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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第19章 大災厄(1)
678/1015

(10)模索⑩

お待たせしました。24時過ぎてしまいましたが、本日分の更新です。お楽しみください。

NHKの矢沢永吉生出演に悩殺され、完全に文章を打つ手がとまったことを懺悔いたします。


ブックマークありがとうございました!

 ディム・トゥーラは、あらかじめ詳細に取り決めていたかのように、話を切り出した。あれだけ反発していた世界の番人に対して、個人の感情を封じ込め、接している。

 その切り替えにカイルは感心してしまった。あの激情を抑え込んでいる。完璧な自己コントロールだった。支援追跡者(バックアップ)の才が発揮されていた。

 彼は観測ステーションの代表として、世界の番人との対話に臨んでいるのではないだろうか。カイルはそんなことを思った。

 

 それに対して、世界の番人の応答はそっけなかった。


――――落ちる場所はまだ定まっていない


 その態度にディム・トゥーラが激昂(げきこう)することもなかった。


『そうだと思った。俺たちが、どちらをつぶすか迷っている状態だ。正しい未来予測だ』


――――定まらぬ先見など無意味だろう


『実はそうでもない。こちらも不測の事態で少しでも情報が欲しい。こちらの予測解析が間に合わないリスクがあるからだ』


 ディム・トゥーラは淡々と語った。


『星の破片が落ちる可能性の場所の先見があれば、そこから逆算して軌道(きどう)を計算できる』


 カイルは、はっと息をのんだ。

 そんな発想はなかった。カイルが審神者(さにわ)になることを激怒したくせに、ディム・トゥーラは素早く、メリットとデメリットを判断して、必要な情報が何か想定していたのだ。


『それらの集中点が、天上の俺たちが軌道を変えるべき変更ポイントだ』


――――どの未来がみたいのだ?


『一番重要なのは、氷河期を回避することだ』


――――もちろんそうだろう


『次に人死が少ない未来が欲しい。大災厄に対して協力してくれるエトゥールの民を優先で救済したい。メレ・エトゥール、それでよろしいか』


「ああ、感謝する」


『これは等価交換だ。俺と初代は天上でどちらかの星を砕く。それに対しての先見の映像をカイルに見せろ。彼が絵を描き、地上の関係者が場所を特定する』


――――未来は変わる


『だから、それを繰り返す。最善の未来を探す。ただし、(カイル)の安全を保証して、だ。(カイル)が貴重な協力者であることを肝に命じることだ』


 ディム・トゥーラは一気に威圧(いあつ)を放ち、聖堂の場を(せい)した。


『カイル・リード達に何かあれば、天上の俺達はこの惑星から一切、手をひく。それを忘れるな』


「ディムっ!!」


 カイルはその言葉に驚き、抗議をした。


『カイル、これはお前にも言っている。自分の安全を軽視するな。お前が死ねば、この惑星を救う義理など、俺には一切ない。俺はここから立ち去るだけだ』


 ディム・トゥーラは冷酷に言い切った。


「そんな地上を見捨てるって言うの?!」


『そうなる』


――――姫以外にこの愚者を(ぎょ)することができる才を持つ者がいるとは驚きだ


 世界の番人は、恐喝(きょうかつ)されるカイルになぜか満足そうだった。


「ちょっと!!」


――――お前は己の命を盾にこちらを利用した。飛去来器(ひきょらいき)のようにそれが戻ってきただけだ


飛去来器(ひきょらいき)?」


『ブーメランのことだ』


 ディム・トゥーラが特殊単語を翻訳し、カイル以外の全員が世界の番人の言葉に、ぷっと笑いをもらした。

 カイルは真っ赤になって、世界の番人に文句を言った。


「どうして、僕にだけ厳しいの?まるでディム・トゥーラみたいだ」


――――一緒にするな

『一緒にするな』


 同時に反応があった。


――――お前が頑固で、愚かで、野生のウールヴェ並に猪突猛進(ちょとつもうしん)すぎて手をやいているだけだ


『上手い表現だ』


 ディム・トゥーラが同意した。

 世界の番人とディム・トゥーラが反発しているのか、意気投合しているのか、全くわからず、カイルは混乱した。

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