(24)解析②
お待たせしました。本日分の更新になります。
お楽しみください。
(平日朝更新、週末夜更新に戻りそうな気配)
「間違っていないが、教え子の前では威厳を維持したいという彼の要望を見事なまでに粉砕しているように感じられるよ」
「そんな要望は粉砕するに限るわ」
「情状酌量は?」
「ないわね。ありのままを伝えるのは大切なことでしょう?」
「時と場合によるかな?」
「彼の場合は考慮しなくていいわよ。数百年を自由に過ごしているから」
「厳しいねぇ」
ディム・トゥーラはイカ耳のウールヴェとジェニ・ロウを交互に見比べ、それからリードに話しかけた。
「リード……俺に維持したい威厳はどこに?」
『粉々で砂埃になって、空気清浄システムに回収されているかな……』
ウールヴェは遠い目をしていた。
「そんな気はしました――ジェニ・ロウ、どこまで本当の話ですか?」
「何が?」
「酒好きのアル中親父が、冷淡冷静の見本だったって話です」
「……ディム・トゥーラ、君も口が悪い……」
「え?俺は昔から、こんなものですが?」
ディム・トゥーラは上司に答えた。
「そういえばそうだったような気もする」
「貴方には、ロニオスはどういう人物に見えているの?」
「頭が切れる。統率力と判断力がずば抜けている。酒以外のことは冷静。規格外の能力をもち、昔、アードゥルの支援追跡者だった。そして今、地上のために奔走している。冷淡とは思えませんが――」
そこでディム・トゥーラは、恒星間天体を軌道変更し、エトゥールに落とす提案をしたのは、ロニオスだということを思い出した。しかも研究員が根城にしている基本の拠点――観測ステーションをぶつけるという驚愕の作戦を立案したのも、彼だった。
「…………冷淡というより、鬼畜では?」
『評価がさらに下がったっ?!』
「貴方は周囲の評価など気にしないのでは?」
『まあ、そうだが』
ウールヴェはあっさりと認めた。
「いや……待てよ。周囲の評価は気にしないのに、絆の有無を気にしたのは何故だ?ウールヴェの維持条件の一つなのか?」
ディム・トゥーラの考察の呟きに、リードは尻尾をふくらませた。
「なんの話かしら?」
「世間の評価を気にしない彼が、『絆』の存在を全否定されて、貴女に叱られた時より精神的ダメージを受けたんです」
「貴方が全否定したの?」
「いえ、カイル・リードが」
「――」
「――」
上司夫妻は鳩が豆鉄砲を食らったような表情をしたあとに、大爆笑をした。
「これは傑作だっ!」
「ずいぶん人間味溢れる反応をするのねっ!」
「ジェニ、笑っては失礼だよ?」
「そういう貴方だって……」
ディム・トゥーラには、どこに笑いの要素があるのか理解出来なかった。
「……あの?」
「ああ、ごめんなさい。なんの話だったかしらね?」
「リードの冷静冷淡鬼畜説です」
『……項目を増やさないでくれ』
ウールヴェは笑い転げる夫婦を放置することに決めたらしかった。
『私は目的のために手段を選ばないと言っただろう?』
「地上でそんなことを言ってましたね」
「昔からそうよ。これでも丸くなった方だわ」
「でも面倒見はいい方では?」
ディム・トゥーラの意見にジェニは面白そうな顔をした。
「そうね」
「アードゥルの支援追跡者を引き受けた?」
「ええ、ついでに自立のためのコントロール訓練もね」
「どうりで教え方が上手いと思いました」
「たまに鬼教官だけど」
「それは身を持って体験しました」
「あら、気の毒に。同情をするわ」
「冷静冷淡は中央の特性だって、いいましたね?」
「だって、教育プログラムに含まれているもの」
初耳だった。
「なんだって?」
「どれだけの人間が候補者から振り落とされていると思っているの?中央の維持管理に情で流される人材は不要だし、選抜しないような仕組みを持っているわ。だから、逆に貴方の脱落は、中央では話題になっていたわよ」
「……知らなかった」
「教育プログラムのこと?」
「両方です。俺の脱落はそんなに稀有ですか?」
「だって矛盾しているでしょう?冷淡冷静の未来の技術官僚候補が支援追跡対象のために道を踏み外すなんて」
「俺は自分の選択に後悔していませんが」
「そこよ、そこ」
ジェニ・ロウは、指を振った。




