下ろした。


「その修得させる膨大(ぼうだい)な基本言語は誰がデータをまとめるの?」


『お前しかいないだろう』


「……そんな気はしたんだ」


『お前は優秀だ。お前ならできる』


 カイルは少しだけ嬉しそうな顔をした。


「すぐにとりかかるよ」


 カイルが離れたあと、シルビアが虎姿のディム・トゥーラの隣にそっと立って(ささや)いた。


「ずいぶんと操縦方法がお上手になりましたね?」


『そうだな。木に登らせるぐらいはできるようになった』


「木どころか、大陸の最高峰(さいこうほう)の山脈まで踏破(とうは)できそうです」


『そこまで単純じゃないだろう』


「そう思いますか?試してみたらいかがです?」


 ディム・トゥーラは、シルビアの言葉にしばし考えこんだ。


最高峰(さいこうほう)踏破後(とうはご)の下山途中で遭難(そうなん)したカイルを、探しに行く俺の姿が浮かんだから、試すのはやめておく』


 想像結果が妙にリアルだった。



豚もおだてりゃ、木に登る――エベレストバージョン

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ