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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第19章 大災厄(1)
706/1015

(38)解析⑯

お待たせしました。本日分の更新です。

お楽しみください。

ダウンロードありがとうございました。


土曜日、日曜日は夜更新予定、寝落ちしたら翌朝です。(事前土下座)

 ディム・トゥーラとアードゥル達が対立しなくて安堵したことは間違いないが、それを露骨(ろこつ)に当事者達に表現する必要はなかった。


「落ちつけ、はしゃがないでくれ」


――なんで?今、嬉しいよね?


「僕だって、見栄(みえ)を張りたい時がある。心情が相手にバレたくないんだ。お前が僕の喜怒哀楽を表現すると、僕の演技力と見栄(みえ)粉砕(ふんさい)されてしまう。いつも毅然として、堂々としてほしい」


――(むずか)しいけど 頑張(がんば)


 カイルとウールヴェの対話にエルネストは笑った。


「重要な話合いの場にウールヴェを連れていくのは、しばらく控えた方がいいな。駆け引きもへったくれもない。メレ・エトゥールにもう少しコツ教えてもらうといい」

「そうするよ。……長い話し合いだったね?何を話したの?」

「もちろん君のことだ」


 予想通りの回答に、カイルはうっと詰まった。


「ぼ、僕の何を?」

「その規格外の能力とその取り扱い説明書だ。残念ながら取り扱い説明書はないと言われた。あちらはロニオスの取り扱い説明書を求めてきたな。それも残念ながら、ない」


 対話の内容にカイルは納得した。ディム・トゥーラは(くせ)のあるロニオスに苦労しているのかもしれない。




『相変わらずの詐欺師(さぎし)のような語りだな』

『嘘は言っていない。口下手(くちべた)な君に代わって説明しているが、君が担当してくれてもいい』

『まかせた』




「彼はなかなか優秀だな。だが、ロニオスで苦労しているようだ」

「そういえば、家出したい気分だ、とすぐにこちらの要請に応じてくれた」

「まだまだ話し合う内容が山積みだ。今後もここで対話するだろう」

「わかった」


 不意にアードゥルが手を伸ばし、カイルの髪の毛をわしゃわしゃにして()でた。


「も、もしもし?また、ロニオスのことで、同情されている?」


 最近のアードゥルは、妙な癖をつけていた。東国(イストレ)で対立した人物と本当に同一人物だろうか、とカイルは思った。


「まあ、そうだ。……ところで、君の支援追跡者(バックアップ)が待ちわびている」

「え?」


 カイルが慌てて、花畑の方を見ると、ウールヴェの虎がややイラついたように待機していた。


「ちょ、ちょっと行ってくる。また、あとで!」


 カイルは慌てて、遠く離れたウールヴェに向かって駆け出した。

 それをエルネスト達は見送った。


「アードゥル」

「なんだ?」

「君は、今、わざとカイル・リードの頭を撫でただろう?」

「もちろんだ」

「何を遊んでいる?」

「ただの反応実験だ。支援追跡者(バックアップ)の反応が昔のエルネストにそっくりだ」

「私に?」

「エレンに出会った頃、私がエレンに触れると、仔猫を守る母猫のようにいきりたっていたじゃないか」

「…………頼む、もう少し真っ当な表現にしてくれ……」

「適切な表現だと思うが、もう少し文学的表現を探そうか?」


 二人は揃って、花畑のディム・トゥーラを振り返った。虎はアードゥルを(にら)んでいた。


「ほら、君にそっくりだ。まだ、信頼を得ていないから、私がカイルに危害を与えないか見張っていて、敏感になっている。支援追跡者(バックアップ)は面白いな。そういえば、ロニオスも私に過保護な時期があった。なんでそうなるんだ?」

「ディム・トゥーラの場合、君がカイルを傷つけた前科持ちなことを考えれば、当然の反応だろう。むしろ対話に応じた心の広さにびっくりだ」

「なるほど。では昔の君の私に対する態度は?」

「エレンが周囲が見えなくなるほど、君にぞっこんになりそうな気配がしたから、君などカタパルトに乗せて宇宙の果てに射出したくなっただけだ」

「……母猫の態度の理由はそれか」

「……だからその表現はやめたまえ」


 エルネストは顔をしかめた。


「だいたい君から、エレンを話題にするとはどういうことだ」

「私にもわからない」

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