(45)講義①
お待たせしました。2/4分の更新になりますが、今日の夜の更新がなければ寝落ちしやがったと、判定してください。(懺悔)
ブックマーク、ダウンロードありがとうございました!
「この『かめら』なるものは、本当に面白いなあ」
セオディア・メレ・エトゥールはしみじみと語る。
映像はカイルの知らない国の王宮だった。玉座に座る男とその配下の者達で延々と討議が行われている。異国の言葉なのでカイルには、わからなかった。あとで学ぶ必要がある。
モニターに映る動画記録に、虎のウールヴェは相方を睨んだ。
『これも、報告がなかったな……』
「僕じゃないっ!!これを企画計画したのは、僕じゃないっ!!」
『報告を怠っていたのは、お前だろう』
「うっ……」
「企画計画実行ともに私です」
シルビアが片手をあげ自主的に申告した。
『……シルビア……』
「セオディア・メレ・エトゥールのウールヴェの使役数限界実験です」
『……カメラは不要だよな?』
「あ、僕がウールヴェの現在位置と情報収集のため、つけました」
『……クトリ……』
「ウールヴェの生態記録には動画記録は必須ですよね?僕、ディム・トゥーラのために頑張りました!」
クトリ・ロダスが褒めてほしそうなキラキラした目でウールヴェ姿のディム・トゥーラを見つめてきた。それをカイルが見守っている。
ここでクトリを褒めれば、一悶着が勃発する気配は濃厚だった。もちろん、不満を表明するのは間違いなくカイルだった。
『なぜ俺のため?』
ディム・トゥーラは質疑応答で時間を稼いだ。
「ウールヴェという摩訶不思議な生物を研究するなら、動画資料が有効だと言われました」
クトリは自信に満ちて胸を張る。
『その助言者は?』
「セオディア・メレ・エトゥールです」
虎の問いかける視線に、セオディア・メレ・エトゥールは外交上の微笑で応じた。
『――』
諦めたディム・トゥーラはエトゥール王のそばに移動した。
『セオディア・メレ・エトゥール』
「なんだろうか、天上の偉大なる導師よ」
『そんな修辞句はいらない』
「だが今回の親書には使わせてもらった」
『親書?』
「ディム殿、貴方は天上の賢者の代表で伝言役を担っている」
『代表ではないが、伝言役ではある』
「そして初代の賢者に権謀術数を私に学んでこいと言われた」
『……まあ、そうだ』
「私は初代がディム殿を指名した意味がよくわかる。英断だし、絶対にカイル殿、シルビア殿、クトリ殿には学習できない分野だ」
『……イーレやサイラスは?』
「ある程度、才はあるが、おそらく本能で動く性格ではないだろうか?それほど先まで読まないだろう」
脳筋という判断は間違っていないな――と、ディムは思った。
『それで?』
「何度か話題に上っているが、大災厄の問題点は何だと思う?『氷河期』による文明の滅亡、気候の変動、津波による人的被害、大量の難民の発生、穀物の発育不良、食糧不足、治安の悪化――まあ、いろいろありすぎてキリがないが」
『――』
「人的被害と難民の発生は、移住、避難推奨で回避を計画している。穀物の発育不良、食糧不足は賢者達の技術力に大いに期待している。一つ、賢者達では対応できない分野がある」
『なんだろうか?』
「混乱中に乗じた外国の侵略だ」
『――』
「賢者達は外国事情とその力関係に疎い。危機感も薄い。だが、私はその点を一番危惧している。まあ、この分野は大災厄があろうとなかろうと、メレ・エトゥールとしての執務の範疇だ。エトゥールが滅ぶ災厄がくることは妹の先見でわかっていた。どんな災厄かは、当時わからなかったが、いろいろ考えていた。エトゥールの民が他国の奴隷などになることは許せなかったからだ」




