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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第19章 大災厄(1)
713/1015

(45)講義①

お待たせしました。2/4分の更新になりますが、今日の夜の更新がなければ寝落ちしやがったと、判定してください。(懺悔)


ブックマーク、ダウンロードありがとうございました!

「この『かめら』なるものは、本当に面白(おもしろ)いなあ」


 セオディア・メレ・エトゥールはしみじみと語る。

 映像はカイルの知らない国の王宮だった。玉座(ぎょくざ)に座る男とその配下の者達で延々(えんえん)討議(とうぎ)が行われている。異国の言葉なのでカイルには、わからなかった。あとで学ぶ必要がある。

 モニターに(うつ)る動画記録に、虎のウールヴェは相方(カイル)(にら)んだ。


『これも、報告がなかったな……』


「僕じゃないっ!!これを企画計画したのは、僕じゃないっ!!」


『報告を(おこた)っていたのは、お前だろう』


「うっ……」

「企画計画実行ともに私です」


 シルビアが片手をあげ自主的に申告した。


『……シルビア……』


「セオディア・メレ・エトゥールのウールヴェの使役数限界実験です」


『……カメラは不要だよな?』


「あ、僕がウールヴェの現在位置と情報収集のため、つけました」


『……クトリ……』


「ウールヴェの生態(せいたい)記録には動画記録は必須(ひっす)ですよね?僕、ディム・トゥーラのために頑張(がんば)りました!」


 クトリ・ロダスが褒めてほしそうなキラキラした目でウールヴェ姿のディム・トゥーラを見つめてきた。それをカイルが見守っている。

 ここでクトリを()めれば、一悶着(ひともんちゃく)勃発(ぼっぱつ)する気配は濃厚だった。もちろん、不満を表明するのは間違いなくカイルだった。


『なぜ俺のため?』


 ディム・トゥーラは質疑応答(しつぎおうとう)で時間を(かせ)いだ。


「ウールヴェという摩訶不思議(まかふしぎ)な生物を研究するなら、動画資料が有効だと言われました」


 クトリは自信に満ちて胸を張る。


『その助言者(アドバイザー)は?』


「セオディア・メレ・エトゥールです」


 虎の問いかける視線に、セオディア・メレ・エトゥールは外交上の微笑で応じた。


『――』


 (あきら)めたディム・トゥーラはエトゥール王のそばに移動した。


『セオディア・メレ・エトゥール』


「なんだろうか、天上の偉大なる導師(メレ・アイフェス)よ」


『そんな修辞句(おせじ)はいらない』


「だが今回の親書(しんしょ)には使わせてもらった」


親書(しんしょ)?』


「ディム殿、貴方は天上の賢者(メレ・アイフェス)の代表で伝言役を担っている」


『代表ではないが、伝言役ではある』


「そして初代の賢者(メレ・アイフェス)権謀術数(けんぼうじゅっすう)を私に学んでこいと言われた」


『……まあ、そうだ』


「私は初代がディム殿を指名した意味がよくわかる。英断だし、絶対にカイル殿、シルビア殿、クトリ殿には学習できない分野だ」


『……イーレやサイラスは?』


「ある程度、才はあるが、おそらく本能で動く性格ではないだろうか?それほど先まで読まないだろう」


 脳筋(のうきん)という判断は間違っていないな――と、ディムは思った。


『それで?』


「何度か話題に上っているが、大災厄の問題点は何だと思う?『氷河期』による文明の滅亡、気候の変動、津波による人的被害、大量の難民の発生、穀物の発育不良、食糧不足、治安の悪化――まあ、いろいろありすぎてキリがないが」


『――』


「人的被害と難民の発生は、移住、避難推奨(ひなんすいしょう)で回避を計画している。穀物の発育不良、食糧不足は賢者達の技術力に大いに期待している。一つ、賢者達では対応できない分野がある」


『なんだろうか?』


「混乱中に乗じた外国の侵略(しんりゃく)だ」


『――』


「賢者達は外国事情とその力関係に(うと)い。危機感も薄い。だが、私はその点を一番危惧(きぐ)している。まあ、この分野は大災厄があろうとなかろうと、メレ・エトゥールとしての執務の範疇(はんちゅう)だ。エトゥールが滅ぶ災厄がくることは妹の先見でわかっていた。どんな災厄かは、当時わからなかったが、いろいろ考えていた。エトゥールの民が他国の奴隷(どれい)などになることは許せなかったからだ」

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