表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第19章 大災厄(1)
703/1015

(35)解析⑬

お待たせしました!本日分の更新です。

お楽しみください。

いつも最新話を読んでくださり、ありがとうございます!

 だが、カイルに関して、地上の初代達と連携(れんけい)が約束されるなら、こんな心強いことはなかった。


『カイルに関して、信頼していいんだな?』


「もちろん」

「息子は腹芸(はらげい)下手(へた)だし、思考波長がロニオスに似ているから、思考が筒抜(つつぬ)けだ。遮蔽(しゃへい)が下手なのかと思ったが違うようだ」


 ぼそりとアードゥルが言った。その意見にエルネストまでもが賛同した。


「そういえばそうだな。私もやや不思議に思っていたんだ」


『カイルの思考が読めると?』


「読めるというより、自然に拾うという状態の方が近い。私はロニオスの支援追跡(バックアップ)を以前受けていた。彼等が親子だからかもしれない」

「その推論(すいろん)はやや弱くないか?」

「そうか?」

「私は、赤子(あかご)のカイルを君があやしていたことに関係があると仮説をたてるが」

「そうならばジェニやエレンも影響を受けたはずだ」


()()()()()()()()()()()()()?』


「彼がマメに世話をした、と言っただろう?保父の才能があると」


『あやすとは?』


「――」

「――」

「そこからか」

「いや、一般的な反応だ。私も500年前に同じ質問をした。赤子(あかご)の世話など、育成ポットで無縁だし、ジェニもエレンも戸惑(とまど)っていたことを記憶している」


 アードゥルはディム・トゥーラの反応に理解を示した。アードゥルはウールヴェを見た。


「恐ろしいことに、地上には赤子(あかご)用の育成ポットがないんだ」


『――』


 その言葉に、ややディム・トゥーラは呆然とした。意味が理解できなかった。育成ポットなしにどうやって生育するんだ。


『……拠点(きょてん)に育成ポットぐらい……』


「あるわけなかろう。学術調査の場に、赤子(あかご)がいることは想定しない。中央(セントラル)に帰還すればいいだけだ。コンピューターによる健康管理など出来ず、地上人は山羊(やぎ)(ちち)か母乳で赤子(あかご)を育てる。そしてさらに恐ろしいことがある」


『……それは?』


四六時中(しろくじちゅう)赤子(あかご)は泣くんだ」


『――』


赤子(あかご)の機嫌を取り、上手(うま)くなだめることを『あやす』と言う。赤子(あかご)をあやすなど、我々の文化では死語に近い」


 ディム・トゥーラはリルが泣きやまなかった大混乱を思い出した。対話が成立しない未成熟(みせいじゅく)赤子(あかご)を泣きやますなど――。


『……地獄だ……』


「よくわかったな」

「母親は病床、世話する女性陣は睡眠不足で神経症(ノイローゼ)赤子(あかご)はその不安を感じとってますます泣く。最悪の悪循環(あくじゅんかん)が生まれた。だが、ロニオスかアードゥルが遮蔽(しゃへい)をすれば泣き止んだ」

「泣き止めば、なかなか素直だった」

「君は女性陣に感謝されていたな」

「君は逃げただろう」

「簡単に(こわ)れそうで怖かったんだ」

「わからないでもない」


 アードゥルは顔をしかめた。


「多分、ロニオスは、その時点で息子の潜在能力に気づいていたんだろう。中央(セントラル)への送還も理解できるが、何も死亡を偽装(ぎそう)しなくてもいいだろう?」

「敵を(だま)すには、まず味方からを実践したんだ」


 エルネストは肩をすくめた。



 ディム・トゥーラは別のことを考えていた。アードゥルやロニオスが、制御できていない赤子(あかご)のカイルの影響を受けた可能性はないだろうか?規格外に拍車がかかっている根源(こんげん)がカイルの可能性は?



『……地上の拠点にロニオスのデータはないだろうか?』


 アードゥルとエルネストは視線をかわした。


「何を知りたい?」


『ロニオスの能力値を知りたい』


「観測ステーションにあるだろう」


『ロニオスにバレるじゃないか』


「つまり、ロニオスに内緒で知りたいと」

「別にいいが、問題は拠点(きょてん)がウールヴェを(はじ)く点だな」


『なんだって?!』


「当たり前の防御だろう。貴族のスパイにもなるウールヴェが拠点に跳躍(ちょうやく)できたら、秘密も何もあったものではない」

「我々はウールヴェから隔離隠蔽(かくりいんぺい)する手段をとっている」


()にかなっているが……困ったな。実体で降下しない限り無理か』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ