(23)解析①
お待たせしました。本日分の更新になります。
お楽しみください。(しばらく更新時間は成り行き!←開き直った)
ダウンロードありがとうございました!
『ほう……これがカイルの見た先見の光景か……実に写実的だ。いや、むしろ写真そのものの正確さがある。面白い』
絵を見ながら、ウールヴェのリードがしみじみと言った。何故だか、リードは嬉しそうだった。
「カイルの特技の一つです。彼は記憶した情景を正確に再現して描くことができます」
ディム・トゥーラは同調を終えると、地上から帰還した自分のウールヴェが持ってきた荷をといた。
報告時に地上から持ち込んだカイルの描いた先見の絵をリード達に見せた。カイルが行方不明になった時の絵は、ディム・トゥーラとイーレが隠蔽したから、カイルの技能は、他者に対して初披露になる。
「これを解析にかけてください。ある程度の情報を収集できます。場所の特定は今地上でやっています。この絵から恒星間天体の破片の大気圏入射角は割り出せませんか?」
『精密ではないが、割り出せるとも。この絵だけでも情報の宝庫だ。地表面のエネルギー痕、爆風の方向、破壊前の建物情報とかポイントをよく抑えている』
ウールヴェは考えこんだ。
『紙質や筆記具が劣っている。ここから高級紙とペンを持ち込みたまえ。それだけでも精度の桁が上がる』
カイルの絵の道具は、新しい個室に引越し済みだが、中央に回収されていないだろうか。あとで、確認しようとディム・トゥーラは思った。
「18か所しかないのか?」
中身を検分して問いかけてきたのは、所長のエド・ロウだった。
「それ以上はカイルの精神がもたないので止めました。後日は軽めの被害情報を拾わせるつもりです」
「支援追跡者としての判断かね?」
「はい」
「イーレからアナログな絵を描くのが趣味だと、聞いていたがこれはすごい才能じゃないか。もっと早く知りたかったものだ……」
「なんのために?」
「電子機器禁止場所の撮影情報の代替えに」
趣味の領域の特技を知りたがるのは、間違いなく研究利用が目的だろう。
カイルの予想はかなり当たっている。日頃、周囲に絵を披露しなかったのは、本能的な自己防衛に違いない。
研究馬鹿ほど恐ろしいものはない。彼等は目的のためなら手段を選ばない。ずかずかと私生活まで侵入してくるのだ。
ジェニ・ロウは感心してみせた。
「本当に上手ね。人物画も見てみたいものだわ」
「人物画?」
「地上関係者の情報も欲しいの。カイルの精神負荷にはならないでしょ?」
「必要ですか?」
「ええ」
「……まあ、仕事を与えていた方が、無茶はしないか……」
「無茶?」
「大災厄の先見を単独ですることです。災厄の絵をかかせるより、周囲の人物画をかかせる方が、遥かに平和で穏やかだ」
「まあ、そうね。貴方、アードゥル達に会えた?」
「まだです」
「その件も引き続きお願い」
「わかりました。俺はまた降下しますが、問題ありますか?」
『問題はないが、食事と体内チップを補充して、24時間後にしたまえ。君の方に全く負荷がないわけではない』
「そうなんですか?」
『どれだけ体内チップを消費したか、確認してみるといい』
「わかりました」
確かに自分の負荷は正確に把握しておくべきだった。支援追跡者が倒れるわけにはいかない。
「地上のメンバーに変わりはない?」
「直接会ったのは、カイルとシルビアだけですが、特に問題はないようです」
「そう」
「そういえば、カイルに初代並みの冷淡派認定を受けました」
「何、それ」
「地上に対して、情がないそうです」
「ああ、それは仕方ないわね」
ジェニは頬に片手をあて、その指摘を認めた。
「長年の思考の癖よ。中央の関係者にありがちな傾向と言えるわ」
「そうなんですか?」
「ロニオスなんて、昔は冷淡冷静冷徹冷酷のサンプルみたいだったわ」
『ジェニ』
「個人の感想よ、気にしないで」
にっこりとジェニは応じた。
「今は核融合並みにエネルギーが、たぎっているわね」
『ジェニ』
「私、何か間違っているかしら?」
ジェニは夫を振り返った。




