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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第19章 大災厄(1)
692/1015

(24)解析②

お待たせしました。本日分の更新になります。

お楽しみください。

(平日朝更新、週末夜更新に戻りそうな気配)

「間違っていないが、教え子の前では威厳(いげん)を維持したいという彼の要望を見事なまでに粉砕(ふんさい)しているように感じられるよ」

「そんな要望は粉砕するに限るわ」

情状(じょうじょう)酌量(しゃくりょう)は?」

「ないわね。ありのままを伝えるのは大切なことでしょう?」

「時と場合によるかな?」

「彼の場合は考慮しなくていいわよ。数百年を自由に過ごしているから」

「厳しいねぇ」


 ディム・トゥーラはイカ耳のウールヴェとジェニ・ロウを交互に見比べ、それからリードに話しかけた。


「リード……俺に維持したい威厳(いげん)はどこに?」


『粉々で砂埃(すなぼこり)になって、空気清浄システムに回収されているかな……』


 ウールヴェは遠い目をしていた。


「そんな気はしました――ジェニ・ロウ、どこまで本当の話ですか?」

「何が?」

「酒好きのアル中親父が、冷淡冷静の見本(サンプル)だったって話です」

「……ディム・トゥーラ、君も口が悪い……」

「え?俺は昔から、こんなものですが?」


 ディム・トゥーラは上司に答えた。


「そういえばそうだったような気もする」

「貴方には、ロニオスはどういう人物に見えているの?」

「頭が切れる。統率力と判断力がずば抜けている。酒以外のことは冷静。規格外の能力をもち、昔、アードゥルの支援追跡者(バックアップ)だった。そして今、地上のために奔走している。冷淡とは思えませんが――」


 そこでディム・トゥーラは、恒星間天体を軌道変更し、エトゥールに落とす提案をしたのは、ロニオスだということを思い出した。しかも研究員が根城(ねじろ)にしている基本の拠点――観測ステーションをぶつけるという驚愕(きょうがく)の作戦を立案したのも、彼だった。


「…………冷淡というより、鬼畜(きちく)では?」


『評価がさらに下がったっ?!』


「貴方は周囲の評価など気にしないのでは?」


『まあ、そうだが』


 ウールヴェはあっさりと認めた。


「いや……待てよ。周囲の評価は気にしないのに、(きずな)の有無を気にしたのは何故だ?ウールヴェの維持条件の一つなのか?」


 ディム・トゥーラの考察の(つぶや)きに、リードは尻尾(しっぽ)をふくらませた。


「なんの話かしら?」

「世間の評価を気にしない彼が、『(きずな)』の存在を全否定されて、貴女に叱られた時より精神的ダメージを受けたんです」

「貴方が全否定したの?」

「いえ、カイル・リードが」

「――」

「――」


 上司夫妻は鳩が豆鉄砲を食らったような表情をしたあとに、大爆笑をした。


「これは傑作だっ!」

「ずいぶん人間味(あふ)れる反応をするのねっ!」

「ジェニ、笑っては失礼だよ?」

「そういう貴方だって……」


 ディム・トゥーラには、どこに笑いの要素があるのか理解出来なかった。


「……あの?」

「ああ、ごめんなさい。なんの話だったかしらね?」

「リードの冷静冷淡鬼畜説です」


『……項目を増やさないでくれ』


 ウールヴェは笑い転げる夫婦を放置することに決めたらしかった。


『私は目的のために手段を選ばないと言っただろう?』


「地上でそんなことを言ってましたね」

「昔からそうよ。これでも丸くなった方だわ」

「でも面倒見はいい方では?」


 ディム・トゥーラの意見にジェニは面白そうな顔をした。


「そうね」

「アードゥルの支援追跡者(バックアップ)を引き受けた?」

「ええ、ついでに自立のためのコントロール訓練もね」

「どうりで教え方が上手いと思いました」

「たまに鬼教官だけど」

「それは身を持って体験しました」

「あら、気の毒に。同情をするわ」

「冷静冷淡は中央(セントラル)の特性だって、いいましたね?」

「だって、教育プログラムに含まれているもの」


 初耳だった。


「なんだって?」

「どれだけの人間が候補者から振り落とされていると思っているの?中央(セントラル)の維持管理に情で流される人材は不要だし、選抜しないような仕組みを持っているわ。だから、逆に貴方の脱落は、中央(セントラル)では話題になっていたわよ」

「……知らなかった」

「教育プログラムのこと?」

「両方です。俺の脱落はそんなに稀有(けう)ですか?」

「だって矛盾(むじゅん)しているでしょう?冷淡冷静の未来の技術官僚(テクノクラート)候補が支援追跡(バックアップ)対象のために道を踏み外すなんて」

「俺は自分の選択に後悔していませんが」

「そこよ、そこ」


 ジェニ・ロウは、指を振った。

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