(44)解析㉒
お待たせしました。本日分の更新です。
お楽しみください。
2/4はメンテナンス(だよね?)のようなので更新は成り行き。日曜日は夜更新予定です。
ブックマークありがとうございました!励みになります。
意外なことに、カイルが場をさらに煽った。
「地上の人々が聞いている前で、酷薄な物言いが維持できるかな?ディム、いいよ、この情報開示状態で。そのまま、エルネストを説得してよ」
「カイル・リード」
「状況は以前より悪いのは確かだよ。アドリーと館以外の拠点の位置を示してほしい」
「断る」
『ロニオスが望んでも?』
エルネストが嫌そうに顔をしかめた。
「私達がロニオスに弱いと思ったら大間違いだ」
『弱いだろう』
ウールヴェはちらりとカイルに一瞬だけ視線をやり、それを見ていたのはエルネストだけだった。
「……君は悪魔か?」
『最近、師事した人物が恐怖の大王だった』
「それはロニオスのことだな?」
『俺は固有名詞は言っていない』
「考えさせてもらう。まずは被害地図を完成させたまえ。それがなければ論じることすらできない」
エルネスト・ルフテールの要求はもっともなものだった。
大陸地図が完成した。
赤いインクの太線は国境で、山地や川沿いに走っていた。
クトリはそこに地上に現存する自分達の移動装置をさらに記入した。
ディム・トゥーラは、国境線の位置をざっと確認した。
『クトリ』
「はい」
『俺がいう座標を地図に落としてくれ』
「緯度、経度ですか?それとも確定座標?」
『確定座標だ』
「待ってください。一度端末の方に記録します」
クトリが端末を取り出し、ウールヴェと会話をしながら、作業を開始した。
「カイル殿」
セオディア・メレ・エトゥールは、カイルの元にやってきた。
「質問がいくつか。まず用語がわからない。緯度と経度は、地図上の座標と理解しているが、「かくていざひょう」とは?」
「えっと……」
カイルは説明の言葉を探した。
「舞踏会の襲撃で、イーレが移動装置でいきなり現れたでしょ?」
「うむ」
「天上の僕達の拠点から、地上に降りたつのは、座標が必要で、緯度、経度は地図上の座標だけど、それだけでは不十分なんだ」
「理由は?」
「高さとか深度とかがない。天上から飛んできて、地面の中にめり込んで着地するのは事故だからね。移動装置は安全が確認されている場所のみに定着する」
「なるほど」
メレ・エトゥールは納得すると同時に眉をひそめた。
「するとサイラス殿やイーレ嬢、クトリ殿は本来ならエトゥール城内に着地する予定だったと?」
「僕が世界の番人を罵ったのを、理解してくれる?」
「なるほど。気持ちはわからないでもない」
「確定座標には、様々な情報が含まれるんだ。惑星内部の影響の地磁気や――」
セオディア・メレ・エトゥールは軽く手をあげた。
「待て。ほぼ呪文になった。明日にでも講義してもらおう」
「わかった――あのさ、僕達も聞きたいことがあるんだけど」
「なんだろうか?」
「メレ・エトゥールが破片の到達日時と地点を知りたがったのは、住民の避難のためではないの?」
「避難のためだが」
「それがどう転んで、権謀術数になるのか理解できない」
セオディア・メレ・エトゥールは、あっけにとられた顔をした。
「権謀術数?」
「セオディア・メレ・エトゥールに学んでこいと、ディムが言われてやってきたんだけど――」
カイルの言葉は、セオディアの大爆笑で遮られた。
「メレ・エトゥール?」
「いやいや、まいった。見抜かれているとは」
「は?」
「誰の助言だろうか?」
「えっと……初代のロニオスという人物だけど」
「では、のちほどそれを講義しようか」
「はい?」
「学ぶのだろう?メレ・エトゥール流の権謀術数を」
変な方向に話が展開してきて、カイルはたじろいだ。




